« 2015年10月 | トップページ | 2015年12月 »

2015年11月

コードネーム U.N.C.L.E.

ガイ・リッチー監督のスパイアクション、「コードネーム U.N.C.L.E.」(The Man from U.N.C.L.E.)を見ました。
boutique コードネーム U.N.C.L.E. 公式HP

The_man_from_uncle_10

東西冷戦下の1963年。CIAエージェントのナポレオン・ソロ(ヘンリー・カヴィル)とKGBエージェントのイリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)は、ナチスの残党を引き入れて核兵器拡散をもくろむ国際犯罪組織を制圧するため、米ソの対立を越えて手を組むことに。

組織に潜入する手がかりとなるドイツ人科学者の娘ギャビー(アリシア・ヴィキャンデル)の助けを借りて、3人はギャビーの叔父がいるローマへと向かいますが...。

The_man_from_uncle_2_2

1960年代に人気を博したTVドラマシリーズ、「0011ナポレオン・ソロ」をリメイク。オリジナルのドラマは知りませんでしたが、「おしゃれ泥棒」「シャレード」などの古きよき時代の小粋なコメディを彷彿とさせる、おしゃれで楽しい作品でした。

ガイ・リッチー監督の「シャーロック・ホームズ」は、19世紀のロンドンを舞台にしながら冒険活劇としてはじけすぎていましたが、この作品は60年代のテイストを生かしつつ、スピード感のあるストーリー展開で、そのバランス感覚がとてもよかった。

The_man_from_uncle_7

古いものが大好きな私には60年代のファッションや車にわくわくしましたし、旅情あふれるローマを舞台に、スタイリッシュな映像と音楽も楽しめました。そして、なんといっても登場人物のキャラクターが魅力的でした。

The Man from... と原題にあるように、TVドラマではもともとナポレオン・ソロが主人公だったそうですが、いつしかイリヤの人気が高まってバディドラマになったとか。映画でもクールな二枚目のソロと、シャイだけどキレやすいイリヤ、凸凹コンビのふたりの掛け合いが楽しかったです。

The_man_from_uncle_5

そしてヒロインのギャビーを演じるアリシア・ヴィキャンデルが、とにかくキュートで魅力的。清楚な雰囲気はオードリー・ヘップバーンを彷彿とさせて、同性ながらきゅんきゅんしました。彼女が着こなす60年代のファッションもとっても好みでした。

あとから、デンマーク映画の「ロイヤル・アフェア」で王妃を演じた女優さんだ!とわかりましたが、来春公開の「リリーのすべて」(The Danish Girl)ではエディ・レッドメインの妻役を演じているので、こちらもとっても楽しみです。
rouge The Danish Girl Official Trailer

The_man_from_uncle_6

悪役のヴィクトリアを演じるエリザベス・デビッキは、ゴージャスで目の覚めるような美女。どこかで見たことがあると思ったら、レオナルド・ディカプリオの「華麗なるギャツビー」で、ヒロインの親友を演じていた女優さんでした。

ヘンリー・カヴィルは、知的でエレガントな正統派の二枚目ですし、「ソーシャル・ネットワーク」や「J・エドガー」でのパワーエリートのイメージがあったアーミー・ハマーは、この作品では朴訥に見えて新鮮でした。イリヤがチェスをしている横で、ギャビーがパジャマ姿でダンスに誘うシーンが大好きです。

久しぶりにヒュー・グラントが出てたのもうれしかった。このほかデヴィッド・ベッカムがカメオ出演していたことをあとから知りましたが...まったく気がつかなかったのが悔しい~。><

The_man_from_uncle_11_4

ソロ&イリヤ

The_man_from_uncle_12

オリジナルのTVドラマシリーズ

| | コメント (12) | トラックバック (12)

武器をアートに @東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学大学美術館で開催中の「武器をアートに」展(~11月23日)を見に行きました。
bicycle 武器をアートに モザンビークにおける平和構築 東京藝術大学大学美術館

