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2015年9月

ヴィンセントが教えてくれたこと

ビル・マーレイ主演のハートウォーミングなコメディ、「ヴィンセントが教えてくれたこと」(St. Vincent)を見ました。

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ニューヨーク、ブルックリン。借金まみれで自堕落な生活を送っているヴィンセント(ビル・マーレイ)の隣の家に、シングルマザーのマギー(メリッサ・マッカーシー)と息子のオリバー(ジェイデン・ベーデラー)が引っ越してきました。

仕事が忙しいマギーに代わり、ひょんなことからオリバーのベビーシッターを引き受けることになったヴィンセントですが...。

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予告を見た時から、変わり者のおじいさんとおませな少年の凸凹コンビが友情を育む...という展開は予想通りで、大きなサプライズはありませんが、ほっこりと心癒される作品でした。

オリバーを演じるジェイデンくんはかわいいし、ビル・マーレイの肩の力を抜いた(ように見える)ゆる~い演技がなごませます。ナオミ・ワッツはロシア系の妊婦のストリッパー?というちょっぴり変わった役どころを生き生きと魅力的に演じていました。

メリッサ・マッカーシーはいかにもアメリカにいるタイプのお母さんで懐かしくなりましたし、陽気な先生やいじめっ子もふくめ、悪人が登場しないところが心地よかった。

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ベビーシッター代欲しさにオリバーの世話を引き受けたヴィンセントですが、まじめに面倒見る気なんてさらさらない。自分が行きたいところにオリバーを連れて行き、会いたい人に会いますが、そんな表裏のないところが、オリバーのまっすぐな目には信用のできる大人と映ったのでしょうね。

なにしろヴィンセント自身が勝手気ままに生きている子どものようなものなので、すぐに意気投合するのも自然の成り行きだったのでしょう。親目線で見ると眉をひそめるようなことも、オリバーにとっては大人の世界を垣間見る、いい社会勉強になったかも?

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ヴィンセントとオリバーのあれこれと平行して、オリバーの学校ではプロジェクトの授業が進行中。プロジェクトのテーマはカトリックの学校らしく”聖人”ですが、子どもたちの宗教的バックグラウンドがさまざま、というのがミソ。(ちなみにオリバーは、”たぶんユダヤ教”らしい。^^)

オリバーがヴィンセントと接する中で、何を感じ、考えたか...最後のオリバーのプレゼンテーションもすばらしかったですが、こういう”正解のない授業”がアメリカならではで、すてきだなーと思いました。

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フォックスキャッチャー

先日の目黒シネマに続いて、今度は飯田橋の名画座、ギンレイホールで「フォックスキャッチャー」(Foxcatcher)を見てきました。この作品、公開時にすごく気になっていたのですが、重すぎて劇場で見るにはつらいかも...と躊躇していたのです。でもやっぱり見に行ってよかった。

ちなみに2本立てのもう1本は「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」でした。こちらは公開時に続いて見るのは2度目でしたが、いい映画は何度見てもおもしろい! 展開がわかっているので、リラックスして楽しめました。

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1984年ロサンゼルスオリンピックのレスリングで金メダルを獲得した兄デイヴ(マーク・ラファロ)、弟マーク(チャニング・テイタム)のシュルツ兄弟。デイヴはその後、コーチの道を進みましたが、マークは乏しい収入の中で、4年後のソウルオリンピックに向けて黙々とトレーニングを続けていました。

そんなある時、デュポン財閥の御曹司であるジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)から、願ってもない申し出が。自ら率いるレスリングチーム”フォックスキャッチャー” で、いっしょにソウル五輪を目指そうというのです。デュポン家の広大な敷地に招かれ、最新鋭の施設でトレーニングを始めたマークでしたが...。

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スティーヴ・カレルがコメディの演技を封印し、別人のように役に作り込んだことで話題になった作品。特殊メイクで鼻の形を変え、外見や表情をみごとにデュポン氏に似せていますが、それ以上にただならぬ狂気がびりびり伝わってきて圧倒されました。

