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サンドラの週末

マリオン・コティヤール主演のヒューマンドラマ、「サンドラの週末」(Deux jours, une nuit / Two Days, One Night)を見ました。突然解雇を言い渡された女性の復職を求めての2日間の奮闘を描くベルギー映画です。

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体調不良で休職していたサンドラ(マリオン・コティヤール)が復帰しようとした矢先の金曜日、会社から突然解雇を言い渡されます。1000ユーロのボーナスと引き換えに彼女を解雇することに、16人の従業員のうち14人が賛同したというのです。

月曜日までに16人の過半数がボーナスを諦めることに同意したら解雇を取り消してもいい、という約束を取り付けたサンドラは、週末の2日間、同僚ひとりひとりの家を訪ね歩いて、説得に回りますが...。

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まず、人事が従業員の多数決で決まる、ということにびっくりしました。

この映画を見て思い出したのが、「キリマンジャロの雪」という(ヘミングウェイの小説ではなく)2011年のフランス映画。誰をリストラするかを組合員がくじ引きで決める場面からはじまり、その時も軽いカルチャーショックを覚えたのでした。

うつ病を患っていたサンドラは、金曜日に通告を受けた時にはショックに打ちのめされますが、家族や一部の同僚たちから励まされ、他の皆をなんとか説得してみようと勇気を奮い起こします。ここから彼女の長い長い2日間がはじまります。

当然ながら、子どもの教育費に充てたい人、家をリフォームしている人、週末も家計を助けるためにアルバイトしている人...皆それぞれに事情があり、サンドラのためにボーナスを返上しよう、なんて言ってくれる人はそうそういません。

サンドラが波風を立てたことで、同僚の中には、親子で殴り合いのけんかをはじめる人や、離婚話にまで発展する人も。それでも、以前サンドラにミスをかばってもらったから...困った時はお互い様だから...と少しずつ協力してくれる人が出てきます。

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私だったら、とてもこんな説得はできないし、逆に同僚から頼まれても困る、復職できたとしてもかえって皆とやりにくくなるのではないかしら...もう一度、会社と交渉するか、さっさと見切りをつけて新しい仕事を見つけた方がいいのでは?なんて思いながら見ていました。

会社とだったらドライな交渉もできるでしょうが、従業員同士の話し合いで解決させるとは、なんて酷な...と思いますが、アメリカのばりばりの資本主義と違い、隣人を助け合うという精神が、フランス文化圏にはまだ生きているのでしょうか。

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オスカー女優のマリオン・コティヤールが、ノーメイク、タンクトップで熱演。何度もくじけそうになりながら、ただひたすら同僚の家を訪れて説得する姿を追う様子は、映画というより、クローズアップ現代の取材フィルムを見ているようですが^^ 結末が気になって引き込まれました。

そして、ラストでのサンドラの決断の潔さ。きっとあの時、彼女の中では、この2日間に話したひとりひとりの顔が浮かんだことと思います。ひと回り大きく、強くなった彼女のさっぱりとした笑顔が心に残りました。

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映画」カテゴリの記事

コメント

セレンさん☆
カワイイばかりのマリオンコティヤールと思っていたら、素顔で頑張ってとても素敵ですね。
これからの彼女の作品選びも楽しみになってきました。
会社を相手に…ならまだ頑張れそうですが、同僚を説得するのは本当に大変そうですね。
そもそもうつ病だということなら、尚の事この様な重圧には耐えられないのでは~~と思ってしまいました。

投稿: ノルウェーまだ~む | 2015年6月 1日 (月) 21時39分

カルチャーショックを通り越すようなショックです(笑)
こういう解雇の方法を考えると、日本の会社の多くは
従業員に優しいと思います。
まぁ、なかには、ブラックと言われるなかでもトリプルブラックの
ような会社はどうかわかりませんが(笑

投稿: イザワ | 2015年6月 2日 (火) 01時47分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。
マリオン・コティヤール、ベルギーの普通のおばさんを
とても魅力的に演じていましたよ♪
すてきな女優さんですよね。

職やお金のからむことを、社員同士で相談させる...って
後から何かともめそうですし、日本ではあり得ないですよね。
フランス(映画はベルギーですが)では普通なのかな~?

