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「真夜中のゆりかご」

スサンネ・ビア監督の最新作、「真夜中のゆりかご」(En Chance Til / A Second Chance)を見ました。美しいデンマークの湖畔の町を舞台に、対照的な2組の夫婦の間に起こった悲劇を描くサスペンスドラマです。

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刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター=ワルドー)と妻アナ(マリア・ボネヴィー)は、生まれたばかりの息子の世話に奮闘しつつ、幸せな日々を送っていました。ある日アンドレアスは、通報を受けて乗り込んだアパートの一室で、薬物中毒のトリスタンと彼に虐待される妻、汚物まみれの赤ん坊を目にして衝撃を受けます。

その数日後、夜中に大切なわが子が突然死していることに気づいて、取り乱すアナとアンドレアス。アナを落ち着かせ、息子を車に乗せて家を飛び出したアンドレアスは、出来心からトリスタンの家に忍び込み、育児放棄されている赤ん坊とわが子を取り替えてしまいます...。

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スサンネ・ビア監督は、「ある愛の風景」、「アフター・ウェディング」、「未来を生きる君たちへ」など、どの作品も考えさせられる深いドラマがあって大好き。お気に入りの監督さんです。

本作は、薬物中毒や家庭内暴力、育児放棄などの社会問題を織り込みつつ、サスペンスとしてのおもしろさもあって、引き込まれました。

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息子の突然の死にパニックに陥り、つい出来心から過ちを犯してしまったアンドレアス。母親にとっては、亡くなった息子の代わりなどいるわけもなく、アンドレアスの行動はまったく理解できないものですが、彼にとっては妻を救い、トリスタンの息子も救える、最良の方法だと思ったのでしょうか。

その最初のボタンの掛け違いが、次から次へと別の悲劇を招いていく...という話だと思っていたので、最後の思いがけない結末にはあっと驚かされました。そしてこの作品のほんとうのテーマは別のところにあったのだ、と知りました。

思えば、最初から違和感を感じていたのです。

夜中、息子が動かないと気づいたとき、すぐに病院に連絡しようとするアンドレアスを、アナはなぜ止めたのか。あの時、息子は仮死状態だっただけかもしれず、すぐに医師に診せれば助かる可能性だってあったのに。親だったら、たとえ0.001%の可能性であろうと、最後まであきらめようとはしないはず。

その時のもやもや感が、最後に納得に変わってすっきりしました。^^

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主要キャストの5人の俳優さんはみんなすばらしかったです。

アンドレアスの同僚シモンを演じるウルリッヒ・トムセンは、ビア作品ではおなじみの俳優さん。シモンは妻と別れて酒びたりのしょうないおじさんだけれど、何もいわずともアンドレアスをまるごと受け入れる男の友情にぐっときました。

トリスタンを演じるニコライ・リー・コスの悪人ぶりもすごかったですが、その妻役のリッケ・メイ・アンデルセンの熱演に圧倒されました。もともとはモデルさんで、映画は本作が初出演と知って、さらに驚きました。

穏やかなラストには希望が感じられ、幸せな余韻を味わいました。

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コメント

この監督の「未来を生きる君たちへ」は本当によかったのですが
前作「愛さえあれば」にはがーっかりしました。
本作は期待できそうですね?
北欧の映画はあまり多くないので
こちらも楽しみにしています。

投稿: zooey | 2015年5月25日 (月) 11時12分

こんにちは~。cherry

これ、私も予告編で見てとても気になってました!

私、スサンネ・ビア監督の作品は未見なので、是非見てみたくなりました。

それにしても、例え死んでしまったとしても、我が子の亡きがらをそんな所に放置してくるって、心情的に可能なのかな~。
色々と、表のストーリーからはわからない背景があるみたいなので、それも楽しみです。happy01

投稿: ごみつ | 2015年5月25日 (月) 13時57分

☆ zooeyさま ☆
「愛さえあれば」はちょっとがっかりでしたね。
ブロスナンはともかくヒロインが...
ビア監督は、恋愛映画向きではないかもしれませんね。^^

この作品はおもしろかったですよ。
お時間がありましたら。

投稿: ☆ zooeyさま ☆ | 2015年5月25日 (月) 18時04分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。

この作品、ごみつさんも気になっていらしたのですねー。
ビア監督作品としてはとっつきやすいですし
サスペンスタッチで、きっと楽しめると思います☆
過去作品でしたら、やはり「未来を生きる君たちへ」がお勧めかな?

