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2016年1月

初春花形歌舞伎 車引/弁天娘女男白浪/七つ面

お正月気分を味わいたくて、久しぶりに歌舞伎を見に行きました。場所は新橋演舞場。新年にふさわしく、若手の役者さんたちによる晴れやかな舞台を楽しみました。
fuji 初春花形歌舞伎 新橋演舞場

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菅原伝授手習鑑 車引 (すがわらでんじゅてならいかがみ くるまびき)

三つ子の兄弟に生まれるも、今はそれぞれ別の要人の舎人として奉公している梅王丸(市川右近)、桜丸(市川春猿)、松王丸(中村獅童)の3人。梅王丸と桜丸が、松王丸が仕える敵方の藤原時平(片岡市蔵)を襲おうとしたことで、3人の間で兄弟げんかがはじまって...。

隈取のお化粧も華やかに、歌舞伎らしい様式美あふれる作品で幕開けです。記録をたどると、3年前のお正月に違う役者さんの組合せで見ています。

ストーリーがあるような、ないようなお話ですが、凛々しい梅王丸と、優しいお顔立ちの桜丸、強そうな松王丸、最後に大悪役の時平と、演じる役者さんのお化粧や立ち居振る舞い、個性の違いを楽しみました。

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弁天娘女男白浪 白浪五人男 (べんてんむすめめおのしらなみ)
雪の下浜松屋の場~滑川土橋の場

呉服屋 浜松屋に、美しい武家の娘と供侍が婚礼の品を選びにやってきますが、実はこの娘は女装した弁天小僧(市川海老蔵)、供侍は南郷力丸(中村獅童)。二人は万引き騒ぎを起こして浜松屋をゆすり、まんまと百両を手に入れようとしますが、居合わせた侍に、娘が男だと見破られます。

しかしこの侍こそ盗賊の首領、日本駄右衛門(市川右近)。弁天小僧、南郷力丸と共謀し、浜松屋を油断させて金をごっそりいただこうという企みでしたが...。

河竹黙阿弥の名作、盗賊団 白浪五人男のお話です。今年は河竹黙阿弥生誕200年の記念の年だそうで、その幕開けにふさわしい作品でした。歌舞伎座の杮落しの時にも見ていますが、詐欺の手口は現代にも通じるものがあって、何度見てもおもしろい。

海老蔵さんは女性にしては体格が立派ですが、弁天小僧が女装しているという設定なので、これもまたありかな?と思いました。獅童さんとのコンビも息がぴったり。正体がばれてからの弁天は刺青の入った体をはだけ、悪人ならではの艶めかしさがあって惚れぼれしました。

幕が変わって大詰めでは、舞台いっぱいに設えた大屋根の上で、弁天小僧と捕り手の大立ち回り。アクロバティックでリズミカルな動きが楽しい。観念した弁天が切腹し、そのまま屋根が向うにぐるりと回転して倒れる、がんどう返しも大迫力でした。

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歌舞伎十八番の内 七つ面 (ななつめん)

二世市川團十郎が1740年に初演し、久しく上演が途絶えていましたが、2009年正月に新橋演舞場で海老蔵さんによって復活上演され、今回7年ぶりの上演とのことです。

舞台にはずらりとお面が飾られてあり、海老蔵さんが華麗な手さばきで面を次々と取り替えては、それぞれの人物を踊り分けます。まさに七変化! 華やかで美しく、うっとりする舞踏でした。

幕切れでは、海老蔵さんが新年の挨拶とともに”にらみ”の披露。これは市川宗家、現在では海老蔵さんだけが許されている、特別なご祝儀なのだそうです。ぐぐっとパワーをいただいて、今年もよい年となりそうです。

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新宿風景展 @中村屋サロン美術館

映画を見た後に、新宿中村屋ビル3階にある中村屋サロン美術館で、「新宿風景展 江戸から昭和まで」(~3月13日まで)を見てきました。
art 浮世絵・水彩画に見る 新宿風景展 江戸から昭和まで

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中村屋サロン美術館は、(カレーでおなじみの)新宿中村屋が2014年10月に新ビルに建替えた際に開設した小さな美術館です。創業者ご夫妻が支援してきた芸術家たちの作品や、地域に関する企画展を中心に開催しているとのことで、是非足を運んでみたいと思っていました。