Transforming_arms_to_art

アフリカ南東部に位置するモザンビーク共和国では、1964~1975年の独立戦争、その後1992年まで続いた内戦の間に、外国から大量の武器が供給され、戦争が終わるとそれらの武器が残されました。

1995年、武器を農具や自転車に交換し、武装解除を行おうという「武器を鋤に」プロジェクトがはじまりました。武器と交換された生活用具は人々の生活を助け、集まった武器は爆破処理されました。そして一部は二度と使えないように切断され、アートとして生まれ変わりました。

それらの作品は世界各国のミュージアムに所蔵され、平和へのメッセージを発信しています。本展では、国立民族学博物館と、このプロジェクトを支援するNPO えひめグローバルネットワークが所蔵する作品を展示し、モザンビークの平和構築への取組みを紹介しています。

2015112208

展示作品は全部で21点。そのすべてが銃を分解して作られたものです。メタリックな細身の人物に、ふとジャコメッティの作品を思い出しました。アーティストたちはいずれも美術の専門教育を受けていませんが、このプロジェクトがきっかけで作品作りを始めたそうです。

上の作品は、クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)の「ギターを弾く男」。ノリノリの動きが伝わってくる楽しい作品ですが、よく見ると持ち手の部分や銃身など、すべて銃の一部でできていることがわかります。実際に戦争に使われ、人を殺したものだと思うと、その生々しさに体が震えてきました。

2015112201

クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター) 「肘掛椅子」。この作品には、AK47(旧ソ連製)、AKM(中国製)、リボルバーピストル(ブラジル製)、ピストル(ドイツ製)などが使われています。

2015112202 2015112203

鳥たちは生き生きとして、今にも動き出しそう。恐竜の化石ようにも見えます。

2015112204

「いのちの輪だち」は、フィエル・ドス・サントスさん、クリストヴァオ・カニャヴァート(ケスター)さんの共同作品。メイキング映像が上映されていて、土に埋められた武器を掘り出し(文字通りザクザク出てくる)、それらを切断し、組合せ、ハンダでつけて制作する様子を見ることができました。

男性と、子どもを背負った妻が自転車に乗り、その横を犬が追いかけ、空には鳥が飛んでいます。どこから見ても平和で幸せそうな風景ですが、これらもすべて銃をつなぎ合わせて作られている...そのギャップに胸を衝かれます。

2015112206_3 2015112205_4

(左)フィエル・ドス・サントス 「水を運ぶ女性」は、日常生活のひとコマが目に浮かんでくるような作品。 (右)フィエル・ドス・サントス 「読書する男」は、横顔のシルエットにちょうど目がついているのがおもしろい。

2015112207

フィエル・ドス・サントス 「パンを焼く人」 かまどにパンを入れるところでしょうか。きびきびとした動きにリズムが感じられます。

「武器を鍬に」プロジェクトは、旧約聖書イザヤ書2章4節の「彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」ということばから来ています。

国をあげての勇気ある決断に心を打たれますが、内戦から20年以上たち、”モザンビークの奇跡”とよばれるほどの経済成長を遂げているそうです。今なお回収されていない武器や地雷が残っているというモザンビークの、そして世界の平和と幸せを願ってやみません。

2015112209

紅葉の上野公園

| | コメント (10) | トラックバック (0)

新宿御苑の秋バラ

代々木でお昼を食べた後は、久しぶりに新宿御苑に行ってみることにしました。入口が3か所ありますが、お店から歩いてすぐの千駄ヶ谷門から入りました。
maple 新宿御苑 公式HP

新宿御苑は、高遠藩内藤家の江戸屋敷をルーツとし、明治時代に皇室の庭園として整備され、戦後から公園として一般公開されました。広大な敷地にフランス式整形庭園、イギリス風景式庭園、日本庭園が配され、四季折々の変化に富む風景が楽しめます。