スティーヴ・カレルほど話題になっていなかったので不意打ちでしたが、マーク・ラファロの変わりようにもびっくりでした。髪型やあごひげはもちろん、表情まで役になりきっていて、最後までまったく誰だかわかりませんでした。

監督は「カポーティ」、「マネーボール」など、実話ものに定評のあるベネット・ミラー。ドキュメンタリーのような冷徹な作りで、淡々とした会話、音楽もほとんどなく、物語としての起伏も少ないのですが、作品いっぱいに張り詰めた緊張感と不穏な空気に気おされて、最後まで目が離せず、引き込まれました。

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アメリカはスポーツに理解があり、選手が優遇されているイメージがあったので、金メダリストであっても、栄光とは裏腹に生活はこれほど苦しいのか、とまずそのことに驚きました。不器用で他の生き方を知らないマークが、ひたすらストイックにトレーニングに励む姿には胸を衝かれました。

そうしたスポーツ選手に手を差し伸べる大富豪がいるのが、アメリカのいいところですが、銀のさじをくわえて生まれてきたデュポン氏は、母親との関係は良好とはいえず、孤独の中、心の中に深い闇を抱えながらこれまで生きてきたようです。

ただスポーツを愛し、純粋に支援するだけならよかったのですが、そこには母親に認められたい、誰からも尊敬されたい...複雑怪奇な自尊心や虚栄心が渦巻いていた。そして結局、母親が彼にしたように、彼もまた知らず知らずのうちに、お金によって人の心を支配しようとしたのかもしれません。

試合前、プレッシャーに押しつぶされ壊れそうになったマークを、的確な方法で立て直したデイヴ。スポーツの世界の厳しさを垣間見る印象的な場面でしたが、そこには、ただ利己的な虚栄心を満たしたいだけのオーナーと、愛ある指導者との決定的な違いがありました。

何がデュポンの狂気に火をつけたのか、ほんとうの理由はわかりませんが、彼が何をもってしても手が届かないものがあると気付いた時、自分の存在意義を見失ってしまったのかな...と想像しました。

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監督と主要キャストの3人。すてきな笑顔です。

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harumi's (ハルミズ)

料理家の栗原はるみさんが手がけるレストラン harumi's(ハルミズ)に、先月と今月の2回、休日のランチを食べに行きました。昨年オープンしたそうですが、最近偶然知りました。学芸大学駅から少し歩きますが、目黒からバスも出ています。

栗原はるみさんの本や雑誌は、アメリカにいた頃、日本からのおみやげに何度かいただいたことがあり、まだブログやレシピサイトがなかった頃は、ほんとうに助かりました。いくつかのお料理は今でもよく作っていて、すっかり我が家の定番になっています。

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住宅街にあるこちらのお店は、大きな窓から日差しが柔らかく入り、ナチュラルウッドのインテリアが心地よい。お店の前にはシルバーリーフの木々が植えられ、目に優しくなじみます。私たちはメインのお料理に3種の副菜、ごはん、お味噌汁、ドリンク、デザートがつくお昼のセットをいただきました。

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これは8月に行った時。メインのお料理は海老チリですが、揚げたなすとズッキーニがのっているのが見た目に華やかで、しかもヘルシー。副菜のにんじんとツナのサラダと、油揚げと小松菜の煮ものは、私も栗原さんのレシピでよく作ります。^^

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私は豚しゃぶをいただきました。わずかに梅の香りがしてさっぱりとしたお味です。見た目はちょっぴり少な目に感じますが、食べ終わる頃にはしっかりおなかいっぱいに。ほんとうはこのくらいの量で十分なんですよね...ふだんがいかに食べ過ぎか、反省しました。

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デザートはパイナップルのかき氷でした。この一口サイズがちょうどいい。飲み物は私は食後のコーヒーにしましたが、ジュースやグラスワインなども選べます。