今回は、新宿区立新宿歴史博物館との共同企画による新宿風景展。江戸から昭和にかけての新宿の風景の移り変わりとともに、文化、風俗、街の発展の歴史に触れ、興味深く見ました。新宿の街を描き続けた地元の画家、堀潔さんの優しいタッチの水彩画に心が洗われました。

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堀潔 「新宿駅」 (1922)

企画展の中心となるのは、新宿歴史博物館が所蔵する堀潔さんの水彩画46点。堀潔(1912-1989)は新宿区在住の水彩画家で、生業のかたわら明治~大正~昭和の東京の風景を描き続け、その作品は歴史的記録資料としても高い評価を得ているそうです。

今の新宿の風景を思い浮かべつつ、昔はこうだったんだ~と比較して見るのが楽しかったです。写真と併せて展示されている作品もありましたが、風景画の方がずっと温かみがあってすてきでした。人物はあまり描かれていませんが、当時の人々の息遣いが伝わってくるようでした。

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堀潔 「新宿中村屋」 (1940)

中村屋さんが1909年に新宿に移転してきてからの、建物の変遷も写真で紹介されていました。私が知る頃は既にビルになっていましたが、その昔は趣のある木造建築で、伊勢丹や高野商店(フルーツパーラー)とともに新宿を代表する人気店だったそうです。

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堀潔 「日曜日・新宿ノッポビル群夕景(新宿中央公園より)」 (1980)

今の西新宿には昔は浄水場があったそうですが、その後、高度経済成長期に、京王プラザホテルを皮切りに次々と高層ビルが建てられるようになりました。私もその過程は子ども心になんとなく覚えています。ノッポビルという呼び名も懐かしいです。

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佐伯祐三 「下落合風景(テニス)」 (1926頃)

新宿駅周辺のほか、下落合、神宮外苑、高田馬場、神楽坂など、新宿区内の風景を描いた作品もありました。

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(左)織田一磨 画集『新宿』より 「第二図 カフェー街」 (1930)
(右)織田一磨 画集『新宿』より 「第三図 むさしの館」 (1930)

新宿が今のように発展したのは、関東大震災がきっかけだったそうです。この地は地盤が固く、銀座や浅草に比べて被害が少なかったため、郊外の人口が急増して鉄道各社が乗り入れるようになり、都内有数の繁華街となりました。

デパート、劇場、映画館がオープンし、カフェー(女給さんのいる喫茶店)が軒を連ねるようになります。今もレトロなミニシアターとしてがんばっている武蔵野館は、関東大震災の頃からあったと知り、驚きました。当時は洋画のロードショー館として人気があったそうです。

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(左)川瀬巴水 「冬の月(外山ヶ原)」(1931)
(右)歌川広重 『名所江戸百景』より 「四ツ谷内藤新宿」(江戸時代)

ところで新宿の由来ですが...江戸時代、甲州街道の第一宿場である高井戸が日本橋から遠かったので、その間の内藤家の屋敷に新しい宿場ができて内藤新宿とよばれ、それが後に新宿となったそうです。

今の新宿三丁目付近は、甲州街道と青梅街道の分岐にあたり、新宿追分とよばれていました。そういえばその頃の名残か、今も”追分だんご”がありますね。広重の作品は、宿場町だった頃の新宿を描いたもので、馬のおしりをアップにした大胆な構図が楽しいです。

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ブリッジ・オブ・スパイ

スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演、コーエン兄弟脚本の、米ソ冷戦時代を舞台にした実話に基づく歴史ドラマ、「ブリッジ・オブ・スパイ」(Bridge of Spies)を見ました。
libra ブリッジ・オブ・スパイ 公式HP

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1957年、米ソ冷戦下のニューヨーク。ルドルフ・アベル(マーク・ライランス)という男がソ連のスパイとして逮捕され、保険が専門の弁護士ジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)が弁護を引き受けることに。ドノヴァンは全国民から非難を浴びますが、弁護士としての信念を貫き、アベルは死刑を免れます。

そして1960年。ソ連を偵察飛行中の米U‐2機が撃墜され、米軍パイロットのフランシス・ゲイリー・パワーズ(オースティン・ストウェル)が捕えられます。米ソ両国はアベルとパワーズの交換を画策し、交渉役に任命されたドノヴァンは、東西の緊張高まるベルリンへと飛びますが...。