映画でも、衝動的に睡眠薬をひと箱飲んだりして
見ていて危なっかしかったですが...^^;
この2日間で少し精神的に鍛えられたかもしれませんね。

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2015年6月 2日 (火) 15時02分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
日本ではこんな説得をするなんてあり得ないですが
フランスやベルギーでは、こういう時に支えあう
分かち合いの精神が生きているのかな~?と思いました。

かえってもめ事の元になりそうですけどね。^^

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2015年6月 2日 (火) 15時17分

新聞の映画広告でこの話の粗筋だけ読んで
こんな気がめいるの観たくないと思っていたのですが
意外に評判よいようで驚いています。
後味がとてもよかった!という友人も。
セレンさんはお勧めですか?

投稿: zooey | 2015年6月 2日 (火) 16時52分

☆ zooeyさま ☆
こんにちは。
監督さんはカンヌの常連で、社会問題をテーマにした作品が
多いみたいですね。
マリオンが魅力的でしたし、異文化の発見もありましたが
映画というより、クローズアップ現代を見ているみたい。^^
DVDで十分かもしれませんね。
後味はよかったですよ☆

投稿: ☆ zooeyさま ☆ | 2015年6月 3日 (水) 07時46分

こんにちは~。cherry

この作品、ストーリーを読ませていただくと、本当に文化が異なると、社会通念もこれほど異なるんだな~っていう事を痛感できそうな内容ですね。

解雇の条件に同僚の意見が反映される・・ってところに、individualismが徹底されている社会を感じます。これは、日本ではしばらくは無理でしょうね・・。

これって、やっぱり民主主義なのかな~?日本人にはよくわかんないですね~。

そんな感想み含めて、とても問題作って感じがします!happy01

投稿: ごみつ | 2015年6月 3日 (水) 16時26分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。

これがアメリカだったら、
「それはあなたの問題だ。私には関係ない」
と言うと思うのですよね。おそらく日本でも...

そもそも一人ひとり能力が違うのに、頭数だけでリストラを
決めるというのもなんだかな~
それって決してフェアではないと思うのです。
どちらかというと社会主義的な考え方ですよね。

フランスの一面を見た気がしました。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2015年6月 4日 (木) 16時55分

こんばんは。

さて所帯染みたマリオン・コティヤールも中々素敵です。
解雇されてもあきらめない精神は素晴らしいと思いますが、他の従業員まで巻き込むのはどうか?とも思いました。互いにイヤな思いをするにはわかっているのだから...。
そうそう「キリマンジャロの雪」でもくじ引きしてましたね?あのようなやり方ってフランス人の考えなのでしょうね。民主的かとも思えますが...どうなのでしょう?

ダルデンヌ映画は作品ごとに暗さが少なくなり本作は又見てみたいと思うダルデンヌ映画となりました。

投稿: margot2005 | 2015年6月 7日 (日) 20時21分

☆ margot2005さま ☆
おはようございます♪

弱さもある普通のおばさんを、マリオン・コティヤールが
魅力的にかわいらしく演じていましたね。

ああいうやり方ってどうなんだろう...と思いましたが
弱い立場の労働者が、お互いに助け合い、譲り合いながら
働く...というのはフランスならではのやり方なのでしょうね。
日本ではありえませんが、興味深く見ました。

他のダルテンヌ作品も見てみようと思います☆

投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2015年6月 8日 (月) 07時49分

こんにちは。
色々ドラマはありましたが、
雇用者側の狡猾さが結局勝利したということなのでしょうね。
精神的な勝利者がたとえサンドラだったとしても…。

投稿: ここなつ | 2015年8月 4日 (火) 13時09分

☆ ここなつさま ☆
こんにちは。

従業員同士で雇用の問題解決をさせるなんて
会社として責任放棄なのでは?なんて思いましたが
フランス圏ではよくあるやり方なのでしょうか...

最後は結局解雇されることになったサンドラですが
この二日間で精神的な強さを得て、彼女にとって
決して無駄ではなかった...と信じたいです。

会社も彼女のことをちょっと見直したみたいですし
これがきっかけでどこからかチャンスが巡ってくるといいですね。

投稿: ☆ ここなつさま ☆ | 2015年8月 4日 (火) 15時25分

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