ココ・ファーム・ワイナリー
5月のある晴れた週末、栃木県足利市にある COCO FARM & WINERY (ココ・ファーム・ワイナリー)を訪れました。
数年前、偶然こちらの葡萄酢に出会ってそのおいしさに感動し、その後ホームページにアクセスして初めて、こころみ学園という福祉施設が運営するワイナリーであることを知りました。ココファームがすごいと思うのは、そうした背景を前面に出さないところ。
「かわいそうな子たちが作ったからと買ってもらっても一度限り。ほんとうにおいしいワインを作らなくては」という考えのもと、海外から醸造家を招き、20年以上本格的なワイン作りに取り組んできたそうです。以来、私にとってはいつか訪れたい憧れのワイナリーとなりました。
都内から車で2時間弱。まずは、カフェでランチをいただきました。こころみ学園で作っている新鮮野菜や地元の農作物を使ったお料理を、ココファームのワインとともに。ワインは芳醇でフルーティな味わいがあってほんとうにおいしかった。ほどよく冷えて、お料理にもよく合いました。
食事の後、ガイドツアーに参加しました。受付前のテラスにぶどう棚があり、気持ちのよい木陰を作っています。ぶどうの花を初めて見ましたが、小さくてかわいいですね。
ココファームは、1950年代、中学の特殊学級の生徒たちと担任の川田昇先生が、山奥の急斜面の土地を開墾するところからはじまりました。平らな土地は高くて買えなかったからだそうですが、幸いこの土地は陽当たりよく、水はけよく、ぶどうの栽培に適していたそうです。
ここでの農業は、それまでかわいそうだからと過保護にされていた生徒たちに大きな変化をもたらしました。下草刈りやぶどうの袋がけ。虫を取り除き、カラスを追い払い...そうした農作業を通じて、生徒たちは心身が安定し、注意力と我慢強さを学び、農夫のようにたくましくなっていったそうです。
急斜面のために車両や大型機械を入れられず、すべて人が手作業で行ったことは、ぶどうにもいい影響をもたらしました。ココファームは開墾以来50年以上、除草剤が撒かれたことはありません。また人が入ることで、土が柔らかくいい状態を保っているのだそうです。
最初は食べるぶどうを作っていましたが、日本の食生活の変化に対応して、80年代からワイン作りをはじめました。天然の野生酵母を使い、ぶどうの個性にあわせてていねいに作る上質なワインが評価され、サミットの晩餐会や国際線のファーストクラスにも採用されているそうです。
(左)発酵・熟成のためのステンレスタンク (右)瓶詰の機械
(左)上等なワインは木樽で熟成させます。 (右)スパークリングワイン作りも手作業。シャンパーニュ地方と同じ方法で作られているそうです。
ぶどう畑の周りにバラが植えられていましたが、これにも意味があるそうです。ぶどうはバラの仲間で、ぶどうより弱いので、病気になるとまずバラの方に兆候が出るのだそうです。 ガイドツアーでひと通りお話をうかがった後、ぶどう畑の上にある見晴らし台まで上ってみることにしました。
道がジグザグについているので歩くのはそれほどたいへんではないですが、38度の傾斜は上から見ると前のめりに感じるほど。これまで国内外のワイナリーをいくつも訪れましたが、こんなぶどう畑を見たのは初めてです。@@ 作業する際、慎重に上り下りすることが集中力にもつながるそうです。
右の方に見えるのがカフェとワイン工場。左にはこころみ学園の建物が続いています。こころみ学園は18歳以上の知的障碍者の自立を支援する厚生施設で、90歳以上の方もいるそうです。
20分ほどで見晴らし台に着きました。足利の街が一望に見渡せます。緑の山が入り江と小島の風景に見えて、「海街diary」のワンシーンを思い出しました。
最後にショップで、ワインと葡萄酢、農園の野菜などを買いました。ワインは特別な日に大切にいただきたいと思います。
| 固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)