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スピルバーグ×トム・ハンクス×コーエン兄弟という強力タッグに楽しみにしていましたが、期待通りにおもしろかった! こういう作品、大好きです。ドラマは粛々と展開しますが、手に汗握り、引き込まれました。シリアスな題材ながら、スピルバーグ監督らしい温かさとユーモアが随所で感じられるところもよかった。

アベルは憎き敵国のスパイであり、もともとドノヴァンは形だけ弁護士として指名されたにすぎません。裁判が始まる前から、アベルの死刑はほぼ確実だったのです。しかしドノヴァンは、憲法に照らして、米国があるべき姿を世界に示すことが、国家を守る最大の武器になると主張し、アベルの命を救うのでした。

そしてドノヴァンのこの主張は、裁判を有利に戦うためのこの場限りの理想論ではなく、実際に5年後、国家の信用を示し、国民を救うための最強の切り札として、外交の舞台で役立つこととなるのです。

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後半のスパイ交換交渉は、結果がわかっていてもはらはらしました。ソ連で捕まった米軍パイロットに加えて、東ドイツで誤って捕らえられたアメリカ人留学生まで現れ、アメリカ、ソ連、東ドイツのそれぞれの思惑と利害と面子が交錯する、なんとも難しい交渉となるのです。

交渉の舞台は、今まさに壁が築かれ、東西に分断されたばかりのベルリン。壁を越えようとすれば容赦なく撃ち殺される、殺伐としたその様子を見ただけで、恐怖と緊張に身がすくみます。

しかし、自分の命の保証さえわからないようなこの厳しい場面でも、ドノヴァンは、囚われたアベル、パワーズ、留学生の3人の命の重さに優先度をつけることなく、全員がしかるべき場所にもどれるよう、一歩も引かない粘り強い交渉を続けるのでした。

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アベルのその後が心配でしかたがなかったので、ラストの後日譚には心底ほっとしました。ドノヴァンはこのあと、キューバとの交渉でも手腕を発揮し、人質事件を解決しているそうで、冷戦時代、米ソ両国の均衡が彼によって守られていたといっても過言ではないかもしれません。

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スター・ウォーズ/フォースの覚醒

「スター・ウォーズ」シリーズ第7作、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(Star Wars: The Force Awakens)を見ました。監督は、「スター・トレック」新シリーズのJ・J・エイブラムス。
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今年最初に見た映画です。暖冬のお正月から一転、寒い日が続いて風邪をひいてしまったので、元気になる作品を見に行きました。時間の関係で2Dになりましたが、ストーリーが旧シリーズとつながる内容だったので、レトロな質感の映像がかえってよかったかな?と思いました。

私は「スター・ウォーズ」シリーズにはあまり思い入れがなくて、過去作品もエピソード4と1しか見ていないので、最初はSW用語や世界観になかなかなじめなくて、どうなることかと思いましたが、結果としてはまあまあ楽しめました。

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エピソード6から30年ということで、旧メンバーのハン・ソロ(ハリソン・フォード)やレイア姫(キャリー・フィッシャー)がちょうどいい感じに年を重ねていたのもリアリティがありましたし、フレッシュな新メンバーたちとも違和感なく調和していたのがよかった。

新ヒロインのレイ(デイジー・リドリー)と、彼女を支えるフィン(ジョン・ボイエガ)のさわやかコンビも好印象。レイとフィンが力を合わせて戦っていく姿には、新しい時代の幕開けを感じて、なんだかとてもうれしくなりました。

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それと私は、親目線でどうしてもカイロ・レン(アダム・ドライバー)が気になってしまって...息子をISにとられた母親の気持ちになって、それまではわりと淡々と見ていたのですが、ハン・ソロと対峙する場面では不覚にもほろりと涙してしまいました。

宇宙を舞台にした壮大なファンタジーより、迫力あるアクションやバトルより、こういう人間ドラマに弱いです。

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ところで、アダム・ドライバーって知らないな...とフィルモグラフィを見たら、「J・エドガー」「リンカーン」「フランシス・ハ」「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」「奇跡の2000マイル」と、全部見ていることが判明。(しかもどの作品も好き)

記憶をたどると、あ~あの人だ...と思い出しましたが、これだけ特徴のあるお顔立ちなのにすぐにわからないとは、われながらあきれました。でもそれだけ多彩な役をこなせる俳優さんということですね。

演技派のオスカー・アイザックが新メンバーに加わっていたのもうれしいサプライズ。今後はドラマの部分も期待できそうです。新3部作の第1作ということで、レイの出自をはじめ、明らかにされない部分が多くてもやもやが残りましたが、次回の楽しみにしたいと思います。