2015111901_2

千駄ヶ谷門を入ってすぐ、桜園地から池の方を望む風景です。葉が落ちて冬枯れになりかけた木々の、日暮れの空のような柔らかな色彩がすてきでした。

2015111902

ソメイヨシノは色づいた葉っぱをだいぶ落としていましたが、その中でただひとつ可憐な花を咲かせている桜がありました。昨年、箱根でも見たジュウガツザクラです。年に2回咲く桜ですが、秋に見るとこの木だけ魔法がかけられたようで、幻のような風景でした。

2015111903

モミジの紅葉はまだでしたが、フランス式整形庭園では秋バラがちょうど見ごろを迎えていました。プラタナスの並木が曇り空に似合って、まるでエコール・ド・パリの絵画を見ているみたい。

2015111904

2015111905

全体的にシックな彩りの秋の公園の中で、ここだけ目の覚めるような華やさがあって引き寄せられました。春バラに比べて花数は少ないものの、存在感はさすがです。この風格は、やはりお花の女王だなーと実感しました。

2015111906 2015111907 2015111908

左から、ピンク フレンチレース、モリニュー、エーデルワイス。今咲いたばかりといった初々しさがあって、ため息がこぼれるほどに美しい。

2015111909

愛らしいピンクのバラ。”ゾンマービント”というドイツ名はロマンティックに響きませんが^^; sommerwindというとなんとなく甘い記憶を感じさせます。

2015111910

バニラボニカというフランス産のバラ。青みがかった葉の色も美しい。

2015111912_2

この日は、大温室で洋ラン展が、日本庭園で菊花壇展が開かれていたようですが、そろそろ閉園時間がせまっていたので、ゆっくり歩きながら新宿門へと向かいました。広大な公園の半分ほどしか歩けませんでしたが、そこここに秋を感じることができて、いい散策になりました。

2015111913

| | コメント (8) | トラックバック (0)

La libera (ラ リベラ)

先日、代々木に所用があって出かけた折に、駅からほど近い住宅街にあるイタリアンレストラン La libera (ラ リベラ)でお昼をいただきました。
wine La libera (ラ リベラ) HP

外観も、内装も、町の洋食屋さんといった飾らない雰囲気のお店ですが、お料理はリーズナブルながら本格的で、とてもおいしかったです。店内のいたるところに、イタリアの街角で見かけるようなチラシやポスター、新聞などが無造作に貼られ、イタリア愛にあふれていました。

こちらのお店では、シェフが自ら足を運んで仕入れた鎌倉野菜と佐島の海の幸を使ったイタリア郷土料理が楽しめます。私たちは、サラダとスープ、フォカッチャ、前菜盛り合わせ、パスタ、食後のコーヒーがつくランチのコースをいただきました。

2015111801

一見なんてことはないガーデンサラダですが、色とりどりの鎌倉野菜がしゃきしゃきとしておいしい。皮の黒いカブは初めて見ました。サツマイモを生でいただいたのも初めてです。

2015111802

カップに入ったたまねぎのポタージュは、素材のもつ自然の甘みとコクがしみじみとおいしかったです。自家製のフォカッチャは、じゃがいものペーストをつけていただきます。

2015111803

前菜の盛り合わせに感動しました。奥から時計回りに、佐島産カワハギのカルパッチョ、かぼちゃのブリュレにクスクスを添えて、ローストチキンのトマトソース、コッパ(豚のいろいろな部位をゼラチンで固めたもの)、パンチェッタ(生ベーコン)とイタリア風ポテトサラダ。

きのこのマリネとテリーヌ、真ん中にあるのは栗と牛タン。水菜は、サニーレタスのように穂先が紫色なのが珍しかったです。どれもワインが欲しくなるお料理でした。前菜だけで大満足で、すっかりおなかがいっぱいになりました。

2015111805

本日のパスタは3種類の中から選びます。これは佐島のお魚2種(何かは忘れた)とブロッコリーのアーリオオーリオ。

2015111804

私は鎌倉野菜のカブなどを使ったボロネーゼでしたが、野菜がなくなり代わりに栗を使ったボロネーゼになりました。こっくりとした秋らしいお味です。このあと、食後のコーヒーを楽しみました。

