「おみおくりの作法」「きっと、星のせいじゃない」
少し前に見た作品ですが、2つまとめて感想を書き留めておきます。どちらも”死”をテーマにしていますが、意外にも後味は軽やかで、温かい余韻が残る作品でした。
シネスイッチ他で、静かにロングランヒットしている作品。私が見たのは一ヶ月ちょっと前で、その時は今ひとつ実感がわかなかったのですが、あとからじわじわと心にしみてきました。
ロンドンで、地区の民生係として働くジョン・メイ(エディ・マーサン)は、孤独死した人の葬儀を執り行うのが仕事。これまで亡き人の残した手がかりを頼りに最善を尽くし、心を込めて弔ってきましたが、人員整理のために解雇を言い渡されます。最後の仕事となった隣人の葬儀に今まで以上に情熱を傾けますが...。
エディ・マーサンはいろいろな作品でお顔を見かける俳優さんですが、私が一番記憶に残っているのは「アリス・クリードの失踪」。今回の作品は彼の初主演作とのことですが、わずかな表情の変化で哀しみやうれしさ、デリケートな心の中を表現するすばらしい役者さんだなーと思いました。
効率を重んじるお役所にとって、既に亡くなった方のアイデンティティにこだわるのは意味のないことなのかもしれません。しかし、ひとりひとりにとってはかけがえのない人生であり、ジョンがその人生に敬意を表し、心を込めて送り出す姿勢は、誰も注意を払わないことだけに、尊いものとして心に響きました。
とはいえ、私だったら、自分の死後、知らない人が自分の過去を訪ねることに、抵抗を感じてしまうかもしれない、とも思いました。できることなら静かにそっと葬られ、風になるのが理想?ですが、それは私がまだ死を間近なものと感じていないからでしょうか。
ジョンの善意の心は間違いなく、亡くなった方たちの心に届いていました。そして亡くなった方だけでなく、残された人たちの心をもつないだ最後の仕事に、彼は誇りと大きな達成感を感じていることと思います。
きっと、星のせいじゃない (The Fault in Our Stars)
全米でベストセラーとなったジョン・グリーンの青春小説「さよならを待つふたりのために」(原題は映画に同じ)を映画化し、世界中で大ヒットした作品。癌に侵された若いふたりが日々を慈しみながら生きる姿を、さわやかにみずみずしく描きます。
末期ガンで酸素ボンベが手放せないヘイゼル(シャイリーン・ウッドリー)は、がん患者の集まりで骨肉腫を克服した片脚の青年ガス(アンセル・エルゴート)と出会い、一冊の本をきっかけに惹かれあうようになります。ガスの提案で、2人は病を押して今はアムステルダムに住むその作家に会いに行きますが...。
シャイリーン・ウッドリーは「ファミリー・ツリー」で見てすてきな女の子だなーと思っていましたが、今回は髪をばっさり切ったボーイッシュな姿が新鮮でした。アンセル・エルゴートは初めて知りましたが笑顔がチャーミングなさわやかな好青年。2人は「ダイバージェント」シリーズで共演しているそうで息もぴったりでした。
ヘイゼルが自分の病気ゆえに愛することに臆病になり、人を遠ざけてしまう気持ちは、とてもよくわかりました。愛するがゆえに必ずやってくる別れがつらくなる自分の気持ち、そして残された人たちを苦しめてしまうことへの恐れ。それは両親に対しても同じことでした。
それで小説の結末が気になってアムステルダムまで旅するのですが、結果はみごとに裏切られます。傍観者の私は、きっと作家(ウィレム・デフォー)には何か事情があるに違いないとにらんでいましたが、それまでの期待があまりに大きかっただけにヘイゼルたちの落胆もよくわかります。
人生は予測できない。期待が裏切られることもあれば、想定外のことも起こる。それゆえに一瞬、一瞬をていねいに積み重ねていくことに意味がある...というメッセージはありきたりではあるけれど、ふたりのフレッシュな演技もあって気持ちよく受け止められました。音楽もとてもよかったです。(コチラで試聴できます)
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コメント
若い時は、とても元気だったので(笑)、多少の体の不調は
無理をしていてもそのうちに、治ってしまうことがほとんどでした。
その頃に比べると、最近は、少しの動きで疲れたり、また
その疲れが溜まって体が不調になると重大な病気か?
