« 2015年2月 | トップページ | 2015年4月 »

2015年3月

「風立ちぬ」 &シベリア風ケーキ

先月、ジブリの「風立ちぬ」がTV初放映されてたので、録画して見ました。

The_wind_rises_1

久しぶりにジブリ作品を見て、まず感動したのは映像の圧倒的な美しさと繊細さ。二郎の下宿に妹(トトロのメイちゃんに似てる^^)がやってきて、いっしょに隅田川を船でのぼるシーンがありますが、そこにあのバラライカが奏でるテーマ曲が流れると、川辺の風景が旅情あふれるベネツィアに見えてくるから不思議です。

全編にわたる古風で文学的な味わいは心地よく、二郎と菜穂子の奥ゆかしいロマンスにも、どきどきと引き込まれました。宮崎監督の夢やロマンティックな一面が伝わってくるすてきな作品で、私も楽しく見たのですが、その一方で、なんとなく物足りなさもありました。

それは、戦争、ものづくり、不治の病...といくつものドラマティックな要素がありながら、そのどれもがあっさりと描かれていたからかもしれません。映像の美しさゆえもあるのでしょうが、戦争の悲惨さや、零戦設計の苦労、それが戦争に使われることへの二郎の苦悩などはあまり伝わってこなかった...。

ラストで二郎は最愛の菜穂子を結核で失い、零戦は一機ももどらず、東京は焦土となりますが、彼は慟哭することなく、嘆き悲しんでいるようにも見えません。焼け野原を遠くに眺めながら、カプローニさんと「さて、ワインでも飲みましょうか」とのんきなことを言っているのです。

そこが最初は腑に落ちなかったのですが、あとから、この作品は過去ではなく、未来を見ている映画なのかな?と思いました。愛するものをすべて失ったこの時、二郎は心の中で「今度はどんな飛行機を作ろうか」と夢をふくらませていたのかもしれません。

          airplane          airplane          airplane

さて、映画に登場し、話題になったシベリアを作ってみたくなりました。
memo 懐かしの菓子「シベリア」人気 映画「風立ちぬ」に登場 (日経2013/9/7)

The_wind_rises_5_2

The_wind_rises_4

シベリアはカステラにあんこか羊羹をはさんだお菓子。そういえば昔見たことがある気がするなーと思いつつも一度も食べたことはなかったですが、お味はなんとなく想像できます。私はプレーンのスポンジケーキを焼いて3段にカットし、あんこをはさんで作りました。

2015033101

2015033103

シベリアに関しては、名前の由来から発祥までよくわかっていないようですが、Wikipediaに”羊羹の部分をシベリア鉄道の線路に見立てた”という説があったので、あんこを2本線にしてみました。^^ どら焼き風の素朴な味で、コーヒーにも日本茶にもよくあいました。

ところで記事の中に、1916(大正5)年の創業以来シベリアを作っているという横浜のコテイベーカリーが紹介されていました。どこにあるのかしら?とお店のHPをチェックしてみると、なんと桜木町ではないですか。

昔は県立図書館の自習室をよく利用していたので、コテイベーカリーの前はいつも通っていたはずですが、まったく気づいていませんでした。いつか機会があったら立ち寄ってみたいです。

| | コメント (8) | トラックバック (3)

外堀~靖国神社~千鳥ケ淵 桜散歩

東京は先週、桜の開花を迎えました。よいお天気となった土曜日、外堀方面に桜を見に行きました。まずは神楽坂でお昼を。

2015032901 2015032902

神楽坂もこの日はすごい人出でした。早稲田通りの裏手にあるイタリアンのお店(名前は失念)にぶらりと入ってランチのセットをいただきました。おいしいお料理でエナジーチャージしてから、飯田橋から四ッ谷方面へ、外堀通りの桜並木を歩きました。

2015032903

飯田橋駅のすぐ近く、お濠端にあるカナルカフェです。桜のこの季節には最高のロケーションですが、この日は入店を待つ長い長い列ができていました。

2015032904

土曜日の桜はまだ3分咲きといったところでしたが、木によっては満開に近いものがあったり、その隣の木はほとんど咲いていなかったり。桜にもそれぞれ個性がありますねー。この日の暖かさで、一夜開けての日曜日はほぼ満開となりました(お天気はあいにくでしたが)。

