完全なるチェックメイト &関連2作品
トビー・マグワイア主演、伝説の天才チェスプレイヤー ボビー・フィッシャーの半生を描いた伝記ドラマ、「完全なるチェックメイト」(Pawn Sacrifice)を見ました。監督は、「ブラッド・ダイヤモンド」「ディファイアンス」のエドワード・ズウィック。 完全なるチェックメイト 公式サイト
幼少期にチェスの虜となり、15歳の時に最年少グランドマスターとなったボビー・フィッシャー(トビー・マグワイア)。そして1972年、アイスランドで開催される世界王者決定戦に出場し、世界チャンピオンの座にいたソ連のボリス・スパスキー(リーヴ・シュレイバー)に挑戦することとなります。
時は米ソ冷戦下、この対局は両国が国の威信にかけて戦う代理戦争の様相を帯びてきます。世界が見守る世紀の決戦は白熱し、2人の神経は研ぎ澄まされて、極限状態にまで追い詰められていきますが...。
昨年最後に見た映画です。チェスは知らないのですが、頭脳ゲームの話は好きで、ボビー・フィッシャーに興味があったので、事前に関連映画を見たりして公開を楽しみにしていました。
少年時代におもちゃのチェスに出会ってその虜となり、文字通り寝食を忘れるほどにのめり込んでいったボビー・フィッシャー。チェスに関しては天才ですが、それ以外はまるで未熟で、社会性に欠け、神経質、傲慢、手のつけられないわがままのまま、成長してしまったようです。
自分の要求が通らなければ、平気で約束をすっぽかすのは当たり前で、スパスキーとの対戦が決まってからも難癖をつけては逃げ回るので、まわりはなだめすかして飛行機に乗せ、なんとか会場に送り込むことができたのでした。
対戦はスパスキーの勝利に始まり、第2戦は不戦敗。このままボビーが負けるかと思われましたが...スパスキーは当然、ボビーの手を研究し尽くして試合に臨んだはずですが、ボビーはそれを逆手にとって、これまで全く使ったことのない手を使い、最初の一手からスパスキーを錯乱させ、最終的に勝利を収めるのです。
チェスの試合はスポーツのような華やかさはありませんが、2人の心理的駆け引きや、現場のびりびりとした緊張感が伝わってきて引き込まれました。いつも神経質なボビーのみならず、冷静沈着なスパスキーまでもが、追い詰められるにつれ精神の変調を来していく様子は圧巻でした。
ドキュメンタリー映画やWikipediaで知る、ボビー・フィッシャーの家族背景や波乱に富んだ人生も、なかなか興味深いものでした。チェスの虜となり、精神を蝕まれたフィッシャーですが、心から好きといえるものに出会い、天賦の才能を発揮できた彼は幸せだったのではないかな...と思いました。
ボビー・フィッシャー 世界と闘った男 (Bobby Fischer Against the World)
2011年のドキュメンタリー映画。貴重な記録映像や、名代のチェスプレイヤーたちが語るボビー・フィッシャーのエピソードなど、とても興味深かったです。特に印象に残ったのは、雑誌LIFEの写真家ハリー・ベンソンが語るフィッシャーの知られざる横顔です。
エキセントリックに見られていたフィッシャーですが、ベンソン氏には心を開いていたようで、彼に見せるリラックスした表情が魅力的でした。写真集も出ています。 Harry Benson "Bobby Fischer" (Amazon site)
ボビー・フィッシャーを探して (Searching for Bobby Fischer)
1993年の実話に基づくヒューマンドラマ。ボビー・フィッシャーではなく、フィッシャーに憧れる天才少年チェスプレイヤー ジョシュ・ウェイツキンくんを描いた作品ですが、チェスの奥深さと厳しさ、チェスの虜になった少年と両親の葛藤、ニューヨークのチェスカルチャーなどにも触れられ、ドラマとしても引き込まれました。
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コメント
こんばんは!
この作品、映画としての出来はまあまあ・・っていう感じでしたが、やっぱりフィッシャーの人となりが普通じゃないので、そのあたりのドラマはとても楽しめましたよね!