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こちらは9月に行った時。メインのお料理は豚肉のソテー クリームソースです。ソースに合わせて舞茸としめじも白というのがおしゃれです。

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私はさんまのコチュジャン煮をいただきました。春菊をこんな風に生でいただくのが新鮮。メニューもすっかり秋仕様です。

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この日のデザートは抹茶汁粉でした。抹茶ミルクの中に甘い小豆と白玉がかくれています。ランチョンマットに手書きのレシピが印刷されているのも栗原さんらしいアイデアですね。

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ダイニングの横にショップが併設されていて、オリジナルの食器や調理道具、雑貨など、それからセレクトされた食品などがありました。スタッフの方たちもみなさん穏やかで、家庭的な雰囲気がくつろげました。

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わたしに会うまでの1600キロ

リース・ウィザースプーン主演のヒューマンドラマ、「わたしに会うまでの1600キロ」(Wild)を見ました。全米ベストセラーとなったシェリル・ストレイドの自叙伝を、「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャン・マルク=ヴァレ監督が映画化。脚本は「17歳の肖像」のニック・ホーンビィ。

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DVの父親と離婚し、女手一つで育ててくれた最愛の母(ローラ・ダーン)を亡くしてショックを受けたシェリル(リース・ウィザースプーン)は、優しい夫を裏切り、薬と男に溺れる自暴自棄の生活を続け、ついには結婚生活が破綻してしまいます。

すべてを失ったシェリルは、大自然と向き合うことで自分の姿を見つめ直そうと、まったく経験のない1600kmのトレイルを歩くことを決意します...。

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リース・ウィザースプーンが、アメリカのトレイルを歩く映画、というので楽しみにしていました。映画は、リース演じるシェリルが荒れた山の中腹で登山靴を脱いで、靴擦れで血まみれになった足の手当てをしている間に、その靴を谷底に落としてしまう...という最悪の事態からはじまります。

彼女が歩いているのは、西海岸のカリフォルニアからオレゴンにかけて、シエラ・ネバダ~カスケード山脈を縦走するパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)。映画のHPに地図がありますが(コチラ)、日本列島が丸ごと入るほどの長い距離。それを初心者の彼女が、3か月かけて踏破するというのです。

何しろ初心者なので、道具の選び方からわからない。足は血だらけにしてしまうし、荷物は余計なものを入れすぎて重くて背負えないほど。燃料を間違えてコンロが使えず、何日も冷たいおかゆを食べることになる始末。

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何が彼女をそこまで追い込んだのか...映画は、彼女が山道で悪戦苦闘し、ただひたすらに前に進む姿を追いながら、何度も過去がフラッシュバックする形で、彼女のこれまでの人生を明かします。

最愛の母を亡くしたとはいえ、理解ある夫がいながらどうしてあんなに自暴自棄になったのか...正直理解できない部分もありましたが、どんなに苦労しても決して希望を失わなかった母の命を救えなかったことで、シェリルは自分を責め、自分だけが幸せになることが許せなかったのかな...?と想像しました。

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大自然相手の女性の一人旅は、危険もたくさんありますが、中継地点でほっとくつろいだり、ベテランハイカーたちに助けてもらったり、ルートの途中で雪が残って歩けないところは、無理せず迂回路を歩いたりしながら、シェリルはただひたすらに歩き続けます。

私もアメリカでトレッキングのおもしろさに目覚め、旅先で何度か日帰りのトレイルを楽しみましたが、この映画では、あえて景色のよい場所をなるべく映さないようにしているように感じました。それはおそらくスタッフや作者が、この作品を観光映画にしたくなかったからではないかな?と思います。

ゴールも実にあっさり描かれていましたが、私はそこにかえってリアリティを感じました。人生だって毎日お祭りがあるわけはなく、ゴールがバラ色とは限らない。でも毎日の小さな一歩は、確実に自分の糧として残る...シェリルに自分を重ねつつ、そんなことを思いました。