2015032905

のんびりと心なごむ風景です。

2015032906

撮り鉄風に桜&総武線をぱちり。お堀の向こう側には細長く外濠公園が続いています。春霞のように見える桜がきれいでした。

2015032907_2

市ヶ谷で外濠はいったんおしまい。ここからは四ッ谷方面ではなく、橋を渡って靖国神社から千鳥ケ淵に向かうことにしました。

2015032908_2

靖国通りの桜並木も、とてもきれいでした。だんだん暑くなってきたので、上着を脱いで半袖で歩きました。

2015032909

靖国神社もまだ3分咲きといったところでしたが、お花見の人たちで大賑わいでした。能楽堂では、法政大学の能楽研究会の学生さんたちによる公演がありました。桜の下、晴れやかな舞台ですね。

2015032910_2

靖国神社を出て千鳥ケ淵へ。

2015032911_2

満開...とはいえないけれど、お濠をふんわりと包み込むように咲く桜の花は、幻想的でとても美しかったです。

2015032913_2

お花はこれからが本番。濃いピンクのつぼみが、力いっぱいスタンバイしていました。

cherryblossom 満開の千鳥ケ淵の桜 (2012年の記事)

昨日で桜はほぼ満開となり、今週は絶好のお花見日和となりそうです。 

| | コメント (6) | トラックバック (0)

「おみおくりの作法」「きっと、星のせいじゃない」

少し前に見た作品ですが、2つまとめて感想を書き留めておきます。どちらも”死”をテーマにしていますが、意外にも後味は軽やかで、温かい余韻が残る作品でした。

Still_life

おみおくりの作法 (Still Life)

シネスイッチ他で、静かにロングランヒットしている作品。私が見たのは一ヶ月ちょっと前で、その時は今ひとつ実感がわかなかったのですが、あとからじわじわと心にしみてきました。

ロンドンで、地区の民生係として働くジョン・メイ(エディ・マーサン)は、孤独死した人の葬儀を執り行うのが仕事。これまで亡き人の残した手がかりを頼りに最善を尽くし、心を込めて弔ってきましたが、人員整理のために解雇を言い渡されます。最後の仕事となった隣人の葬儀に今まで以上に情熱を傾けますが...。

エディ・マーサンはいろいろな作品でお顔を見かける俳優さんですが、私が一番記憶に残っているのは「アリス・クリードの失踪」。今回の作品は彼の初主演作とのことですが、わずかな表情の変化で哀しみやうれしさ、デリケートな心の中を表現するすばらしい役者さんだなーと思いました。

効率を重んじるお役所にとって、既に亡くなった方のアイデンティティにこだわるのは意味のないことなのかもしれません。しかし、ひとりひとりにとってはかけがえのない人生であり、ジョンがその人生に敬意を表し、心を込めて送り出す姿勢は、誰も注意を払わないことだけに、尊いものとして心に響きました。

とはいえ、私だったら、自分の死後、知らない人が自分の過去を訪ねることに、抵抗を感じてしまうかもしれない、とも思いました。できることなら静かにそっと葬られ、風になるのが理想?ですが、それは私がまだ死を間近なものと感じていないからでしょうか。

ジョンの善意の心は間違いなく、亡くなった方たちの心に届いていました。そして亡くなった方だけでなく、残された人たちの心をもつないだ最後の仕事に、彼は誇りと大きな達成感を感じていることと思います。

The_fault_in_our_stars

きっと、星のせいじゃない (The Fault in Our Stars)

全米でベストセラーとなったジョン・グリーンの青春小説「さよならを待つふたりのために」(原題は映画に同じ)を映画化し、世界中で大ヒットした作品。癌に侵された若いふたりが日々を慈しみながら生きる姿を、さわやかにみずみずしく描きます。

末期ガンで酸素ボンベが手放せないヘイゼル(シャイリーン・ウッドリー)は、がん患者の集まりで骨肉腫を克服した片脚の青年ガス(アンセル・エルゴート)と出会い、一冊の本をきっかけに惹かれあうようになります。ガスの提案で、2人は病を押して今はアムステルダムに住むその作家に会いに行きますが...。

シャイリーン・ウッドリーは「ファミリー・ツリー」で見てすてきな女の子だなーと思っていましたが、今回は髪をばっさり切ったボーイッシュな姿が新鮮でした。アンセル・エルゴートは初めて知りましたが笑顔がチャーミングなさわやかな好青年。2人は「ダイバージェント」シリーズで共演しているそうで息もぴったりでした。

ヘイゼルが自分の病気ゆえに愛することに臆病になり、人を遠ざけてしまう気持ちは、とてもよくわかりました。愛するがゆえに必ずやってくる別れがつらくなる自分の気持ち、そして残された人たちを苦しめてしまうことへの恐れ。それは両親に対しても同じことでした。