カジュアルなお店ながら、お会計のあとはスタッフがわざわざお店の外まで見送ってくださり、感動しました。HPを見ると恵比寿にもお店があるようなので、機会があればまた足を運んでみたいです。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

昇仙峡の紅葉

今月初め、山梨県の昇仙峡に紅葉狩りに行ってきました。
maple 昇仙峡観光協会HP

昇仙峡は、甲府盆地の北側に位置する奇岩で知られる峡谷で、秋は紅葉の名所としても知られています。都内からは車で約2時間半。昇仙峡入口の駐車場に車を停めて、長潭橋(ながとろばし)から仙娥滝(せんがだき)まで、渓谷沿いの遊歩道を散策しました。

2015111501_3

紅葉は山全体ではまだ色づき始めといったところでしたが、清々しい渓流の音を聴きながら、険しい岩肌やカラフルな雑木林の風景を楽しみました。行きはゆるやかな上り道ですが、道は舗装されていて歩きやすかったです。

2015111503_4 2015111502_2

遊歩道の途中まで、観光馬車で上ることもできます。素朴な自然にマッチして旅情をかきたてる光景でしたが、黙々と歩みを進めるお馬さんを見ると、健気な姿に胸がしめつけられます。

2015111504

川には大きな花崗岩がごろごろしていて、オットセイ岩、猿岩など、それぞれ形を見立てたユニークな名前がついています。ところどころ小さな吊り橋がかかっていて、橋から見る渓流の風景もまた、味わい深いものでした。

2015111507

遊歩道の半ばをすぎて、昇仙峡のみどころのひとつ、”夢の松島”に着きました。周囲の森からぐぐっとそびえ立つ花崗岩の姿を、陸の松島に見立てているのでしょうか。雨上がりの真っ青な空に映え、圧倒される風景でした。

左のすらりと伸びた岩は、最高峰の”覚円峰”。高さ180mある巨岩です。昔、覚円というお坊さんがこの峰の上で修行したという言い伝えがあるそうです。向かいにある右の岩は、遊歩道から見るシルエットが人の横顔のように見えました。

2015111506_2 2015111508

覚円峰の近くにも駐車場があり、ここからが奇岩の続く昇仙峡観光のハイライトとなっています。人もだんだん増えてきました。

2015111509 2015111510

奇岩の風景が続きます。ここは”石門”。岩でできたトンネルです。離れて見ると、下の岩が上の岩を支えているように見えますが、よく見ると、岩と岩の間にはわずかな隙間がありました。

2015111512 2015111511

トレイルの終点は仙娥滝(せんがだき)です。前日の雨で水は滔々と流れ、虹がかかってきらきらと輝いていました。岩肌は青く荘厳で、神秘的な眺めでした。滝の横から階段を上ったところは観光バスの発着所になっていて、お土産屋さんが立ち並び大賑わい。私たちはお蕎麦屋さんで山梨名物ほうとうをいただきました。

2015111513

ほうとうを食べたのは初めてです。味噌仕立てのおつゆに平たい太めのうどん。かぼちゃ、さといも、きのこ、山菜、油揚げなど、具だくさんの素朴なお味で、体がぽかぽかと温まりました。

2015111505

帰りは元来た遊歩道をそのまま歩いてもどりましたが、山は日が陰るのが早いと実感しました。行きはあちこち寄り道しながら歩いたので3時間くらいかかりましたが、帰りは下り道ということもあって1時間くらいで入口の長潭橋(ながとろばし)に着きました。

川上の奇岩のエリアにくらべると、川下の雑木林のあたりは人もあまりいなくて、ゆったり紅葉を満喫することができました。

| | コメント (6) | トラックバック (0)

サヨナラの代わりに &ガーデンプレイスのクリスマス

ヒラリー・スワンクと「オペラ座の怪人」のエミー・ロッサムが共演するヒューマンドラマ、「サヨナラの代わりに」(You're Not You)を見ました。

Youre_not_you_9

夫や友人に恵まれ、幸せな生活を送っていたケイト(ヒラリー・スワンク)は難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断され、1年半後に車椅子生活を余儀なくされます。夫が雇ったベテランの介護士の代わりにケイトが採用したのは、介護経験のない学生アルバイトのベック(エミー・ロッサム)。