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TOHO六本木に展示されていたストーム・トローパ―とBB-8。映画ではストーム・トローパ―はロボットだと思っていたので、中から人が出てきてびっくりしました。そしてBB-8はかわいかった! シンプルな形なのに、これだけいろいろな感情表現ができるなんて感激しました。

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新春の東京スカイツリー

お正月に東京スカイツリーに上ってきました。私は前に上ったことがありますが、家族は上ったことがなかったので...この日は雲ひとつないいいお天気で、お正月なので空気が澄んで遠くまでよく見えるのでは?という期待もありました。
fuji 東京スカイツリー HP

2016011301 ツリーの真下からパチリ

お昼頃に着いてまず受付に行くと、この日は来場者が多くてすぐには上れず、15時30分に入場する整理券をいただきました。時間まで、隣接するショッピングセンターのソラマチでお昼を食べたり、お店をのぞいたりしてすごしました。

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家族の希望で、お昼はハワイアンハンバーガーのクア・アイナへ。私はB.L.T.&アボカドサンドウィッチをいただきました。グレインの入ったカリッとトーストしたパン、ボリュームたっぷりのアメリカンなサンドウィッチはとってもおいしかったです。

午後になってからソラマチはますますにぎわってきました。ツリーのエントランス前の広場には期間限定のアイススケートリンクができていました。受付で荷物チェックを済ましたら、高速エレベーターに乗って地上350mの空の世界へと向かいます。

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この日はよく晴れていたのですが、午後になってガスが出てきたようで、遠くが霞んで墨絵のようでした。これは南西方向で、遠くに新宿の高層ビル群が見えます。

左に離れて1つある三角屋根が代々木のドコモビル、中ほどのツインのビルは都庁舎、右手前の白いお皿のようなのは東京ドーム。空が澄んでいたら、はるかむこうに富士山が見えるはずです。

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お膝元の浅草はよく見えました。隅田川と駒形橋、右手前にはアサヒビール本社ビルと炎のオブジェ。

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同じく浅草です。川に架かっているのは東武スカイツリーライン。隅田川には水上バスが2隻、左側のは松本零士さんデザインのヒミコです。隅田川の向うには緑に囲まれた浅草寺、五重塔もよく見えます。

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西方向です。手前に見えるビルは浅草ビューホテル。その向こうに広がる広大な緑は上野恩賜公園。はるか向こうに見える一番高いビルは池袋のサンシャインビル。

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北西方向です。目立つ建物はありませんが、薄紅色に暮れなずむ地平線と、蛇行してゆるゆると流れる隅田川と荒川の風景がうっとりとする美しさでした。

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小さなガラス床から下をのぞいてパチリ。ツリーの足元と北十間川が見えます。

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高速エレベーターは4基あり、江戸の伝統工芸を使った春夏秋冬の風景が描かれています。私が乗ったのは、上りは江戸切子で隅田川の花火を描いた”夏”で、下りは江戸押絵でスカイツリーと都鳥を描いた”冬”でした。江戸押絵といえば華やかな羽子板を思い出しますが、シルバーもシックですてきでした。

前回の記事はこちら。
pencil スカイツリーからの眺め (2013/07)

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完全なるチェックメイト &関連2作品

トビー・マグワイア主演、伝説の天才チェスプレイヤー ボビー・フィッシャーの半生を描いた伝記ドラマ、「完全なるチェックメイト」(Pawn Sacrifice)を見ました。監督は、「ブラッド・ダイヤモンド」「ディファイアンス」のエドワード・ズウィック。
crown 完全なるチェックメイト 公式サイト

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幼少期にチェスの虜となり、15歳の時に最年少グランドマスターとなったボビー・フィッシャー(トビー・マグワイア)。そして1972年、アイスランドで開催される世界王者決定戦に出場し、世界チャンピオンの座にいたソ連のボリス・スパスキー(リーヴ・シュレイバー)に挑戦することとなります。

時は米ソ冷戦下、この対局は両国が国の威信にかけて戦う代理戦争の様相を帯びてきます。世界が見守る世紀の決戦は白熱し、2人の神経は研ぎ澄まされて、極限状態にまで追い詰められていきますが...。

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昨年最後に見た映画です。チェスは知らないのですが、頭脳ゲームの話は好きで、ボビー・フィッシャーに興味があったので、事前に関連映画を見たりして公開を楽しみにしていました。

