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「ジミー、野を駆ける伝説」

「麦の穂をゆらす風」「天使の分け前」などの社会派映画で知られるケン・ローチ監督の最新作、「ジミー、野を駆ける伝説」(Jimmy's Hall)を見ました。1930年代のアイルランドで自由を求めて奮闘した実在の活動家、ジミー・グラルトンの姿を描きます。

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1932年、アイルランド。元活動家のジミー(バリー・ウォード)が、10年ぶりに故郷の村に帰ってきました。村人たちのリーダーだった彼は、かつて人々の憩いの場であるホール(集会所)をつくったことが神父を中心とする権力者たちの怒りを買い、故郷を追われてアメリカに渡ったのでした。

老いた母をたすけ、静かに暮らすことを望んでいたジミーでしたが、自由を求める村の若者たちから懇願され、情熱に突き動かされるようにホールを再開することを決意します。しかしようやく活動が軌道に乗り始めた頃、神父たち保守派らは再び妨害をしかけてくるのでした...。

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1919~21年のアイルランド独立戦争と、その後に続く内戦を描いた「麦の穂をゆらす風」は、思い出しただけで胸がしめつけられるすばらしい作品。本作「ジミー~」はその10年後、1932年のアイルランドの村を舞台に、自由のために奮闘した名も無き活動家、ジミー・グラルトンにスポットをあてています。

といっても「麦の穂~」ほど重くなく、ほのぼのとした味わいがあって、ほろ苦くも希望が感じられるラストがよかった! ジミーはいわゆるアイルランドの歴史をぬりかえるような英雄ではありませんが、彼の精神は間違いなく若い世代へと引き継がれ、封建的な国の歴史を少しずつ変えていったことと思います。

名も無き活動家を見つめるケン・ローチ監督の眼差しは限りなく優しく、なんでもないシーンや会話が心に響いて、何度も涙ぐんでしまいました。

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そもそもジミーがつくったホールは、人々が音楽やアート、ダンスなどを学び、楽しみ、交流する場。それがどうしていけないのか、今を生きる私たちには理解できませんが、神父たちは、ジミーたちがそうした活動を通じて人々を啓蒙し、やがて自分たちの立場が脅かされると恐れているようです。

またジミーがアメリカから持ち込んだジャズやダンスといった新しい文化が、反キリスト的で若者たちを堕落させるものと信じて疑いません。でもあとでジミーがそっと置いていったジャズのレコードを聴いた神父は、ほんとうはその魅力がわかっていたはずだと思うのです。

ジミーに「あなたの信仰は、愛より憎しみに満たされている」と言われ、心を動かされる神父。しかしこの時代には国や他の教区の手前、神父の立場としてジミーのやっていることを認めるわけにはいかなかった、というのがほんとうのところかもしれません。

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10年という月日は、愛する人との間も引き離してしまいました。ジミーが故郷を去ってから、二人は別々の人生を歩いてきましたが、何も言わなくとも今もお互いを思い続けていることが伝わってきて切なかったです。真夜中のダンスシーンは、はかなくも美しいまぼろしのようでした。

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ようやく故郷に帰ってきたというのに、またも国外追放されてしまうジミー。しかし彼が蒔いた自由の種は若者たちの手を借りて必ずや実を結ぶことになるでしょう。美しい緑の野山をさわやかな風が吹き抜けるのを感じました。

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コメント

こちらにもおじゃまを...

さて主演のバリー・ウォードがわたし好みで最高でした。

「麦の穂...」のような硬派なドラマではなく。ジミーとウーナ切ない再会なども取り得れ、とても見応えのある、素敵な映画でした。
そうですね。まるでまぼろしのような...誰もいないホールでの二人のダンス、シーンは胸きゅんでした。

神父の家にジミーと同じ、アメリカ製のレコードプレイヤーが鎮座する姿良かったです。

投稿: margot2005 | 2015年2月13日 (金) 23時16分

☆ margot2005さま ☆
こちらにもありがとうございます。

バリー・ウォード、舞台出身の俳優さんとのことですが
優しそうな笑顔がなんともすてきでしたね。
これからの活躍が楽しみです。

ケン・ローチ監督らしい、愛あふれるすてきな作品でした。
お年とともに少し丸く、柔らかくなられたのかな?
なんて思ったりもして。
二人の切ないロマンスが、ドラマをいっそう引き立てていましたね。

神父のあのシーンも印象的でした。
心の中ではジミーを理解しているのでは?とふと思いました。

投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2015年2月14日 (土) 01時41分

こんばんは!

これ今、公開中なんですね!
凄く面白そう。劇場は無理そうだけど、DVDになったら絶対に見てみます。

「麦の穂~」よりは、ハートウォーミングな作品になってそうですね。最後の写真から、この作品のイメージが伝わってくる様です。

これも実話ベースなんですね~。
アイルランドの歴史は、何となくは知っていても、実際に住んでみないと、彼らが感じてる感覚はわからないんだろうな~・・っていつも思います。

スコットランドの独立騒ぎがあったじゃない?英国圏の国には色々な背景や問題があるんだろうな~。
こういった映画作品から、少しでも歴史の一端を知る事ができるのも、映画を見る楽しみのひとつですよね!happy01

投稿: ごみつ | 2015年2月14日 (土) 02時13分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
ケン・ローチ監督の最新作、今回も地味ながら温かみを感じる
すてきな作品でしたよ。
DVDになったら是非ご覧になってみてください。

私、イングランドは大好きなのですが
アイルランドやオーストラリアなどの歴史に触れると
いやでも大英帝国時代の横暴や狼藉の痕跡を知ることとなり
複雑な思いを抱くことも多々あります。

現代においても、そうした歴史の一端を
心に留めておくことは大事なことですね。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2015年2月14日 (土) 08時23分

セレンさん☆
やや地味めな(!)映画なので…「ジミー~」だけに。
どうしようかなーと思っていたのですが、なかなか良さそうですね。
「麦の穂を~」も実は未見で、これは両方観ないといけませんね!

投稿: ノルウェーまだ~む | 2015年2月15日 (日) 00時38分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こちらにもありがとうございます☆

名も無き活動家...ジミーだけに地味~?な題材ですが
心に温かく響く作品で、ケン・ローチ監督好きとしては
大いに楽しめました。

「麦の穂~」はずっしりと重い作品ですが
まだ~むさんはきっとご覧になって、いろいろ考えられることと
思います。いつか機会がありましたら...。

「ジミー~」は「麦の穂~」よりはずっと柔らかく
ほのぼのとした味わいがある作品でした。
これだけでも十分楽しめますが、「麦の穂~」をご覧になると
10年という月日がより実感できるかもしれません。

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2015年2月15日 (日) 11時29分

こんにちは。弊ブログにご訪問下さりありがとうございました。
ケン・ローチ監督は、社会を見据える強い視点の中にも暖かい眼差しが宿っていて、素晴らしい監督だと思っています。
今回の作品も、自由を求めた人々と、そのリーダーであったジミーとを、とてもきちんと描いていたと思います。
素敵な映画でした。

投稿: ここなつ | 2016年1月 8日 (金) 21時42分

☆ ここなつさま ☆
おはようございます。
ケン・ローチ監督らしく、誠実に作られたよい作品でしたね。
自由を求めて奮闘する、ジミーや若者たちの姿に心を打たれました。
今の私たちには当たり前の”自由であること”の難しさ、尊さについても
考えさせられる作品でした。

投稿: ☆ ここなつさま ☆ | 2016年1月 9日 (土) 09時24分

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