最初は性格がルーズで家事も介護もまったくできないベックに手を焼くケイトでしたが、本音でぶつかってくるベックにケイトも心を許し、いつしか2人の間に友情が芽生え...。

Youre_not_you_1

予告を見ただけで涙ぐんでしまい、楽しみにしていた作品。「最強のふたり」の女性版という感じかな?と想像していたのですが...うーん、決して悪くはないのですが、すべての描写において薄味で、私には少々物足りなく感じられました。

そもそもケイトは、”話を聞いてくれそうだから”という理由でベックを採用するのですが、私にはとてもそうは思えなかったのです。むしろ、まったく体の自由が効かない身で、介護経験のない(しかも粗暴に見える)彼女と日中ふたりきりでいることに恐怖を感じてしまいそう。

ケイトの”お友だち”の描き方はあまりにステレオタイプだし、ケイトやベックを取り巻く男性たちの描き方も単純で画一的。そしてこれまでの人生をいっしょに歩んできた夫や友人や両親が、知り合ったばかりのベックに取って代わられてしまうというのも、なんだか不自然に感じました。

とはいえ、ベックを見ているうちに、彼女の人間らしい魅力も見えてきます。ほんとうは歌手になりたいのに、ライブでは極度に緊張してしまい、いつも失敗してしまうこと。そして歌を作ろうとしても、最後まで完成できず、どれも中途半端に終わってしまいます。

私生活もいいかげんでメチャクチャなベックですが、ケイトが彼女を信用してくれたことはどれほど心の支えとなったことでしょう。この映画は、ケイトの闘病記というより、ベックの成長物語なのだと思いました。

2015111501

映画を見た恵比寿ガーデンプレイスでは、毎年恒例のバカラのシャンデリアが飾られていました。(2016年1月11日まで)

2015111502

エントランスには大きなクリスマスツリーがお出迎え。

2015111503_2

ツリーのそばには、小さなクリスマスマーケットも。(12月25日まで) アドヴェントはまだですが、ひと足早いクリスマス気分を楽しみました。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

アクトレス ~女たちの舞台~

ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツが競演するヒューマンドラマ、「アクトレス ~女たちの舞台~」(Sils Maria / Clouds of Sils Maria)を見ました。

Sils_maria_2

大女優のマリア(ジュリエット・ビノシュ)は、新進気鋭の演出家から、彼女の出世作となった舞台「マローヤの蛇」のリメイク版に出演してほしいと依頼されます。彼女はかつてその作品で若きシグリットを演じてスターになりましたが、今度はシグリットに翻弄されて自殺する年長者ヘレナを演じて欲しいというのです。

シグリットを演じるのは、ハリウッドで人気急上昇中の新進女優ジョアン(クロエ・グレース・モレッツ)。このオファーを受けるべきかためらうマリアに、腹心のマネージャー ヴァレンティン(クリステン・スチュワート)は是非出るべきだと背中を押しますが...。

Sils_maria_3

フランスの名優ジュリエット・ビノシュに、ハリウッドで今勢いに乗っている人気若手女優のクリステン・スチュワートとクロエちゃん。一見バラバラに思える組合せですが、三者三様の魅力が楽しめました。

この映画では、円熟した大女優が世代交代の現実に直面して葛藤し、その壁を乗り越えようとするまでが描かれています。女優に限らず、誰しも人生の折り返し地点を意識する瞬間ってあるもの。これは見る人によってさまざまな解釈のできる、考えさせられる作品だと思いました。

Sils_maria_6

最初は、マリアが年長者の役を依頼されてショックを受ける、という設定に違和感を覚えたのです。年齢を重ねてますます魅力的になっている女優さんはたくさんいますし、彼女にはこれまで培ってきたキャリアという自信があるはずだと思ったから。