なんて考えてしまうことがあります。
殆どは、年齢と寝不足が原因のようですが(笑)
昔に比べると、そんな些細なことでも健康・死を意識することは
増えているように、個人的には考えていたりします^^
投稿: イザワ | 2015年3月26日 (木) 03時35分
☆ イザワさま ☆
こんにちは。
そうですねー。若い頃は風邪をひいても一晩寝れば治りましたが^^
今は薬の力を借りないと治らなくなりました。
何事も無理をするのは禁物ですね。
投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2015年3月26日 (木) 07時32分
こんにちは。
「おみおくりの作法」は私、知りませんでした!
ちょっと「おくりびと」に近い感じのテーマなのかな?
記事を読ませていただくと、しみじみと良さそうなドラマですね。
「きっと星のせいじゃない」は見たい!って思ってた映画なのですが、DVDになったら絶対に見ます。
これ原作、すごく売れてるんですよね。
今月は多忙で全然映画にも行けなかったのですが、今日はこれから「イミテーションゲーム」行こうと思ってます。
投稿: ごみつ | 2015年3月26日 (木) 13時18分
セレンさん☆
ふたつとも素敵な映画ですよね。
「おみおくりの~」は気になっていましたが見逃しちゃいました。
こちらもイギリスならではの風景が観られそうです。
「きっと星~」は本当に素敵な映画でした☆
ダイバージェントのワイルドなイメージと全く違って、爽やか!!なかんじ。
二人の今後の活躍も楽しみですね~
投稿: ノルウェーまだ~む | 2015年3月26日 (木) 18時25分
☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
おみおくりの作法、地味な作品ですが
シネスイッチで一時期ものすごく人気があったのですよね・・・
何かで紹介されたのか、クチコミなのか??
おくりびとは見ていないのですが、テーマは似てそうですね。
しみじみとした味わいの作品でした。
「きっと、星のせいじゃない」は、原作もきっと
すてきなんだろうなーと思いながら見ました。
主演のふたりもフレッシュで魅力的でしたよ。
DVDになったら是非ご覧になってみてください☆
イミテーションゲーム、きっと楽しまれたことと思います!
のちほど感想をうかがうを楽しみにしていますね☆
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2015年3月27日 (金) 18時48分
☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
記事にするのがすっかり遅れましたが...
どちらも死をテーマにしながらも、温かい余韻の残る
すてきな作品でした。
「きっと~」のふたりはすてきでしたね!
ダイバージェントは見ていないのですが
SF映画ということで、このふたりがどんなアクションを
見せてくれるのか気になります。
続編のInsurgentは先週アメリカで公開されたばかりで
こちらも人気のようですよ☆
投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2015年3月27日 (金) 18時58分
こんばんは。いつも見に来て下さってありがとう。
やはりご覧になっていたのですね?
さて死がテーマの2本...
「お見送りの作法」はラストでがつんとやられました。「アリス・クリードの失踪」とは全く違った役柄で、エディ・マーサンってこういった温和な男性が似合いますね。とても味のある素晴らしい俳優だと思います。
「きっと、星のせいじゃない」は、そう爽やかだったんですよね?難病ものとは思えないほど爽やかで想像以上に素敵な映画でした。
アンセル・エルゴートのキュートさに胸きゅんとなりました。obasanのわたしですが...。
投稿: margot2005 | 2015年3月27日 (金) 20時07分
☆ margot2005さま ☆
こんにちは。
「おみおくりの作法」、ラストはあまりに突然のことであっけにとられました。
でも、ジョンはやるべきことをやり遂げて
彼のこれまでの善意が、亡くなられた方たちの心に届いていて...
きっと幸せだったのだろうな、と思いました。
エディ・マーサン、心の中にいろいろな思いを秘めたジョン・メイを
ていねいに演じていましたね。
「きっと、星のせいじゃない」はすてきな青春映画でした。
アンセル・エルゴートは笑顔がかわいいですねー。
ほんと、胸きゅんでした☆
投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2015年3月27日 (金) 20時42分