少年時代におもちゃのチェスに出会ってその虜となり、文字通り寝食を忘れるほどにのめり込んでいったボビー・フィッシャー。チェスに関しては天才ですが、それ以外はまるで未熟で、社会性に欠け、神経質、傲慢、手のつけられないわがままのまま、成長してしまったようです。

自分の要求が通らなければ、平気で約束をすっぽかすのは当たり前で、スパスキーとの対戦が決まってからも難癖をつけては逃げ回るので、まわりはなだめすかして飛行機に乗せ、なんとか会場に送り込むことができたのでした。

対戦はスパスキーの勝利に始まり、第2戦は不戦敗。このままボビーが負けるかと思われましたが...スパスキーは当然、ボビーの手を研究し尽くして試合に臨んだはずですが、ボビーはそれを逆手にとって、これまで全く使ったことのない手を使い、最初の一手からスパスキーを錯乱させ、最終的に勝利を収めるのです。

チェスの試合はスポーツのような華やかさはありませんが、2人の心理的駆け引きや、現場のびりびりとした緊張感が伝わってきて引き込まれました。いつも神経質なボビーのみならず、冷静沈着なスパスキーまでもが、追い詰められるにつれ精神の変調を来していく様子は圧巻でした。

ドキュメンタリー映画やWikipediaで知る、ボビー・フィッシャーの家族背景や波乱に富んだ人生も、なかなか興味深いものでした。チェスの虜となり、精神を蝕まれたフィッシャーですが、心から好きといえるものに出会い、天賦の才能を発揮できた彼は幸せだったのではないかな...と思いました。

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ボビー・フィッシャー 世界と闘った男 (Bobby Fischer Against the World)

2011年のドキュメンタリー映画。貴重な記録映像や、名代のチェスプレイヤーたちが語るボビー・フィッシャーのエピソードなど、とても興味深かったです。特に印象に残ったのは、雑誌LIFEの写真家ハリー・ベンソンが語るフィッシャーの知られざる横顔です。

エキセントリックに見られていたフィッシャーですが、ベンソン氏には心を開いていたようで、彼に見せるリラックスした表情が魅力的でした。写真集も出ています。
camera Harry Benson "Bobby Fischer" (Amazon site)

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ボビー・フィッシャーを探して (Searching for Bobby Fischer)

1993年の実話に基づくヒューマンドラマ。ボビー・フィッシャーではなく、フィッシャーに憧れる天才少年チェスプレイヤー ジョシュ・ウェイツキンくんを描いた作品ですが、チェスの奥深さと厳しさ、チェスの虜になった少年と両親の葛藤、ニューヨークのチェスカルチャーなどにも触れられ、ドラマとしても引き込まれました。

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杉原千畝 スギハラチウネ

唐沢寿明さん主演の歴史ドラマ、「杉原千畝 スギハラチウネ」を見ました。第2次世界大戦時、リトアニア領事として6000人のユダヤ難民にビザを発給して命を救い、日本のシンドラーとよばれた杉原千畝の半生を描きます。
memo 杉原千畝 スギハラチウネ 公式HP

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1934年。満州国外交部に勤務する杉原千畝(唐沢寿明)は、ソ連との北満州鉄道譲渡の交渉を有利に成立させるも、ソ連から入国拒否を言い渡され、リトアニア・カナウスの日本領事館への赴任を命じられます。1939年、家族を伴い着任した杉原は、ヨーロッパでの諜報活動に努め、日本に発信し続けます。

やがてナチスドイツがポーランドに侵攻し、第2次世界大戦が勃発。ナチスの迫害を逃れて通過ビザを求めるユダヤ難民が連日カナウスの日本領事館に大挙する中、杉原は日本政府の了承なしに、独断で通過ビザを発給することを決意します...。

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先月、久しぶりに邦画を見に行きました。

杉原千畝さんがクローズアップされるようになったのは、かれこれ20年ほど前でしょうか。杉原さんが命のビザを発給し、何千人ものユダヤ人を救った、ということは知っていましたが、彼がインテリジェント・オフィサー(諜報外交官)という顔を持っていたことを、この映画を見て初めて知りました。

映画は、ユダヤ人を救ったことだけでなく、諜報活動もふくめて、”杉原千畝”という人物を浮かび上がらせているので、スピルバーグ監督の「シンドラーのリスト」と比べると、だいぶあっさりとした印象がありますが、イントロダクションとしてはよくまとまっていて、興味深く見れました。