ご紹介のドキュメンタリー、凄く面白そうです。「ボビー・フィッシャーを探して」も御覧になってたんですね。
近いうちに2本とも是非見てみたいです~~。
投稿: ごみつ | 2016年1月11日 (月) 22時36分
セレンさん☆
これも気になっていた作品です。
ご本人のドキュメンタリーもあるのですね!
チェスにしろ何か特殊な天才的才能がある人は、どこか紙一重なところがあるものなのですね。
アートの世界にしろ音楽家にしろ科学者にしろ、社会性のない人も多いですよね~
気になるけど今回はDVD待ちかなぁ。
投稿: ノルウェーまだ~む | 2016年1月11日 (月) 23時41分
☆ ごみつさま ☆
こんばんは。
トビー・マグワイヤが演じるボビー・フィッシャーは魅力的でしたね。
私は何かが乗り移ったかのような彼の演技に
スパイダーマン3のブラック・スパイダーマンを思い出しました。^^
ドキュメンタリーもおもしろかったですよ!お勧めです。
「ボビーフィッシャーを探して」のジョシュくんも
ボビー・フィッシャーと同じくブルックリン出身のユダヤ系で
ストリートチェスでチェスのおもしろさに目覚めた天才少年なんですよね。
フィッシャーとは直接関係ないですが、こちらもよかったら是非☆
投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2016年1月12日 (火) 00時35分
☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
こんばんは。
ボビー・フィッシャーのドキュメンタリーは
今回の映画公開に合わせてリリースされたようです。
映画にはないエピソードも多く、興味深く見れました。
映画では言ってませんでしたが、ひょっとしたら彼は
アスペルガー症候群だったのかもしれませんね。
でも心から夢中になれるものに出会い、しかも才能を発揮できて
彼は幸せだったのではないかな...と思いました。
いっしょにいたらたいへんそうですが^^; 魅力を感じました。
落ち着かれてからでも...よかったらご覧になってみてください☆
投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2016年1月12日 (火) 01時01分
一芸に秀でた人は、一つの事にまい進する力があるのですね。
でもそのせいか、一つの事に集中するあまり社会性に欠ける
ところが、あったりして・・・
将棋の世界では羽生さんとか、一度対戦した局面は、
忘れずに覚えているそうですが、社会性に欠けるところは
ないようで天才なんでしょうね。
アスペルガー症候群で検索してみると、すべてが当たりかは
定かではありませんが、色々な著名人がでてきて驚きますが、
ボビー・フィッシャーの名前もでてきました。
世の中、そういったある意味天才たちのお蔭で発達してきた
部分がかなりあるようですね。
投稿: イザワ | 2016年1月14日 (木) 01時38分
☆ イザワさま ☆
こんにちは。
ボビー・フィッシャーのような天才に、私たちふつうの人の感覚で
同じ生活を求めるのは無理なのではないかな、と思いました。
身近に彼を理解してサポートしてあげられる方が必要なのでしょうね。
もちろん天才の中にも、世間との折り合いをつけて?
うまく適応している方もいらっしゃるでしょうが...
近くにいたらたいへんでしょうが、魅力を感じましたよ。
投稿: ☆ イザワさま ☆ | 2016年1月14日 (木) 16時38分
こんばんは。
地味な作品ながら惹き付けられました。
ボビー役のトビー・マグワイアは頑張ってましたね。
レイキャビクでの対戦シーンは気迫迫るものがあり良いシーンでした。
「ボビー・フィッシャーを探して」はタイトルしか知らないです。
機会があれば見てみたいです。
投稿: margot2005 | 2016年1月29日 (金) 19時53分
☆ margot2005さま ☆
こんばんは。
ボビー・フィッシャーの人となりや伝説の一戦の様子など
なかなか興味深い作品でした。
トビー・マグワイアの演技も魅力的でした。
「ボビー・フィッシャーを探して」は直接ボビーとは関係ありませんが
チェスの奥深さや、魔物のような魅力が伝わってくる作品でした。
主人公のジョシュくんもかわいいし(ボビーより人間ができてる^^)
ドラマとしても引き込まれましたよ。
投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2016年1月30日 (土) 21時51分