それで小説の結末が気になってアムステルダムまで旅するのですが、結果はみごとに裏切られます。傍観者の私は、きっと作家(ウィレム・デフォー)には何か事情があるに違いないとにらんでいましたが、それまでの期待があまりに大きかっただけにヘイゼルたちの落胆もよくわかります。

人生は予測できない。期待が裏切られることもあれば、想定外のことも起こる。それゆえに一瞬、一瞬をていねいに積み重ねていくことに意味がある...というメッセージはありきたりではあるけれど、ふたりのフレッシュな演技もあって気持ちよく受け止められました。音楽もとてもよかったです。(コチラで試聴できます)

| | コメント (8) | トラックバック (6)

PIZZA SLICE 渋谷~代官山散歩

渋谷と代官山の間に、おいしいニューヨーク・スタイル・ピッツァのお店があると知人から勧められていたので、暖かくなった昨日、ぶらぶらと食べに行ってきました。

2015032301_2

渋谷駅西口の歩道橋を歩いていたら、報道陣が何組も...と思ったら、昨日は再開発のために閉館する東急プラザの最終日だったのでした。私は東急プラザにはそれほどなじみはないのですが、5階の紀伊國屋は家から一番近い大型書店なので、よく利用していました。

紀伊國屋は今後は西武の中に移転して、アート・ファッション系の書店となるそうです。三省堂やブックファーストなど、渋谷でも大型書店が次々と閉店、縮小し、寂しい限り。これからは、東急本店のMARUZENジュンク堂に行くかな...。

歩道橋を渡ったら、山手線に沿って恵比寿方面に歩きます。この道は電車から見えますが歩いたのははじめて。個性的なレストランやカフェなどが点在し、なかなか楽しいエリアでした。八幡通りと交差するあたりに、目指すお店があります。

2015032304

PIZZA SLICE というこちらのお店は、天井が高くだだっ広い空間に無垢の木のアンティーク風家具、というインテリアがいかにもニューヨークらしい。奥のカウンターにこの日のピッツァが10種類ほど並んでいて、注文すると最後の仕上げに焼いてくれます。

2015032302_3

私たちは、ベジタブルと、キャラメライズドオニオンをシェアしていただきました。1ピースがこの大きさですが、お店の人が気をきかせて、半分に切れ込みを入れて持ってきてくださいました。冷たいドラフトビールでのどをうるおしつつ食べると...おいしい!懐かしいニューヨークの味です。

ぱりっとクリスピーな生地に、シンプルなトッピング、チーズはたっぷり。イタリア系移民が持ち込んでニューヨークで独自の発展をとげたピッツァは、本格的なイタリアのピッツァとはまったくの別物ですが、これはこれで独特のおいしさがあります。

2015032303

クラムチャウダーはさらっとした仕上がりで、ハーブの風味がきいていました。紙皿、紙カップで、ナプキンの代わりにペーパータオル。店内に大きなプラスティックのゴミ箱が置いてあるのも、カジュアルなニューヨークスタイル。楽しい時間がすごせました。

2015032305 Night_at_the_museum

(左)八幡通の陸橋 (右)ブルックリンブリッジの橋のたもと

お店を出て、思わずあっ!と声を上げました。山手線に八幡通が架かる陸橋の感じが、映画「ナイト・ミュージアム」にも出てくるブルックリンブリッジの橋のたもとにどことなく似ているのです。ピザ屋さんのオーナーがここにお店を出した理由がわかった気がしました。(勘違いかもしれないけど^^;)

おなかがいっぱいになったところで、八幡通を代官山方面に進みます。思いつきで裏道に入ったら、ヨーロッパブランドの古着屋さんがそこここにあって楽しかった。80年代というとほんの少し前だと思ってましたが、今見るとすっかりレトロなテイストでおどろきました。

2015032306_2

T-SITEの中に有料のドッグランが。大きなわんちゃんがここで時間待ち?をしていて、ほかのわんちゃんたちが追いかけっこをしているのをうらやましそうに見ていました。

2015032307

時間になったとたんに興奮しすぎて他のわんちゃんを怖がらせ、係の人におこられていたのがちょっとかわいそうでした。^^

2015032310_2

以前イタリア食材のEATALYがあったところが、TENOHA代官山という商業施設になっていました。雑貨屋さんとカフェ、レストラン、スパなどが入っています。河津桜?やパンジーなど、春のお花がたくさん飾られていてとてもきれいでした。

| | コメント (6) | トラックバック (0)

