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クロワッサンで朝食を / 死刑台のエレベーター

2012年公開のジャンヌ・モロー主演のヒューマンドラマ、「クロワッサンで朝食を」(Une Estonienne a Paris / A Lady in Paris)を見ました。エストニア出身イルマル・ラーグ監督の長編デビュー作です。

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エストニアの小さな町で、ダメ夫と離婚し、子どもたちは巣立ち、母を看取ってひとりぼっちになったアンヌ(ライネ・マギ)。そんな彼女に、フランス語ができて、老人ホームで働いていた経験を見込まれ、パリでひとりで暮らすエストニア出身の老婦人をお世話する仕事が舞い込みます。

若かりし頃から憧れていたパリ。しかし、パリの高級アパルトマンでアンヌを待ち受けていたのは、偏屈で気難し屋のフリーダ(ジャンヌ・モロー)でした。まもなくアンヌは心無いことばで追い出されますが、依頼主のステファン(パトリック・ピノー)に説得され、しぶしぶ仕事を続けることに...。

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雪深いエストニアにはじまり、憧れのパリに着いてからも、アンヌの心の中を映すような冬の曇り空。大きな起伏のない地味な作品ですが、ともに孤独なアンヌとフリーダが心を寄せ合うようになるまでが繊細に描かれ、最後には胸がしめつけられるような静かな感動を覚えました。

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フリーダの過去について多くは語られませんが、どうやら若い頃、歌手として活躍していた様子。エストニア語を話さず、アンヌの作るエストニア料理も食べず、クロワッサンと紅茶しか口にしない彼女は、故郷のしがらみを捨て、頑なにパリっ子として生きてきたのではないか?そんな風に思えました。

朝からきちんとお化粧し、おしゃれして居住まいを正す姿は、演じるジャンヌ・モローその人とも重なり、只者ではない迫力がありました。そして、息子ほども年の離れたステファンは、フリーダのかつての恋人で、カフェを持たせてもらった恩があって、今も何かと心にかけ、世話を焼いているのでした。

アンヌの献身的な世話の甲斐あって、カフェにも出かけられるようになったフリーダ。アンヌは孤独なフリーダの心を慰めたくて、パリに住むフリーダの昔の友人たちに声をかけてティーパーティを計画しますが、彼女の無垢の善意が結果としてフリーダを傷つけることになってしまいます...。

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フリーダのもとを飛び出したアンヌは、一晩中パリの街を彷徨い歩いてどんなことを思ったでしょう。アンヌはフリーダに自分の未来を見つめ、フリーダはアンヌにかつての自分を重ね...2人はいつの間にかお互いにかけがえのない家族となっていたのですね。

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死刑台のエレベーター
(Ascenseur pour L'echafaud / Elevator to the Gallows)

こちらは、ジャンヌ・モロー主演の1958年のフランス映画。ルイ・マルの監督デビュー作であり、ヌーヴェルヴァーグを代表する作品です。DVDの在庫が少なくてずっと借りられずにいましたが、最近BluRayが出てタイミングよく借りることができました。

モロー演じる社長夫人は、恋人に夫を殺させますが、彼はその後一晩中、電源が落ちた会社のエレベーターに閉じ込められてしまいます。もどってこない恋人を探して、一晩中街を彷徨い歩く夫人。一方、恋人の車は若い男女に盗まれ、彼らは旅先で事件を起こします...。

2つの事件が1つにつながるみごとな展開にうならされましたが、それ以上にノックアウトされたのが若き日のジャンヌ・モローの圧倒的な美しさ! 「クロワッサン~」で、フリーダがかつて妻子ある男性を奪ったために同郷人から爪弾きになっている...という設定が、この映画を見るとすんなり理解できました。^^

Bunkamura

さて...7月4~31日、渋谷のル・シネマで「ヌーヴェルヴァーグの恋人たち」という企画があり、往年のヌーヴェルヴァーグの名作が一挙上映されます。時間がゆるせば、私もいくつか見てみたいなーと思います。

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映画」カテゴリの記事

コメント

こんにちは!

「クロワッサンで朝食を」、凄く上質のドラマみたいですね。
ストーリーをちょっと聞かせていただいただけでも、それが伝わってきます。
ジャンヌ・モローも本当に歳をとられましたね~。それでも、現役で俳優さんを続けられてるのが本当に凄いし尊敬しちゃいます。

「死刑台のエレベーター」は、名作中の名作ですよね。これがフランス映画なんですよね!!
私もこの映画大好きです。ジャンヌ・モローのカッコよさと、マイルス・デイビスの音楽が忘れられません~。lovely

投稿: ごみつ | 2015年6月25日 (木) 17時40分

セレンさん☆
どちらも実は見たことがないのですが、素敵な映画ですね。
「死刑台~」は有名なのに…今度探して見ます☆
お年寄り・・・というと穏やかな縁側のおばあちゃんを思い起こしますが、実はプライドもあってなかなかにお世話する人は大変ですよね。
ことパリの老婦人ときたら、めちゃくちゃプライド高そうです。なんとも身につまされそうです。