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序盤にスパイ映画さながらのアクションシーンがありましたが、5ヵ国語を使いこなし、情報収集力に長けていた杉原氏は、優秀な諜報外交官で、ソ連からも恐れられる存在だったそうです。

ドイツが不可侵条約を破ってソ連に侵攻することをいち早く見抜き、上層部に進言するも受け入れられず、日本はドイツと同盟を組み、第2次世界大戦に参戦します。その頃、リトアニアの日本領事館の前には、ナチスの迫害を逃れ、日本の通過ビザを求めて、ユダヤ人が大挙していました。

どうして日本の通過ビザが必要なのか?と思ったら、彼らはまずソ連を鉄道で横断し、ウラジオストックから船で日本に渡り、そこから最終目的地となる国々へと亡命するというのでした。戦中の日本で、多くのユダヤ人を一時的に受け入れたということを初めて知り、驚きました。

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人道的な使命感に突き動かされ、ナチスの手が届くまで一刻の猶予なく、ユダヤ人たちにビザを発給し続けた杉原氏。書類を書く時間も惜しみ、途中からはハンコを作って、領事館のスタッフ総動員で対応したのでした。

杉原氏が日本の切手をあげてかわいがっていたユダヤ人の男の子は、逃げ遅れ強制収容所に入れられてしまいますが、戦争が終わって、日系アメリカ兵に助けられるという展開に、運命の不思議を思いました。この少年は映画用の役柄ではなく、実在する人物と知ってさらに驚きました。

また命からがらウラジオストックに着いたユダヤ人たちを、日本行きの船に乗せることを決断する、総領事代理の根井三郎さんの男気にも感動しました。彼は杉原氏とハルビン学院でともにロシア語を学んだ同窓生で、杉原氏の発行したビザを見て全てを理解したのだと思いました。

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唐沢寿明さんというと「白い巨塔」の財前教授が印象に残っていますが、ただの善人ではなく、状況を見てベストの決断ができる強さをもった杉原千畝を魅力的に演じていました。杉原千畝については関連書籍もたくさん出ているので、追って読んでいきたいと思います。

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My Favorite Movies & Books in 2015

2015年をふりかえって...昨年見た新作映画、旧作映画、読んだ本の中から、特に心に残った作品を書き留めておきます。

movie 新作映画 movie

アメリカン・スナイパー」や「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」など、心に響く作品にたくさん出会いましたが、マイナー上映ながら、これ好きだな~とうならされた3作品をピックアップしました。感想の詳細はリンク先をご参照ください。

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ジャッジ 裁かれる判事 (The Judge)

法廷サスペンスであり、父子の愛の物語。構成や物語の運びがみごとで、ロバート・ダウニー・Jr.とロバート・デュバル、2人のロバートの演技に魅せられました。現代版「エデンの東」ともいうべき、深々とした余韻が残る作品です。

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グッド・ライ~いちばん優しい嘘~ (The Good Lie)

シリア、リビア、ロヒンギャなど、難民問題が世界の課題となった昨年。この作品ではスーダン内戦と、アメリカに移住することになった難民の若者たちが、真摯に、愛情をもって描かれています。ロストボーイズを演じるのは元スーダン難民の若者たち。彼らを支えるリース・ウィザースプーンもとてもよかったです。

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アメリカン・ドリーマー 理想の代償 (A Most Violent Year)

派手さはないですが、「ゴッドファーザー」や「ギャング・オブ・ニューヨーク」に連なる移民の物語だと思いました。野心家の夫婦が生き残りをかけて決断した、善と悪の絶妙なさじ加減のリアリティ。オスカー・アイザックとジェシカ・チャステインの息がぴったりあった演技に魅せられました。

また、昨年注目した俳優さんとして、「グッド・ライ~」「わたしに会うまでの1600キロ」のリース・ウィザースプーン、これからの活躍を期待して「コードネーム U.N.C.L.E.」のアリシア・ヴィキャンデルを挙げておきます。

cd 旧作映画 cd

旧作映画はあまり記事にできませんでしたが、劇場で見逃した作品や、関連作品など幅広く見て、新たな出会いもありました。特に心に残った作品はこちら。

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少年と自転車 (Le gamin au vélo / The Kid with a Bike)