「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」

ベネディクト・カンバーバッチ主演の「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(The Imitation Game)を見ました。世界最強のナチスドイツの暗号を解読した数学者、アラン・チューリングの伝記映画です。

The_imitation_game_13_2

1939年、第2次世界大戦下のイギリス。ケンブリッジ大学で研究生活を送っていた数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は、ナチスドイツが作った世界最強の暗号エニグマを解読するプロジェクトチームに抜擢されます。

尊大な態度で誰とも交わらず暗号解読装置の設計に没頭するチューリングは孤立していましたが、紅一点のジェーン(キーラ・ナイトレイ)が加わったことで、チームは団結していきます。そしてようやく装置が完成し、エニグマ解読に挑みますが...。

The_imitation_game_1

数学者というととかく変わり者として描かれることが多く、この作品も例外ではないですが、理屈っぽくてわがままで人と相容れない...しかも暗号解読の話でもあるので、最初はカンバーバッチ演じるチューリングが、SHERLOCKに見えてしかたなかった。^^

でも、連合軍の勝利に貢献しながら、国家機密ゆえに戦後50年封印されることになった偉業、そして許されざる心の秘密のために、不遇な人生を歩まざるを得なかった悲劇...それらが明らかになるにつれ、歴史と運命、そして自らの才能に翻弄された天才数学者の孤独と苦悩が胸に迫りました。

The_imitation_game_10

以前、大学の大先輩から、戦時中に暗号解読に駆り出されていたという話を聞いたことがあります。その時はぴんとこなかったのですが、映画「エニグマ」を見た時に、暗号解読は確率の問題であり、膨大な計算が必要で、それで多数の学生を使って人海戦術で取り組んでいたのだと納得しました。

チューリングがやろうとしたのは、膨大な組み合わせを検証する高速計算機を作ること。それは完成したものの、それでもなお、全てを計算するには時間がかかりすぎる。しかしあるきっかけで情報を絞り込むキーワードを見つけたことによって、ようやくエニグマの解読に成功します。

しかし、そのことは決してナチスに知られてはならなかった...そのために連合軍は苦渋に満ちたある決断を下します。これは大のために小を捨てる、ある意味とても残酷な選択ですが、ここでもチューリングの統計理論が功を奏し、連合軍は被害を最小限にして勝利を収めることになるのです。

The_imitation_game_3

これほどの偉業を成し遂げたのに、その功績は封印され、さらに彼自身の心の秘密のために、戦後不幸な人生を歩むことになったチューリング。イギリスで同性婚が法的に認められるようになった現代において、彼は生まれる時代を間違えたとしか思えませんでした。

でも彼があの時代にいなかったら、ヨーロッパでナチスが勝利を収め、世界地図が大きく塗変わっていたかもしれない...歴史に”もしも”は禁物ですが、運命の残酷さに思いを巡らせました。

チューリングの唯一の理解者だったジェーンの、「あなたがいなかったら、この街も、あの人たちも存在しなかった。あなたはとてつもないことをやり遂げたのよ。」(詳細は失念)ということばがせめてもの救いとなって、心に響きました。

Enigma

エニグマ (Enigma)

2003年公開のサスペンス映画。エニグマ解読に取り組む主人公のジェリコはチューリングをモデルにしているようですが、お話はまったくのフィクション。失踪した謎の美女を追って国家機密に行き着く展開はスリリングでしたが、実話を前にすると、色あせて見えてしまうのは否めない...。

| | コメント (10) | トラックバック (14)

「博士と彼女のセオリー」

エディ・レッドメインが理論物理学者のスティーヴン・ホーキング博士を演じる伝記映画、「博士と彼女のセオリー」(The Theory of Everything)を見ました。ホーキング博士の半生を、彼を献身的に支えた妻ジェーンとの夫婦愛を軸に描きます。

The_theory_of_everything_1

1963年。ケンブリッジ大学大学院で物理を研究するスティーヴン(エディ・レッドメイン)は、同じ大学で言語学を学ぶジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い、惹かれあうように。しかしまもなく、スティーヴンは筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、余命2年と宣告されます。

絶望し、ジェーンと別れようとするスティーヴンでしたが、ジェーンはスティーヴンを支え、ともに病気と闘うことを決意、2人は結婚します。やがて子どもも生まれ、幸せな結婚生活を送りますが、スティーヴンの病状は徐々に進行し...。

The_theory_of_everything_2

この週末は、楽しみにしていた物理学者のホーキング博士と数学者のアラン・チューリングの映画が同時公開されるので、どちらを先に見ようか、迷いに迷いました。数学専攻としてはチューリングが気になっていましたが、まずはエディ目当てでこちらの映画から。