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原作者のシェリル・ストレイドさん。映画のテーマ曲となっている「コンドルは飛んでいく」、それからシェリルがトレイルの中継所に書き残していく”名言”がよかった。

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ナイトクローラー

ジェイク・ギレンホール主演の犯罪スリラー、「ナイトクローラー」(Nightcrawler)を見ました。「リアル・スティール」、「ボーン・レガシー」の脚本家、ダン・ギルロイの監督デビュー作です。

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ロサンゼルス。職を持たず、盗んだものを売りさばいて生活しているルイス(ジェイク・ギレンホール)は、たまたま居合わせた交通事故現場で、衝撃映像を撮ってテレビ局に売りつけるスクープ専門カメラマンの仕事を知り、自分もやってみようと(盗んだ高級自転車を売って)ビデオカメラを手に入れます。

警察の無線を傍受して事故現場に駆け付け、見ようみまねで撮影した映像がローカルテレビ局のニュース番組に買い取ってもらえたルイスは、ディレクターのニナ(レネ・ルッソ)のアドバイスで、もっと高く売れる刺激的な映像を撮ろうと、この仕事にのめり込んでいきます...。

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予告を見ておもしろそう!と楽しみにしていた作品。公開初日の夕方に見に行きましたが、上映館が少ないこともあって満席でした。クセのある作品で、後味も決してよくはないのですが、見る者の心をわしづかみにする不気味な魔力がありました。役作りのために体重をしぼった、ジェイクの怪演がみごとでした。

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夜の街をなめるように徘徊し、獲物を見つけるや飛びかかり、食いついて離さないルイスは爬虫類のようないやらしさがあり、まさにナイトクローラー(夜を這う人)と呼ぶのにふさわしい。やせこけて、大きな眼をギラつかせ、常に血のにおいを探し求める姿は、ハイエナのようにも見えました。

学校は出ていないが、必要なことはすべてネットで学んだと言うルイスは、頭の回転が速く、交渉上手。この才能をもっとプラスの方向に生かしたらいいのに、と思いますが、人に使われ、まじめに働くなんて、彼にはばかばかしくてできないのでしょう。

家族も友人もいない彼にとって、信じられるのは自分だけで、孤独であることもいとわない。そんな一匹狼の彼には、この仕事が合っていたようで、あっという間に撮影のコツをつかみ、視聴率が欲しい崖っぷちディレクターに頼りにされ、やがて彼女をもあやつるようになります。

いい絵を撮るために不法侵入や、死体を動かすことは当たり前。さらには警察を巻き込んで、わざと銃撃事件を引き起こし、自分の手を汚すことなくライバルの同業者や助手を躊躇なく陥れる。徹底した倫理観のなさがおぞましい。

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映画ではルイスを異常なサイコパスとして描いていますが、今や素人がスマートフォンで撮影した映像が、そのままテレビのニュース番組に使われることも珍しくない時代で、この映画で描かれていることが必ずしも絵空事と思えないのが恐ろしい。

視聴率や部数、あるいはアクセス数至上主義は、メディアの使命を揺るがしますが、それは情緒的なストーリーやスリリングな映像、都合のよい結末を求めてしまう、私たちの問題でもあるのですよね...。

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MARINE & FARM &湘南ドライヴ

先月ドライヴを兼ねて、7月に湘南佐島にオープンしたばかりのレストラン、MARINE & FARM にお昼を食べにでかけました。場所は佐島マリーナのすぐ近く。都内からは車で1時間ちょっとの距離ですが、緑豊かな三浦の山道を抜けると、目の前に青い海と素朴な漁村の風景が広がり、旅の気分が味わえました。

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目の前は海! 暑い日でしたが、海風が心地よいテラスで食事することに。こちらのお店ではEAT LOCALLYをコンセプトに、地元湘南の海の幸、山の幸を使ったお料理が楽しめます。私たちは前菜とメインのお料理を1つずつ選ぶプリフィクスのランチをいただきました。