でも、マリアにとって「マローヤの蛇」は、自分が一番輝いていた頃に演じた、特別に思い入れのある作品だったのでしょう。彼女がシグリットを演じた時、ヘレンに対して哀れみを感じていたので、今度は自分がその役を演じるということが、どうしても受け入れられないのだと思いました。

Sils_maria_5

ジョアンは奔放な言動でゴシップ誌をにぎわしている若手女優。ヴァレンティンはそんなジョアンを高く評価し、人気だけでなく実力も兼ね備えている女優だと力説しますが、マリアにとっては理解を超えるぶっ飛んだ存在で、心中は複雑だったに違いありません。

映画は、マリアとヴァレンティン、そしてマリアとジョアンの関係を、「マローヤの蛇」という劇になぞらえつつ、幾重にもからみ合う入れ子のような構造になっていて、それが物語を味わい深いものにしていました。

ジョアンが出演しているのがいかにもチープなSF映画だったことに、フランスがアメリカを皮肉っているのをチクリと感じました。そのアメリカもかつて日本の経済成長に脅威を抱いた時代があり、今や日本も、新興国の隆盛に心穏やかではないものを感じている...

諸行無常のこの世界で、国と国との関係におきかえてみると、世代交代を受け入れることの難しさにもしっくりくるものを感じました。

Sils_maria_7

Sils_maria_9

舞台となったシルス・マリアは、スイス南東部、サン・モリッツから車で30分ほどのところにある山岳リゾート。マローヤの蛇はこの地で見られる気象現象で、谷間をうねりながら流れる雲は、抗うことのできない運命のようにも感じられ、美しくも神秘的な怖さがありました。

| | コメント (6) | トラックバック (5)

アメリカン・ドリーマー 理想の代償

オスカー・アイザック、ジェシカ・チャステインが共演する社会派テイストのヒューマンドラマ、「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」(A Most Violent Year)を見ました。

A_most_violent_year_3

1981年、犯罪が連日ニュースをにぎわすニューヨーク。生き馬の目を抜くオイル業界で、清廉潔白なビジネスを理念に会社を立ち上げたアベル(オスカー・アイザック)と妻アナ(ジェシカ・チャステイン)は順風満帆、さらなる事業拡大のために土地の購入を決め、頭金を支払います。

しかしその矢先に、度重なるオイルの強奪、家族への脅迫、脱税容疑、銀行からの融資取消、と立て続けにトラブルに見舞われます。支払期限の30日後までに残りのお金を用意するため、アベルはトラブル解決に奔走しますが...。

A_most_violent_year_1

(ゴッドファーザーのワンシーンみたい)

1981年のニューヨークの治安は最悪で、史上もっとも犯罪が多い年だったそうです。ラジオのニュースで連日のように報道される銃撃事件や、落書きだらけの地下鉄の車両から、当時の様子が伝わってきました。

ヒスパニック系移民のアベルは、努力家であり野心家。成功を夢見てオイルカンパニーを立ち上げ、清廉潔白な仕事ぶりで順調に会社を大きくしてきましたが、新参者の彼の躍進を、同業者たちは決しておもしろく思ってはいなかったようです。

彼の会社のトラックドライバーが暴漢に襲われ、オイルを強奪されるという事件が何度も起きていました。社内からはドライバーたちに銃を持たせるべきだという声もあがりますが、アベルは決して首を縦にふりません。一方、会社の急成長に疑念をもつ検察からは、脱税の査察が入ります。

会社の経理を一手に引き受け、アベルを支えてきた妻アナは、実はブルックリンのギャングの娘。周囲からの数々の妨害に頭を悩ますアベルに、アナは”父や兄の力を借りることもできる”と控えめに提案しますが、アベルは一貫してそれを拒むのでした。

A_most_violent_year_7

当時のニューヨークで成功するためには、ダークサイドの力を借りた方がずっとスムーズに事が運ぶ、ということがあったかもしれません。でもアベルがもしそこに解決を求めたら、これまでずっと信条としてきたクリーンなビジネスも、よき市民として生きてきた努力も失われてしまいます。