ホーキング博士は、宇宙の起源やブラックホール研究の第一人者で、私が学生の頃、注目を集めていました。筋肉が動かせなくなるALSという難病にかかられていて、車椅子の物理学者としても知られています。(昨年はALSを支援するためのアイスバケツチャレンジが話題になりましたね。)

本作はホーキング博士の研究というよりは、妻ジェーンとの夫婦愛にフォーカスした作品。ジェーンとの出会いと結婚については、カンバーバッチの「ホーキング」でも見ましたが、これはその後のストーリーです。

The_theory_of_everything_15

お互いを尊重し、深い愛情で結ばれた2人。ジェーン自身、相当な覚悟の上での結婚だったと思いますが、家の仕事に子どもたちの世話、自分の研究も続けながら、少しずつ病状が悪化し、体の自由がきかなくなっていく夫の介護をすることは、想像以上にたいへんなことでした。

そんな彼女の気分転換に、母(エミリー・ワトソン)が教会の聖歌隊で歌うことを勧めます。そこで教会の音楽指導を務めるジョナサン(チャーリー・コックス)に出会うのですが、家に招き、家族ぐるみのつきあいを続けていく中で、ジェーンとジョナサンはいつしか惹かれあっていくのでした...。

The_theory_of_everything_9_2

ジェーンはスティーヴンを献身的な愛で支えますが、一方で心優しいジョナサンとも惹かれあいます。その気持ちにおそらく気づきながら嫉妬することもなく、むしろジョナサンを受け入れようとするスティーヴンの愛の深さに心を打たれました。

3人が互いに傷つけ合わなかったのはスティーヴンの病気のことや、スティーヴンへの尊敬の気持ち、そして信仰心もあったのでは?と思います。3人が3人ともいい人すぎて、誰かが悪者にならなければ、前に進むことができなかった。その悪役を、無神論者のスティーヴンが買って出たのかもしれません。

スティーヴンは、エレインという信頼できるパートナーを得たことで、安心してジェーンの背中を押すことができたのだと思いました。

エディは、少しずつ病状が進行して、体の機能がひとつ、またひとつと失なわれていく過程をていねいに演じ、ホーキング博士のユーモアと温かさ、明るく前向きなところも伝わってきてとても魅力的でした。ほんとうにすてきな俳優さんになったなーと感動しました。

Hawking

ベネディクト・カンバーバッチ ホーキング (Hawking)

2004年BBC制作のテレビ映画は、昨年夏にDVDが出た時に見ました。こちらは研究よりですが、ドラマティックな展開は見応えありました。ALSを発症したホーキング博士が病魔と闘いながら研究を続け、特異点定理を発表するまでが描かれ、ホーキング博士が合成音声でナレーションをつとめています。

| | コメント (14) | トラックバック (11)

「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」

「アイアンマン」シリーズのジョン・ファブロー監督が、監督・製作・脚本・主演を務めるハートウォーミングなヒューマンドラマ、「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」(Chef)を見ました。

Chef_1_4

ロサンゼルスの一流レストランでシェフを務めるカール(ジョン・ファヴロー)は、メニューの方針でオーナー(ダスティン・ホフマン)と対立し、店を辞めてしまいます。元妻イネス(ソフィア・ベルガラ)の誘いでマイアミを訪れた彼は、感動的においしいキューバサンドイッチに出会います。

キッチン付きのフードトラックを手に入れたカールは、息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)、友人のマーティン(ジョン・レグイザモ)と3人で、マイアミ、ニューオーリンズ、オースティン、そしてロサンゼルスと、キューバサンドイッチを移動販売しながら、アメリカ横断する旅に出ます...。

Chef_5

お料理をテーマにした映画が好きで、何やら楽しそうな雰囲気に惹かれていた本作。ハリウッド超大作を手がけるジョン・ファヴロー監督が、低予算で作った自主制作映画、というのも興味津々で、楽しみにしていました。

前半のフランス料理から、後半のアメリカのソウルフードまで、出てくるお料理がどれもおいしそう! ラテンのノリでアップテンポに進む展開は、とにかく陽気で楽しくて、見ているだけで元気が出るすてきな作品でした。

自主制作映画とはいえ、ジョン・ファヴロー監督の人脈で、豪華キャストが特別出演。ダスティン・ホフマンのほか、レストランのソムリエにスカーレット・ヨハンソン、フードトラックを用意する元妻の元夫にロバート・ダウニーJr.が華を添えています。

