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ルーム

エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」を映画化したヒューマンドラマ、「ルーム」(Room)を見ました。7年間監禁された女性と、そこで生まれ育った5歳の息子が、救出されてから社会に順応していく過程を描きます。
door ルーム 公式サイト

Room_1

17歳の時に男に誘拐され、裏庭の狭い納屋に7年間監禁されたジョイ(ブリー・ラーソン)と、そこで産まれた息子のジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)。ジャックが5歳になった時、納屋からの脱出を決意したジョイは、ジャックにすべてを託し一大勝負に挑みます...。

Room_8

ブリー・ラーソンがアカデミー賞をはじめ、数々の映画賞で主演女優賞を総なめにした話題作。救出されてめでたし、めでたしではなく、その後の社会に適応することへの難しさにフォーカスしているところが新鮮でした。切なく胸に迫る場面もありますが、希望が感じられるラストに救われました。

何年か前にアメリカで同じような事件があり、被害者による手記が出版されたので、それを原作にしているのだと思っていたら、これはオーストリアで起こった事件をモデルにしているのだそうです。

広いアメリカをドライヴ旅行していて、人里離れた一軒家を見ると、このまま誘拐されて殺されても誰にも気づかれないかも...なんて勝手な想像をしてぞっとすることがありますが、映画では、よくあるごく普通の住宅街の、これまたよくあるタイプの納屋が舞台でした。

でもこの”ごく普通”が、かえって犯罪の隠れ蓑となることもあるのでしょうね。男はここで、7年間もごく普通のよき市民として、社会に溶け込んでいたのです...2つの顔を使い分けて。その事実に驚愕し、恐ろしさに身がすくみます。

Room_7

私がどうしても気になったのは、自分の人生を奪った憎き犯人の子どもをはたして愛することができるだろうか...ということでした。でもジョイはきっと悩みに悩み抜いたうえで、男の存在を抹殺し、母は母のみで母となることを心に決めたのでしょう。だから決してジャックの姿を男に見せず、触れさせなかった。

17歳で誘拐され、何の知識も情報もないままに子どもを産み、できるかぎり健やかに、愛情をたっぷり注いでジャックを育ててきた...その苦難の道は計り知れないものがありますが、母性とはなんて偉大なものだろう、とまずそのことに感動しました。

ジョイにとっては、ジャックこそが自分が生きる理由であり、心の支えでもあったのでしょうね。そしてこの狭い、不衛生な空間が、ジャックにとっては世界であり、宇宙だった...ママの愛情を独り占めにできる、彼にとっては最も幸せな時間だったのかもしれません。

ジャックの思いがけないひとことからそのことが伝わってきて、胸が締め付けられました。

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映画」カテゴリの記事

コメント

こんにちは~。cherry

「ルーム」早速行かれたんですね。
とても良さそうな作品でテーマとしても気になってるのですが、私、こういうお話が一番苦手なんですよね・・。

色々な作品が好きなのですが、この手の事件、レイプものとか、児童虐待、性的犯罪みたいなのがものすごく苦手で、たぶん劇場には行かないと思います。

セレンディピティさんが疑問に思われた、レイプされて産んだ子供を愛せるか・・とか、もうその時の被害者の心情を想像しただけで、辛いんですよね・・。weep

DVDになったら絶対に見たいと思ってます~。

投稿: ごみつ | 2016年4月13日 (水) 17時40分

セレンさん☆
母性の偉大さに感動しましたね~
彼女はこの憎き男の子供としてではなく、ただ一人の親として息子を愛したのでしょうね。
それが自分のアイデンティティーを守る唯一のことだったのかもしれません。
なので実家に戻って実の父に、「犯人の子」という目で見られたとき、初めて自分を「被害者」息子を「生まされた子」として認識しなければならない辛い現実に突き当たってしまったのだと思います。

投稿: ノルウェーまだ~む | 2016年4月14日 (木) 00時08分

☆ ごみつさま ☆
おはようございます。

私も同じく、こういう話は苦手なので
実は見に行こうか、どうしようかすごく迷っていたのですが...
直接そういうシーンがなかったのが救いでしたが
どうしても描かれていない背後を想像してしまうので
そういう意味ではつらい作品でした。

どちらかという救出された後にフォーカスされているので
主人公が子どもを産み育てるに至った心情の変化は
映画を見て推し量るしかないのですが
原作にはおそらく書かれているのでしょうね。

お勧めはしづらいですが、子どもの力に勇気を与えられました。

投稿: ☆ ごみつさま ☆ | 2016年4月14日 (木) 09時09分

☆ ノルウェーまだ~むさま ☆
おはようございます。
考えさせられる作品でしたね。

逆説的になってしまいますが、あのルームにいる間は
おとぎ話だけで子どもを守ることができたのですよね。

外の世界に出たとたん、父親が誰かという真実や
好奇の目、心無いことばにさらされてしまう...
ジャックが成長していくこれからが
ジョイの母親としての正念場なのかもしれません。
それでも子どもの無垢な心やたくましさに、これからもきっと
助けられていくのだろうな...と感じられるラストでしたね。