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パンはバゲット、フォカッチャ、サヴォイマフィンなど。食パンの焼き型に入って運ばれてきました。自家製のホイップバター、マーマレード、ほうれん草のハマス(ペースト)をぬっていただきます。

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前菜です。右は三崎マグロのタルタル。下に冷たいリゾット風?のライスサラダが敷いてあります。左は漁港直送鮮魚のカルパッチョ3種。それぞれ違うソースがかかっています。海の幸はもちろん、三浦の新鮮野菜もしゃきしゃきとおいしかったです。

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湘南釜揚げシラスのペペロンチーノです。パスターソースにはドライトマトと大葉がわずかに入り、アクセントになっていました。このパスタ、すごく気に入ったので、この夏は家でもまねして、何度も何度も作りました。^^

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漁港直送鮮魚のソテー。この日は金目鯛でした。つけあわせの野菜もおいしかったです。こちらのお店はお肉料理もありますが、やはりここでは海の幸が気分です。

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テラスから見る海は、底が見えるほど透き通ってとてもきれいでした。食後のデザートは場所を移すことにして...お店を出て、橋を渡ってすぐ隣の天神島を散策しました。

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天神橋から見るお店の様子。外から見ると、テラスはこんな感じになっています。客船のようなデザインですね。

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天神島の沿岸は岩場なので、人もほとんどいなくてとても静かでした。わずかにある砂浜にシートを敷いて、のんびり日焼けを楽しんでいる二人がいました。

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こちらは佐島マリーナ側。お天気がいいので、ボートや漁船がたくさん出ていました。

このあと、車に乗って海沿いの134号を葉山方面へ向かいました。佐島は静かでしたが、葉山に近づくにつれて人も車も増えてきて、海沿いのカフェはどこもいっぱい。ようやく葉山マリーナに空きを見つけ、かき氷風デザートでほっとひと休みしました。

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葉山マリーナといえば、学生時代に友人からチケットをもらって、ユーミンのコンサートに行ったことがありますが...いつの間にかプールもなくなり、すっかり寂れた印象になっていて驚きました。でも本業のマリーナは健在のようで、ヨットやボートが忙しく出入りしていました。

このあと、逗子、鎌倉...と江ノ島まで134号を走りましたが、沿道のどこの海水浴場も大にぎわい。夏の気分を満喫しました。

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蔡國強展:帰去来 @横浜美術館

先月の夏の暑いある日、横浜美術館で開催されている「蔡國強展:帰去来」(さいこっきょうてん:ききょらい / CAI Guo-Qiang: There and Back Again)(~10月18日まで)を見に行ってきました。

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蔡國強(ツァイ・グオチャン/さいこっきょう)さんは中国福建省出身。上海戯劇学院で舞台芸術を学んだあと、日本で創作活動をはじめ、現在はニューヨークを拠点に世界で活躍しています。火薬を使ったアートやパフォーマンスで知られ、2008年北京オリンピックの開会式・閉会式では視覚特効芸術監督を務めました。

本展は、日本では7年ぶりに開催される大規模な個展です。タイトルの「帰去来」(ききょらい)は、中国の詩人 陶淵明(とうえんめい)の代表作、「帰去来辞」(ききょらいのじ)から来ていて、蔡さんの創作の原点である日本に帰るという意味を表しているそうです。

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人生四季:夏 (2015) より部分

最初のギャラリーに展示されていたのは「人生四季」。春、夏、秋、冬、4つの大きな作品で構成されています。江戸時代の春画から着想を得た作品で、男女の姿がそれぞれの四季の自然とともに描かれていますが、輪郭は曖昧にて幻想的で、私はシャガールが描く恋人たちを思い出しました。

色つきの火薬を爆発させて描かれていますが、いったいどうやって?と思いましたら、後でメイキングの映像があって、謎が解けました。大きな型紙に描かれた下絵の通りにボランティアの方たちがはさみでスリットを入れ、火薬を爆発させてステンシルのようにカンヴァスに転写させるのです。