私も、これはないな~と思いました。^^;
きっとそれほどまでにパニックになっていた、ということなのでしょうが...

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2015年5月25日 (月) 18時12分

セレンさん☆
この映画、すっごく気になっていた映画なのです。
北欧映画は気候風土も手伝って、独特の哀愁漂う映画が多いので結構好きなのですが、こちらの映画もぐっと重々しいテーマがぴったりなかんじですね。
やっぱり観ないと~~

投稿: ノルウェーまだ~む | 2015年5月26日 (火) 09時41分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
おはようございます。

まだ~むさんも、こちらの映画気になっていらしたのですね。
私も北欧映画や北欧ミステリーなどの小説
重苦しいものもあるけれど、独特の雰囲気があって好きなので
この作品もとっても楽しめました。
まだ~むさんはきっと肌で感じるところもあるのでは...?
お時間がありましたら☆

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2015年5月27日 (水) 07時38分

おぉー、主演の男性は、「ゲーム・オブ・スローンズ」のジェイミー・ラニスターですね!! 興味津々です。探してみます!!

投稿: マイキー | 2015年5月27日 (水) 17時16分

☆ マイキーさま ☆
こんにちは。 ご無沙汰しています♪
コメント、ありがとうございました。

主演のニコライ・コスター=ワルドーはすてきな俳優さんですね!
ドラマは見ない私も、ゲーム・オブ・スローンが気になってしまいました。

マイナーなデンマーク映画なので上映館が少ないですが
機会がありましたら。

投稿: ☆ マイキーさま ☆ | 2015年5月28日 (木) 14時46分

こんばんは。いつもTBありがとうございます。

ニコライの大ファンなのと、スサンネ・ビア映画も大好きなので楽しみにしていた一作です。
子供をすり替えるという行為には少々戸惑い、アンドレアス夫婦のあの乳児はいったいどこへ行ったのか?なんてとても心配しましたがラストは良かったです。一安心でしたね。

人間て時に後先を考えないで行動してしまうのかも知れません。アンドレアスがそうですから。でも彼は結果を覚悟して行動したようにも思えます。

舞台となったデンマークの湖畔の家はホント素敵です。クリスマスのイルミネーションと部屋のキャンドルは美しい!!の一言です。

投稿: margot2005 | 2015年6月 2日 (火) 19時42分

☆ margot2005さま ☆
こんにちは。
この作品、おもしろかったですね。

アンドレアスが、子どもが誘拐されたと騒ぐトリスタンを訊問する時は
真相を知っているだけに心穏やかではなかったでしょうね。
彼としてはパニックに襲われて咄嗟にとった行動でしたが
後からどれほど後悔したことでしょう...

湖畔のお家はほんとうにすてきでしたね!
特に灯りの使い方がさすがは北欧と思いました。

投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2015年6月 3日 (水) 08時02分

こんにちは。
ラストでは、「ああ、これで良かったんだなぁ…」と思わせてくれました。
アンドレアスもかなり救われた思いをしたことでしょう。
北欧ってみんなが自立しているイメージがありますが、一方ではそれぞれ孤独を抱えているのかもしれません。

投稿: ここなつ | 2015年7月14日 (火) 13時19分

☆ ここなつさま ☆
おはようございます♪
希望の感じられるラストがよかったですね。good

北欧映画って美しさの中に、厳しさや残酷さがありますが

そこに深いドラマが感じられて好きです。


投稿: ☆ ここなつさま ☆ | 2015年7月15日 (水) 06時52分

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