投稿: ☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ | 2016年4月14日 (木) 09時23分

私も昨日観ました。
セレンさんと同じところに着眼しました。
レイプされた男の子どもを愛せるか?と。
ジョイとジャックは愛し合って助け合っているけれども
この先ジャックが成長して、父親のことを話すときに
またどちらも苦しむだろうねえ…

投稿: zooey | 2016年4月14日 (木) 18時00分

この映画、ご覧になったのですね。私は絶対に無理です。
実際にこの事件が明るみに出た当時、私はもうアメリカにきていたのですが、お隣のドイツ国民の動揺はかなりのものでした。というのも、その数年前に、同じくオーストリアで8年間監禁されていた少女が、その場から逃げて近所の人に助けを求めた…という事件があったからです。私はその当時まだドイツでしたので、連日の報道や、その彼女のTVトークショウ出演などを観ていました。あの時、女の子をもつ親は誰もが恐怖心を覚えていました。

今回、この映画の存在を知った時、まさかあの時の?あれをもう映画化?と、制作者の神経を疑いました。どうしてあの話を映像にできるのかと。まだ当事者も子供たちも生きているのに。

近年、The Danish Girlもそうですが、実在者のストーリーが流行りですよね。小説の映画化ですから脚色も多いですし、俳優陣がこぞって役作りに専念し、その役を絶賛されて賞をとる…という事が続いていますよね。私はこのブームが怖いです。観る人がいるから、作る側もエスカレートする。日本の震災の事も、いつかはハリウッドがカタストロフィー映画としていつか作るかもしれません。今はそういうブームでないですけど。

長々と批判的な、ムードを壊すコメントをしてすみません。実際に監禁されていた(別の件ですが)女性が、実際にその状況を淡々と、涙と笑顔を交えて話していた情景を覚えているだけに、皆さんの描くイメージと現実とはまったく違うものだという事を言いたかったのです。The Danish…もしかり。アメリカ人が膨らました小説(実話とは程遠いです)映画と実話とはまったく違うものです。次は誰の事を映画にするんだろうと、この映画の存在&役者へのフォーカスに恐怖を覚えてコメントしてしまいました。すみません…

投稿: Schatzi | 2016年4月14日 (木) 20時36分

☆ zooeyさま ☆
こんにちは。
ようやく自由を得たこれからの人生の方が
ずっと苦しむことになるのでしょうね。
どのような形であれ、望まれて生まれてきた命であり
愛しているのだということを、子どもには全身で
伝え続けていくしかないのでしょうね...

投稿: ☆ zooeyさま ☆ | 2016年4月15日 (金) 15時36分

☆ Schatziさま ☆
こんにちは。
Schatziさんはこの事件を身近でご存知だったのですね。
映画化にあたって、モデルとなった親子にはたしてどのような形で
了承を得ているのか、内容が内容だけに気になるところです。

映画はかなりマイルドに脚色してありましたが
それでも描かれていない背後を想像してしまい
見るのがつらい作品でした。

実は今日、美容院で女性誌を見ていたら
軒並みこの作品を取り上げて感動的!女性は見るべき
みたいに絶賛されていて、なんだかすごく違和感を感じました。

映画の作り手としては真摯な思いであっても
興行的な成功も考えなければならないわけで
なかなかそのバランスが難しいですね。
たしかに最近のハリウッド映画は感動を与えるべく
過度に作り込みすぎているようなところも感じます。

ムードをこわすなんてとんでもない。
一石を投じる貴重なコメントをありがとうございます!

投稿: ☆ Schatziさま ☆ | 2016年4月15日 (金) 16時09分

こんばんは。

この映画とても衝撃的でしたね。

>私がどうしても気になったのは、自分の人生を奪った憎き犯人の子ども...
そうですね。私も自分ならとも思いましたが、やはり母性が勝つのでしょうね。
どんな男の子供でも母親としての愛情がわくのだと思います。

主演のブリー・ラーソンは主演女優賞総なめのようですが、ジャックを演じた彼がスゴく上手かったですね。感心しました。

投稿: margot2005 | 2016年5月17日 (火) 23時37分

☆ margot2005さま ☆
こんにちは。
衝撃的な作品でしたね。
そしてまた、考えさせられる作品でもありました。

おそらく彼女は何度も何度も葛藤して
自分が母となることを受け入れたのでしょうね。
たったひとりで産み、育て...彼女の覚悟のほどを思うと
ただただ胸が締め付けられます。

ジャックを演じた子、難役をみごとに演じていましたね。
初めて外の世界に触れた時のびっくり眼が忘れられません。

投稿: ☆ margot2005さま ☆ | 2016年5月18日 (水) 10時52分

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