Chef_29

カールを支えるのは、アミーゴ精神ともいうべきラテンの絆。元妻のイネスはとびきりの美人で、カールと並ぶとまるで美女と野獣ですが、カールのお料理に惚れ込み、彼をよく理解していて、抜群のタイミングでサポートします。

仕事仲間のマーティンは、カールがフードトラックを始めると知るやいなや、フロリダまで飛んでくる熱き男。彼のアミーゴつながりで、アルミのフードトラックがあっというまにみごとな塗装でよみがえったのにはびっくりしました。^^

それから、10歳になるかわいい息子のパーシー。今どきの子どもらしく、Twitterなどのツールを使って宣伝するのがとにかく上手。彼のおかげで、カールのフードトラックは、行く先々で長い行列ができる大人気店になります。

これまで仕事一筋で家庭を顧みなかったカールが、パーシーにトラックの掃除や材料の買出しを手伝わせ、いっしょにサンドイッチを作って、各地でお客さんたちを喜ばせて...旅をしながら少しずつ父子の絆を深めていくところが、とってもすてきでした。

Chef_11

今回登場するのが、マイアミ、ニューオーリンズ、オースティンと、特に地方色の強い都市だったのも魅力的。ニューオーリンズで揚げたてのベニエをつまみ、オースティンでは一日じっくりかけて焼くバーベキューを仕入れ...ハンバーガーだけではない豊かな食文化がそこにはありました。

大陸横断はよく映画の題材にもなりますが、多くのアメリカ人の憧れでもあります。旅を通じて、自分の原点を見つめ、家族との関係を見直して、新しい一歩を踏み出す...というのがアメリカらしくていいなーと思いました。ラストはちょっぴりできすぎ^^ ですが、ハッピーな気持ちでいっぱいになりました。

| | コメント (16) | トラックバック (3)

早春の水戸(2) あんこう鍋と、弘道館

順番が前後しますが...この日は首都高の途中で事故渋滞にあい、水戸に着くのがお昼近くになってしまいました。それで偕楽園に行く前に、先にお昼をいただくことにしました。

前回入った三翠さんも趣のあるお店でしたが、今回は大工町の交差点近くにある魚政さんで、水戸の名物であり冬の味覚のあんこう鍋をいただきました。予約が入っているとのことでしたが、午後1時までなら、と個室に案内してくださいました。

2015031001_2

まずは味噌仕立てのおだしに、あん肝を入れて。これがコクのあるおいしいスープとなるようです。あんこうは、身はむっちりと弾力があり、皮と脂の部分はぷるぷる。骨からもいいおだしが出て、体がほかほかと温まりました。最後はお雑炊にして、スープまで一滴残さず、まるごとおいしくいただきました。

          bus          bus          bus

偕楽園を散策して梅を楽しんだあとは、弘道館を訪れました。弘道館は、徳川斉昭が1841年に藩士と子弟のために設立した、全国一の規模を誇った藩校です。1872年に学制の発布によって閉鎖されましたが、今もその一部が保存され、公開されています。

2015031004 2015031003

偕楽園から水戸駅行きの路線バスに乗って、銀杏坂のバス停を降りて歩くと、何やら趣のある小学校が。弘道館の敷地跡に建てられ、明治19(1886)年からの流れを汲む三の丸小学校です。今はコンクリートの校舎ですが、ところどころに武家屋敷のようなデザインが取り入れられていました。

2015031005

さて、そしてこちらが弘道館です。現在は、正庁(重要文化財)という建物が保存されていて、中を見学することができました。この建物では、藩主の臨席のもと、試験や儀式が行われたそうです。

藩主が文武の試験をご覧になったという正庁正席の間や、最後の将軍 徳川慶喜が幼少期に学び、大政奉還後に謹慎生活を送られたという至善堂御座の間などを見て回りました。至善堂では、(私が見た数少ない)大河ドラマでの、本木雅弘さん演じる慶喜のシーンを思い出し、一気に親しみがわいてきました。

2015031007

2015031008

2015031009

東日本大震災では弘道館も、柱の傾斜、壁の亀裂、損傷、剥離、建物の崩落など、甚大な被害を受けたそうです。3年の歳月をかけて、修理、復旧、耐震補強をし、ようやく昨年3月に再公開となりました。館内では復旧工事の様子がパネルで紹介されていて、興味深く見ました。