会場となった横浜美術館のエントランスホールで爆発させて作る、という大胆なプロジェクトに驚きましたが、ボランティアの方たちをも巻き込んだ参加型アート?というのが楽しそう。

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春夏秋冬 (2014) より部分

牡丹、蓮、菊、梅、と四季の自然がレリーフで描かれた白い磁器製のパネルの上に火薬を撒き、火をつけて爆発させた作品です。繊細なレリーフが爆発した火薬によってモノクロームに浮かび上がります。

同じギャラリーには、横浜美術大学の学生さんたちと共同して制作したという、テラコッタで作られた「朝顔」という作品が天井からぶらさがっていました。また、別のギャラリーには蔡さんのこれまでの制作活動を、時間を巻き戻しながら紹介するビデオがあり、興味深く見ました。

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壁撞き (2006) より部分

なんといっても圧倒されたのは、大きなギャラリーいっぱいを使って展示されている「壁衝き」(かべつき)という作品です。99体の狼が群れを成して空を飛んで疾走し、ガラスの壁に激突し振り落とされては、またもどって挑みかかろうとしています。

リアルな狼は剥製と思いきや、羊の毛皮や合成素材で作られたレプリカでした。99は道教で永遠の循環を意味する数字だそうです。ガラスの壁は、私たちの周りにある文化や思想などの見えない壁を表しているそうですが、あきらめずに何度も挑戦する狼の姿に勇気を与えられます。

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夜桜 (2015)

エントランスホールに展示された「夜桜」は、「人生四季」と同様、この場所でボランティアの方たちと火薬を爆発させて制作した大型の作品です。モノクロームの桜が墨絵のように浮かび上がり、はかなさと力強さを感じました。

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はじまりのうた / ONCE ダブリンの街角で

先月、名画座の目黒シネマに、ジョン・カーニー監督の2本立て、「はじまりのうた」「ONCE ダブリンの街角で」を見に行ってきました。どちらも、元ミュージシャンの監督らしい音楽愛あふれるハートウォーミングな作品です。

名画座に行ったのは、学生の頃にヒッチコックやチャップリンの映画を見に行って以来でしょうか...。驚いたことにかなり盛況で、私が見た回はどちらもほぼ満席でした。手書きのパンフレットや売店のお菓子など、レトロで温かい雰囲気に心が和みました。クセになりそうな予感です。

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はじまりのうた (Begin Again)(2013)

恋人に裏切られ傷ついたシンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)は、ニューヨークで音楽活動をしている友人にばったり出会い、彼のライブで一曲だけ歌わされることに。その歌を偶然聴いた落ち目の音楽プロデューサー ダン(マーク・ラファロ)は、グレタに音楽アルバムを作ろうと持ちかけます...。

キーラのささやくような歌声が実にチャーミング。声量を抑えた歌声は透明感があって、彼女の個性にぴったり合っていました。グレタの恋人を演じるのはMaroon 5のアダム・レヴィーン。ヒットメイカー グレッグ・アレクサンダーが手掛ける音楽はどれもよかったです。

ダンは、もともと才能ある音楽プロデューサーでしたが、長らくヒット曲に恵まれず、自分の作った会社から追い出され、家族からも見放されていました。しかしどん底の中で、グレタの歌に出会い、かつての情熱を思い出すのです。

スタジオもお金もないグレタとダンは、街角で見つけたミュージシャンや、遊んでいる子どもたちまで巻き込んで、ニューヨークのあちこちでゲリラ的に演奏して、デモテープを作るのですが、この過程がなんとも楽しい。

仲間が増えていくにつれ、音楽がだんだん生き生きと輝いていくのは、まるでストーンスープのお話みたい。街の喧騒まで味方につけて...最後はとっておきのアルバムになります。