支払期日が迫り、追い詰められたアベルはどうやってこの難局を乗り切るか...最後にアベルは思いがけない切り札に救われますが、それは彼にとってほろ苦い味のするものでした。ラストの2人に対岸のマンハッタンは、安堵の灯に見えただろうなと想像しました。

A_most_violent_year_14

陰影を生かしたカメラワークはゴッドファーザーのようで、苦悩するオスカー・アイザックがアル・パチーノに見えてきました。静かな緊張感に手に汗握り、ハードボイルドな味わいにしびれました。J・C・チャンダーという監督さんは初めて知りましたが、こういう骨太の社会派テイストはとっても私好み。

ジェシカ・チャステインはいつも注目している大好きな女優さんですが、オスカー・アイザックとはジュリアード時代の友人だそうです。今回は派手めのメイクに80年代のゴージャスなファッションで、ただ者ではない雰囲気をまとったアナを迫力満点に演じていました。

オイルカンパニーのトラックも懐かしかったです。ニューヨークはオイル暖房なので、寒くなると各家のタンクにオイルを補充してまわるトラックが忙しく道を行き来し、冬の風物詩になっていたことを思い出しました。

| | コメント (2) | トラックバック (3)

ピエロがお前を嘲笑う

映画の感想が滞っていますが、思い出しながら少しずつアップしていきます。まずは、内気な天才ハッカーがはからずも危険な事件に巻き込まれていくドイツ発のサスペンス映画、「ピエロがお前を嘲笑う」(Who Am I - Kein System ist sicher / WhoAmI)から。

Who_am_i_6

数々のハッキング事件で世間を騒がせ、ついに殺人事件で指名手配された天才ハッカー ベンヤミン(トム・シリング)が警察に出頭してきます。彼は、自ら結成したハッカー集団CLAYが盗んだ情報によって仲間が消され、次は自分が命を狙われていると訴えますが...。

Who_am_i_3

昨年ドイツで大ヒットし、ハリウッドでのリメイクが決定している話題作です。監督は本作が2作目の長編映画となる新鋭バラン・ボー・オダー。ドイツ発のサイバーサスペンスというのに惹かれ、期待して見てみました。

最後に衝撃を受けるほどの大どんでん返しのある映画をマインドファック・ムービーというそうです。この手の作品のセオリーとして、黒幕はなんとなく予測がつくなーと思いながら見ていましたが、結末までの二転三転する展開に、惑わされつつ楽しめました。

Who_am_i_2_2

邦題は、ベンヤミンたちが作ったハッカー組織CLAY(=Clowns Laugh At You)から来ています。CLAYのメンバーは不気味なピエロのマスクをかぶっていて、まるで実在するハッカー組織アノニマスみたい。

とはいえ彼らに政治的、思想的な信条はなく、大金をいただこうという企みもない。ただ堅牢なシステムを破ることで、自分の力を見せつけたい、というのは気持ちとしてはわからなくもないのですが、やっていることはまるで子どものいたずらなのです。

おもしろいと思ったのは、ドイツ語と英語の使い分け。犯行声明もそうでしたが、ドイツの若者は、”自分ではない誰か”を演出する時に英語を使うのかな?と想像しました。

Who_am_i_5

サイバースペースでのやり取りを、地下鉄の車中を使って実写?に見立てているのもユニークな演出でした。映像を見るとネット界のカリスマMRXは男性なのですが、実際には(目に見えないので)年齢も性別もわからないわけで、実は女性かも?と深読みしながら見ていました。

Who_am_i_4

ベンヤミンの初恋の女性マリを演じるのは、「4分間のピアニスト」のハンナー・ヘルツシュプルンク。捜査官役をスサンネ・ビア監督作品でおなじみのデンマークの女優、トリーヌ・ディルホムが演じていたのが思いがけないサプライズでした。

| | コメント (11) | トラックバック (5)

« 2015年10月 | トップページ | 2015年12月 »