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ヘレン・シャルフベック @東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学大学美術館で開催された、「ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし」展(7月26日で終了)を見てきました。本展は、日本で開催されるシャルフベック初めての個展。フィンランド国立アテネウム美術館のコレクションを中心に、代表作84点が展示されました。

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ヘレン・シャルフベックは、19世紀末から20世紀初めにかけて活躍したフィンランドの女性画家。私にとっては初めて知る画家でしたが、新聞の特集記事を目にして、彼女の描く自画像にひと目で惹きつけられました。なかなか足を運べずにいましたが、閉展間際にようやく見に行くことができました。

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雪の中の負傷兵 (1880)
3歳の時に事故で左足が不自由となったシャルフベックは、11歳で絵の才能を見出され、美術学校に進学します。18歳の時に描いた「雪の中の負傷兵」がフィンランド芸術協会に認められ、奨学金を得てパリに留学します。

パリではマネやセザンヌ、ホイッスラーなどの影響を受け、ジャポニズムの流行も体験します。画家仲間とフランスのブルターニュ地方やイギリスのコーンウォール地方を旅し、土地の子どもたちを優しいまなざしで描きました。

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(左) 妹に食事を与える少年 (1881)
貧しい人々の生活を描いた作品。子どもたちへの温かいまなざしが感じられて、私は同時代のアメリカのイラストレーター、ノーマン・ロックウェルの作品を思い出しました。

(右) 日本の花瓶にはいったスミレ (1890)
花瓶のほか、背景にもうちわが描かれ、当時パリで流行したジャポニズムが取り入れられています。光あふれる明るい色彩が印象的。

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快復期 (1888)
イギリス滞在時に描いたこの作品は、1989年パリ万博で銅メダルを獲得しました。恋人だったイギリス人画家に婚約破棄され、失恋の痛手から立ち直りつつある心情を、病み上がりの少女の姿に託して描かれた、と解釈されています。

フィンランドに帰国したシャルフベックは、母親とヘルシンキ郊外の小さな町に住み、15年間どこにも旅することなく、この町の人々を描き続けます。そうした中で、最新の美術雑誌やファッション雑誌を取り寄せ、インスピレーションを得て、自身のスタイルを発展させていきました。

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(左) お針子(働く女性) (1905)
当時パリで人気のあったアメリカ人画家、ホイッスラーの「灰色と黒のアレンジメントNo.1(母の肖像)」の影響を受けて描いた作品。

(右) サーカスの少女 (1916)
マリー・ローランサンの影響を受けたとされる作品。水原希子ちゃんに似ているような...? ファッションモードを描いた一連の作品からは、女性らしい華やいだ気持ちが伝わってきました。

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(左) ロマの女 (1919)
(右) 未完成の自画像 (1921)

この頃、シャルフベックは19歳年下の男性に思いをよせていましたが、失恋してしまいます。(左)は胸が張り裂けるばかりの、慟哭の悲しみが伝わってくるようです。(右)さらには他の絵の裏に自画像を描き、それをナイフで傷つける、擬似自傷行為までしてしまいます。

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黒い背景の自画像 (1915)

シャルフベックは生涯にわたって自画像を描き続け、その数は40点にものぼります。表現方法はさまざまで、同一人物とは思えない作品もありました。特に晩年、スウェーデンで療養中に描かれた作品は頬はそげ、顔はくずれ、まるでゾンビのよう...。日々衰えていく自分自身をどんな思いで描き続けたのでしょうか。

↑はもっとも印象に残った自画像です。頬と唇に紅をさし、ブローチをつけて美しく装っていますが、表情は寂しげで、背景の黒には墓碑銘が書かれ、不吉な死の影が見え隠れしています。彼女の孤独な心のうちが伝わってきて、なぜか心を離さない作品です。

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コメント

こんばんは!

この展覧会、私も芸大前を通った時目にとまりました。
知らない作家さんなので気になったんですよね~。

結局足は運べませんでしたが、ご紹介の作品や、彼女の晩年の様子なんかを読ませていただくと、きっと繊細な女性だったんだろうな・・と思いを馳せさせられました。

本当に、初期の生き生きとした作品と、晩年の自画像はイメージが違いますよね。

それにしても19歳年下の男性にふられるのは仕方ないと思うな・・。(^_^;)

↑の石垣島の記事第一段も楽しく読ませていただきました!またおって旅行記事にもおじゃましますね~~。wave

投稿: ごみつ | 2015年7月30日 (木) 22時32分

☆ ごみつさま ☆
こんにちは。
今日も暑いですね~sun

ごみつさんも気になっていらしたのですね。
作品から漂う静謐な雰囲気に惹かれるものがあって
私も気になっていました。
マイナーでなかなか出会うことのないアーティストだと思うので
思い切って行ってみてよかったです☆

このあとの自画像はゾンビみたいのもあって
彼女の心の苦しみと痛みに思いを馳せました。

19歳年下の男性に失恋して絶望するなんて...
きっとピュアな心を持ち続けた女性だったのでしょうね。

旅行記も見てくださり、ありがとうございます。
しばらくおつきあいくださいませ☆

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2015年7月31日 (金) 12時13分

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