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グレタがダンの娘バイオレットに、恋の指南をする場面も好き。(バイオレットを演じたのが、「トゥルー・グリット」の天才子役、ヘイリー・スタインフェルドと知って驚きました。子どもの成長は早い) 音楽が起こした奇跡に、心が温かくなりました。

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ONCE ダブリンの街角で (Once)(2007)

ダブリンの街角でいつものようにミュージシャンの”男”(グレン・ハンサード)が歌っていると、彼の歌に耳を止めたチェコ移民の”女”(マルケタ・イルグロヴァ)が声を掛け、2人は親しくことばを交わすようになります。女が弾くピアノに男がギターを合わせ、2人は音楽を通じて惹かれあいますが...。

この作品はだいぶ前に見たことがあり、今回再見です。

アイルランド出身の監督が故郷を舞台に作った長編デビュー作で、低予算ながらじわじわと人気が出て大ヒットしました。主題歌はアカデミー賞歌曲賞を受賞。映画はミュージカルに舞台化されて、ブロードウェイで上演されています。

恋人にふられた男と、事情があって夫と離れて暮らしている女、寄せ集めのミュージシャンで音楽のデモテープを作って...と物語のプロットが「はじまりのうた」とよく似ているので、それゆえに2作品を続けて見ると(生意気ですが)監督の成長を実感することができました。

この作品は音楽があまり私好みではなくて、最初に見た時にはそれほどノリ切れなかったのですが、お互いを大切に思い、それゆえに別々の道を行く二人の決断にさわやかな余韻が残りました。ラストのサプライズには胸が熱くなりました。

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ブルーベリー狩り 2015

毎年、夏に練馬区の観光農園にブルーベリー狩りに行くのを楽しみにしています。スーパーマーケットに国産のブルーベリーが並びはじめると、そろそろかしら?とサイトをチェックしています。

cherry 練馬区ブルーベリー観光農園開園情報

例年は8月の終わり頃に行ってましたが、今年は少し早めの8月中旬にある農園に電話すると、「もうそろそろ終わりなので、せっかく来てもらってがっかりさせては申し訳ない」とおっしゃるのです。

で、ほかの農園に電話してみると、「そろそろ終わりなのであまりたくさんはないけれど、それでも構わなければ」とおっしゃったので、「では今から伺います!」と予約を入れて出かけました。今年お世話になったのは、ファーム大泉学園さんです。

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10時過ぎ頃でしたが、私たちが一番乗りでした。写真からはまったく伝わってきませんが^^; この日は、連日のように東京が猛暑日の連続記録を更新していた頃で、朝から太陽がぎらぎらと照りつけていました。熱中症になったらどうしよう~と思いながら、少しでも大きな木に隠れるようにして、夢中で摘みました。

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今年はとにかく暑かったので、ブルーベリーができるのが例年より早かったようです。そろそろ収穫も終わりとのことで育ちすぎてしわしわになった実もありましたが、よく見ると見落としがちな隠れたところにぷっくりと大きな実が残っていて、意外とたくさん摘むことができました。

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こちらの農園では6種類のブルーベリーを栽培しているそうです。ブルーム(粉)のついた大粒のブルーベリーや、やや小粒の酸味のあるブルーベリーなど、私も全部は判別できないですが、味見をして好みの木を見つけては摘んでいきました。

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最後に持参したプラスティックコンテナに入れて量ってもらうと、2.2kgくらいでした。農園の方は、わざわざ遠くから来て(といっても車で1時間くらい)、大量に摘んでいくのを不思議に思ったようで、「ジャムを作るんですか?」「ここはどうやって知ったんですか?」など、いろいろ聞かれました。^^

私にはこういうやりとりも楽しくて、勝手に自分の田舎のような気持ちになっています。^^ 摘んできたブルーベリーは、そのままヨーグルトに入れたり、スムージーにしたり。新鮮なブルーベリーはとにかくおいしい。自分で摘んだと思うと格別です。残りは冷凍して、冬頃までゆっくり楽しみたいと思います。