2015031010

2015031011

弘道館のお庭にも斉昭が愛したという梅がたくさん植えられ、可憐な姿を見せていました。桜や百日紅の木もあり、四季折々の自然が楽しめそうです。

帰りも首都高に入る前に渋滞にあい遅くなりましたが、おかげで車の中から、白と紫色に美しくライトアップされたスカイツリーを見ることができました。竹を編み上げたように見えるのが日本の伝統美を感じさせてとってもきれい! 夜見るのはたぶん初めて?ですが感動しました。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

早春の水戸(1) 水戸偕楽園の梅

よく晴れた先週の土曜日、ドライブをかねて水戸偕楽園に梅を見に行ってきました。偕楽園は2年前にも訪れましたが、(この時は別の目的で水戸に行ったのですが)その時は梅がもうほとんど終わってしまっていたのです。

是非一度満開の梅を見たいものだと思っていましたが、前日に偕楽園のHPをチェックすると、開花状況は15.4%とのこと。...悩むところですが、とにかく行ってみることにしました。

2015030601

御成門から中に入ると、目の前には放射状に広大な梅林が広がっています。予想通り、梅の花はまだまだこれから、といった感じでしたが、それでも早咲きの梅がところどころ咲き誇っていて、訪れる人たちの注目を集めていました。

2015030603

梅というと楚々としたイメージがありますが、八重の紅梅は愛らしさと華やかさがあり、近づくとふわりとよい香りがして思わず深呼吸したくなるほど。ぷっくりとしたつぼみもかわいらしく、引き込まれるように見入ってしまいました。

2015030604_2

青い空にピンクの紅梅がよく映えます。

2015030602

ねじれながら、横へ横へとぐいぐい幹を伸ばしていた梅の木。添え木で支えられた枝の下が、トンネルのようになっていました。

2015030606

気高く美しい白梅。紅梅とはまた違った魅力があり、うっとりしました。

2015030607_2

遠くから見ると、ふんわりと春霞のよう。

2015030608

1842年、水戸藩第9代藩主 徳川斉昭によって開園された水戸偕楽園。岡山の後楽園、金沢の兼六園とともに日本三名園に数えられていますが、”楽しみをともにする”という名の通り、藩主や藩士のみならずみんなが楽しめるようにと作られた公園で、今もその志を受け継ぎ無料で開放されています。

斉昭が客人をもてなすために自ら設計して建てた「好文亭」は木造二層三階建てで、美しい園内から隣接する千波湖まで広く見渡せます。今回は好文亭には入りませんでしたが、前回のレポートはこちら。

cherryblossom 水戸偕楽園 (2013・春)

2015030610_2

今日の開花状況は33%ということですから、これからしばらくの間、みごとな梅が楽しめそうです。

| | コメント (10) | トラックバック (0)

「ガレオーネ」のピッツァ / 菜の花と釜揚げしらすのスパゲティ

まだまだ風の冷たい2月半ばの週末。昨年6月にオープンしたという都立大学のカジュアルイタリアン、ガレオーネ(GALEONE)にお昼を食べに行きました。横浜のイタリアンレストラン「カンブーサ」の姉妹店だそうで、帆船のマークが目を引きます。

かなり人気があるようで、ふらりと出かけた私たちはたまたま運よく、入口近くの席がひとつだけ空いていて入れましたが、その後、予約がなくてことわられているお客様が何組もいらっしゃいました。

店内には奥に大きな薪窯がでんと構えていて、ピッツァと炭火焼料理が人気だそうです。私たちはピッツァまたはパスタに、前菜とデザート、飲み物のつくお昼のプチコースをいただきました。ピッツァとパスタはそれぞれ数種類ある中から1つずつ選び、シェアしていただくことにしました。

2015030301_2

前菜の盛り合わせ。かぼちゃのポタージュ、小さなライスコロッケ、お豆のマリネサラダ、白身魚(ブリだったかな?失念)のカルパッチョ、生ハム。焼きたてのフォカッチャもおいしかった。

2015030302

ピッツァは、ちょっとめずらしいものを。たしか鶏肉とくるみ、モッツァレラのピッツァだったと思います。生地がもっちもちで、こんがりとした焼き目が香ばしくて、とってもおいしかったです。鶏肉とくるみが素朴な味わいでした。一人分ですがかなり大きいので、2人でシェアしてちょうどよかったです。

2015030303_2

パスタは、お魚のパスタにしようとしたらもう終わってしまったということで、かわりに菜の花と釜揚げしらすのリングイネになりました。でもこれが大正解。早春らしい軽やかなお味でした。上に散らしてあるのはイタリアンパセリでしょうか。