ベルギーのダルテンヌ兄弟監督による、育児放棄と少年犯罪を題材にした2011年のヒューマンドラマ。父親の愛を求め、拒否されることを認めまいとする少年の姿に、胸が締めつけられましたが、彼に里親として全面の愛を注ぐサマンサ(セシル・ドゥ・フランス)の存在に救われました。

サンドラの週末」がきっかけで、ダルテンヌ兄弟作品を少しずつ見ていますが、シビアな世界を見つめる静謐なまなざしに引き込まれます。あと、後日改めて記事にしたいと思っていますが、カナダの若き才能、グザヴィエ・ドラン監督に魅せられています。

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読んだ本は手帳にメモだけしていましたが、感想がほとんど書けなかったのが心残り。今年はいい作品に出会ったら、一言でも感想を書き残していきたいです。昨年一番衝撃を受けたのはこの作品。

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スベトラーナ・アレクシエービッチ 「チェルノブイリの祈り」

昨年ノーベル文学賞を受賞したウクライナの作家アレクシエービッチによる、チェルノブイリ原発事故被災者たちへのインタビュー集。冒頭の、最初に事故現場に駆けつけた消防士の妻の話から、もう打ちのめされました。これが過去の遠い国の話ではなく、今まさに私たちが直面している問題なのだという事実に心が震えます。

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全体的に硬めの作品ばかりのラインナップになってしまいましたがsweat01 明るい、軽いタッチの作品にも気に入ったものがたくさんあります。今年もたくさんの感動に出会えますように。

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伊豆で迎えるお正月 2016

あけましておめでとうございます

~ 今年もどうぞよろしくお願いします ~

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お正月は家族の集まりがあり、伊豆北川で新年を迎えました。ホテルは東の海に面していて、朝は部屋の窓から初日の出を見ることができました。この日の日の出時刻は6時52分。起きてお風呂に行ってから、部屋でほんのり色づく水平線を眺めてスタンバイしました。

空がすっかり明るくなり、水平線近くの薄雲が鮮やかなオレンジ色に染まると、いよいよ太陽が顔を出しました。ぐんぐんと力強く昇ってくる様子は、心臓の鼓動のようにも感じられ、パワーを与えられる神秘的なひと時でした。いい一年の幕開けとなりました。

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今年も大きなバンを借りての旅行となりました。話は前後しますが、行きは小田原から国道135号を南下し、熱海港から観光船に乗って初島に渡りました。

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船に乗り込みデッキに出ると、縁のところに行儀よく並んだカモメたちがかわいかったのでパチリ。観光客に慣れていて近づいても逃げません。船が動き出すとたくさんのカモメたちが後を追ってきて、いっしょに島まで移動することになりました。

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熱海から初島までは観光船で30分。ぐるりと歩いて一周できるほどの小さな島ですが、島内にはリゾートホテルや観光施設があるほか、200人ほどが暮らしていて、小中学校もありました。電気や水道は熱海から海底ケーブルとパイプで運ばれているそうです。

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坂道を上って小中学校の先に、菜の花が一面に咲いている場所がありました。桜の花芽も、すでにふくらみはじめています。ひと足早い春の風景に、心もふわふわと軽くなりました。

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(左)島内にはフェニックスやヤシの木が、またアロエがいたるところにあって、南国らしい風景でした。アロエは、オレンジ色の花がちょうど見頃でした。 (右)島の高台にある初島灯台にも上ってみました。資料館も併設されていて、レンズの模型などを見ることができました。

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灯台の上からの360度の眺めは爽快でした。この日は薄曇りでしたが大島を目の前に伊豆七島や湘南、反対側には雲に半分かくれた富士山を見ることができました。晴れた日には遠く房総の方まで見渡せるそうです。船で30分の距離ですが、小旅行の気分が味わえました

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翌日(つまり元日)は、ホテルをチェックアウトしてから国道135号を北上し、昨年と同じく城ヶ崎海岸に寄ってみました。昨年より海は穏やかでしたが、それでも荒々しい断崖絶壁と、力強く打ちつけては砕け散る荒波は大迫力でした。瑠璃色の海が吸い込まれそうなほどに美しかったです。

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門脇吊橋から見下ろすと透明感のある美しいブルーに魅せられました。

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135号を北上しての帰り道、途中で山の向こうに雪を冠った富士山が小さく見えたので、思わず車の中からパチリ。今年も皆様にとってよい年となりますようお祈りします。

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