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この日はブルーベリーレアチーズケーキを作りました。

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小さいココットに作って、ミニデザートにも。

過去の記事はこちら。
cherry ブルーベリー狩り 2010 (内堀農園)
cherry ブルーベリー狩り 2012 (高橋ブルーベリーガーデン)
cherry ブルーベリー狩り 2013 (芹沢農園)
cherry ブルーベリー狩り 2014 (ベリーズ愛らんど)

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ルーシー・リー展 @千葉市美術館

千葉市美術館で開催された、「没後20年 ルーシー・リー展」(Lucie Rie A Retrospective)(8月30日で終了)を見に行きました。

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20世紀を代表するイギリスの陶芸家ルーシー・リー。没後20年となる今年、日本各地を巡回する回顧展が開かれています。初期から晩年までの約200点が展示され、その大半が日本初公開とのこと。8月半ばの暑い一日、ドライヴをかねて出かけてきました。

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ルーシー・リーはオーストリア生まれのユダヤ人。ウィーン工芸美術学校で轆轤(ろくろ)のおもしろさに目覚め、陶芸の道に入ります。そして1938年、ナチス・ドイツがオーストリアを併合したのを機に、イギリスに亡命。ロンドン市内にアトリエ兼自宅となる家を見つけ、ここで生涯、制作を続けました。

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戦時中は作陶が困難になったため、陶器でボタンを作る仕事を始めました。会場ではたくさんのボタンやブローチ、イヤリングを見ることができましたが、デイジーの花やツイストリングなど、センスがあってとってもおしゃれ。器とはまた違う、リーの魅力に触れることができました。

リーの作るボタンは、戦争中のささやかなぜいたくとして、イギリスの高級洋服店に卸されたそうです。日本ではデザイナーの三宅一生さんがリーのボタンのコレクターで知られ、88年ごろに紹介したことで人気が高まりました。

また戦後は、ボタン制作のアシスタントとして雇ったハンス・コパーとともに、テーブルウェアも手がけました。カップ&ソーサー、コーヒーポット、ミルクピッチャーなど、モダンな中にも温かみがある生活の器は、どれもすてきでした。

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(左)線文大鉢(1958頃)  (右)黄釉線文(1968)

リーはこの頃から、独自の手法を確立していきます。「掻き落とし」は、博物館で見た青銅器時代の土器から着想を得たアイディアで、編み針を使って器の表面を引っ掻き、線を彫る手法。さらにその溝に色土を埋め込む「象嵌」という手法も編み出しました。

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白釉青線文鉢 (1979)

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ピンク線文鉢 (1980頃)

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青釉鉢 (1980頃)

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緑釉鉢 (1980頃)

1970年以降の円熟期といわれる頃の作品には、色彩の美しさに魅了されました。この色を出すために、長年にわたって釉薬研究を続けてきたリー。しっとりと落ち着いたダスティピンク、深々と鮮やかなロイヤルブルー...薄手の器にどことなく揺らぎが感じられるのも、手仕事の味わいがあってすてきでした。

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(左)線文円筒花器(1968頃) (右)スパイラル文花器(1980頃)

器のパーツをそれぞれ作り、組み合わせてひとつの作品にする「コンビネーション・ポット」、異なる色の土を組み合わせて轆轤で引き上げ、らせん模様を作る「スパイラル文」も、リーが用いた手法です。

(右)のポツポツと穴の模様が入っているのは「溶岩釉」という手法。初期の頃から取り入れていましたが、時とともに洗練されています。

最後に、イギリスでTV放映されたドキュメンタリーフィルムを見ました。作品が醸し出す雰囲気と同じく、穏やかで凛として美しく、そして少女のようにかわいらしいリーにすっかり魅了されました。リーが愛用していた電気窯も、初めて見たので興味深かったです。

千葉市美術館での展覧会は終了してしまいましたが、今後は姫路、郡山、静岡で順次開催されます。スケジュールはコチラ

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