投稿: ノルウェーまだ~む | 2015年6月25日 (木) 22時55分

こんばんは。TBとコメントありがとうございます。

「クロワッサンで朝食を」では、最初はスーパー級にわがままななマダムでしたが、徐々に可愛い年寄りに変身していったように見えて素敵でした。
シャネルを纏うヒロインや彼女の屋敷がとてもオシャレで、それだけで満足する一作でした。

ジャンヌ・モローって美女じゃないのですが、「死刑台のエレベーター」の彼女はとても美しく映りました。恋する女は美しく見えるのかもですね?
「死刑台のエレベーター」は語り継がれるサスペンスの中でもトップに入る作品かと思います。


さて、フランスの大女優ジャンヌ・モローって、歳とっても可愛い女性の雰囲気があるんですよね。若い頃よりチャーミングかも知れません。80代でも恋する女に違和感ないように思えます。モローが演じてきたヒロインは強い女性が殆どですから...。
大女優ジャンヌ・モローのクラシックな映画をもっともっと見たくなりました。

投稿: margot2005 | 2015年6月25日 (木) 23時32分

そうそう。
ユーロスペースで「ヌーヴェルヴァーグの恋人たち」の予告編見ました。魅力的な企画ですね。観に行けたら良いなぁとは思ってるのですが...。

投稿: margot2005 | 2015年6月25日 (木) 23時36分

過去の作品が今は500円程度でDVDとして手に入る時代に
なりました。
実は、もう、数十枚買ってあるのですが、なかなか観ることができず
代わりに、息子と娘が観ているようです。
無駄にならなくて良かった(笑)
8月は納品にも追いかけられずに、ゆったりとした気分で
溜まったDVDを観ようかと思っています^^

投稿: イザワ | 2015年6月26日 (金) 01時31分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。

「クロワッサンで朝食を」地味ながら心に染み入る作品でした。
ジャンヌ・モローはもう85歳??
十分おばあちゃんといっていいお年ですが
ただものではない凄みが感じられてかっこよかったです。

「死刑台のエレベーター」はなんというかもう
かっこいい!しびれる~!の一言です。
冒頭のJe t'aime...からもう、ああ、フランス映画だわ~
と感激しちゃいました。^^

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2015年6月26日 (金) 11時30分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんにちは。

「死刑台~」はず~っと借りられない状態が続いていたのですが
最近ニュープリントが出たようで、今でしたら借りやすいかも?
機会がありましたらご覧になってみてください☆

ジャンヌ・・モロー演じる老婦人、プライドは高いし意地悪だし
これは手ごわいぞ~という感じでしたが...
エストニアから出てきたアンヌが、彼女と接していくうちに
どんどんきれいになっていくのが印象的でした☆

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2015年6月26日 (金) 11時37分

死刑台のエレベーター、懐かしい名作です。マイルス・ディビスが即効で演奏したとの伝説がありますが、たしかに名曲でした。十代の頃、映画音楽にはまっていたので、けっこう即効説信じていましたが、実際には映画製作段階からかかわっていたのようです。曲はテープにエアチェックしてあるのですが、そのテープがどこにいったのやら。ステレオはまだ健在なんですけどね。

投稿: ヌマンタ | 2015年6月26日 (金) 11時49分

☆ margot2005さま ☆
こんにちは。

「クロワッサンで朝食を」、最初は心を閉ざしていたフリーダが
アンヌの献身的なお世話で少しずつ柔らかくなっていくところが
よかったですね。
そしてアンヌがどんどんきれいになっていくのも印象的でした。

シャネルと交遊があったというジャンヌ・モローならではの
ファッションやインテリアはため息ものでしたね。
若い女性には及びもつかない堂々たる着こなしに
大女優としての貫録を感じました。
年齢を重ねてなお背筋を伸ばし、恋心を忘れない...
そんな生き方にも刺激を受けました☆

そして「死刑台のエレベーター」は噂にたがわぬ名作ですね。
モノクロームゆえに、ジャンヌ・モローの美しさが際立って感じられました。
彼女はファム・ファタールが似合う女優さんですね。

ジャンヌ・モローの若い頃の作品、見たいのですがなかなか借りられないので
ル・シネマの企画からいくつかトライしてみようかなーと思っています☆

投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2015年6月26日 (金) 12時12分

☆ イザワさま ☆
こんにちは。
イザワさんは、たくさんDVDを買われたのですねー。
私は借りるの専門ですが^^
お気に入りの作品は、好きな時に何度も見られていいですね。
お子様たちとの映画談議も楽しめますね。

投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2015年6月26日 (金) 12時23分

☆ ヌマンタさま ☆
こんにちは。

死刑台のエレベーター、映画もすばらしいですが
マイルス・デイビスの音楽がまた、クールでしびれるんですよね。

音楽が映像をみごとに引き立てていますが
映画の製作段階から少しずつイメージをふくらませてこられたのですね。
ドラムでこんなにいろいろな表現ができるんだなーと感動しました。

投稿: ☆ ヌマンタさま ☆ | 2015年6月26日 (金) 12時36分

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受信: 2015年6月25日 (木) 23時12分

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受信: 2015年6月25日 (木) 23時13分

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