2人で取り分けるつもりでいたら、最初から2皿に分けて持ってきてくださいました。ということで、これは2分の1人前です。

2015030304_2

デザートは紅茶のパンナコッタとヨーグルトのアイスクリーム、フルーツの盛り合わせでした。深炒りのコーヒーとともに、おいしくいただきました。

          restaurant          restaurant          restaurant

お店でいただいた、菜の花と釜揚げしらすのリングイネがおいしかったので、翌週末のお昼に家でまねして作ってみました。

2015030305

リングイネではなくスパゲティで。具だくさんというのが家庭ならではですね。^^ パスタも家では人数プラス1人前くらいゆでるので、これで1.5人分近くあるかも。最後に三つ葉をひと混ぜしています。

最後におしょうゆをほんの少し隠し味に加え、オリーブ油を最後にもぐるぐる~と加えて混ぜるのが私流。春の香りを楽しみながら、おいしくいただきました。

| | コメント (6) | トラックバック (0)

「アメリカン・スナイパー」

クリント・イーストウッド監督、ブラッドリー・クーパー主演の戦争映画、「アメリカン・スナイパー」(American Sniper)を見ました。イラク戦争に4度従軍し、米軍史上最強といわれた狙撃手、クリス・カイルの自伝をもとに、過酷な戦場と兵士の苦悩、アメリカが直面している問題を描きます。

American_sniper_1

幼い頃に父から狩猟の手ほどきを受け、「羊の群れを狼から守る牧羊犬たれ」と育てられてきたカイル(ブラッドリー・クーパー)は、1998年のアメリカ大使館爆破事件を機に愛国心から海軍に志願、厳しい訓練を経て特殊部隊シールズに配属されます。

アメリカ同時多発テロ事件を機にイラクに派遣されたカイルは、狙撃手として多くの仲間を援護して救い賞賛されますが、敵からは賞金を懸けられるほど恐れられる存在に。4度の従軍を経てようやく家族のもとに戻りますが、戦場での過酷な体験は彼に深い心の傷を残します...。

American_sniper_3

イーストウッド監督の最新作ということで楽しみにしていた本作。公開前から米メディアで賛否の議論が白熱していたこともあり、早く自分の目で見て確かめたい、という気持ちもありました。映画が問うテーマは重く、今なお続く中東地域の混乱の中にいて、私たちは大きな宿題を与えられたと感じました。

American_sniper_5

冒頭、スコープをのぞき、爆弾を抱えた母子に照準を合わせて、銃の引き金に指をかけるカイル。そこから映像は一転、父から狩猟を教わる少年時代のカイルに変わります。戦争と狩猟、そして兵士たちのPTSDが描かれている本作に、私は「ディア・ハンター」(1978)を思い出しました。

温かい感動を残してくれた「ジャージー・ボーイズ」から1年経たずして作られたシビアな戦争映画。まったくテイストの違う作品ですが、前作「ジャージー・ボーイズ」に「ディア・ハンター」のフランキー・ヴァリの歌とクリストファー・ウォーケンが登場していたことからも、監督の中ではひとつにつながる物語なのだと思いました。

羊の群れを狼から守る牧羊犬。それが今の世界においてアメリカの負うべき使命である、と多くのアメリカ人は思っていることでしょう。誰よりも正義感の強いカイルが、母国のため、そして世界の秩序を守るため、軍に志願したことは、自然な感情として理解できました。

だからカイルは、虐待と思えるほどの厳しい訓練にも、耐え抜くことができたのだと思います。そして肉体的にも精神的にも鍛え上げ、律してきたカイルは、”160人もの敵を殺すこと”が「正しいこと」であると自分に信じ込ませることで、心のバランスを保っていたのかもしれません。

帰還してからPTSDに悩まされながらも、強靭な精神力で克服したカイル。さらに他の帰還兵の心を救うために尽くしてきた彼を襲った運命はあまりに残酷ですが、そこには神のメッセージがあるとしか思えませんでした。彼の死を無駄にしないために、私たちは今考える時に来ているのかもしれません。

American_sniper_9

帰還してから銃を持って妻とふざけたり、PTSDのリハビリに射撃が使われたり、日本人として違和感を覚えてしまう場面もありました。帰還兵の中にはPTSDのために突然怒りに襲われ、発砲する人があるといいます。そしてその被害者の多くは、愛する家族なのだそうです。

The_hurt_locker

ハート・ロッカー(The Hurt Locker)
戦場における極度の緊張感と静かなる狂気。特殊な環境の中で、戦争依存症ともいえる状況に陥っていくカイルを見ていて、この作品を思い出しました。

| | コメント (16) | トラックバック (17)

« 2015年2月 | トップページ | 2015年4月 »