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2016年7月

Obica Mozzarella Bar / Blue Bottle Coffee

休日、お昼を食べにぶらりと六本木ヒルズへ。行こうと思っていたお店がバースデーパーティで貸切りだったので、けやき坂沿いにあるObica Mozzarella Bar(オービカ モッツァレラバー)に入ることにしました。

こちらのお店、Barだからお酒を飲むところだと今まで思っていたのですが、ランチメニューもあるようです。この日はサイドディッシュと飲みものがつく、休日のブランチメニューから選んでシェアしていただきました。

ちなみにObicaとは、イタリア・ナポリの方言で”さあ、どうぞ”を意味するObikaから来ているそうです。メインのお料理にはどれもイタリアから空輸された水牛100%のモッツァレラチーズが使われていました。

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冷たいかぼちゃのスープ。

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ベイクトパスタ。マカロニ、じゃがいもをメインにしたグラタンです。アンチョビの塩味がアクセントになっています。

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ピッツァはお店のオリジナルで、楕円形というのがユニーク。もちもちしておいしかった!

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食後はティラミスを深煎りのコーヒーとともに。カウンター席からはオープンキッチンがよく見えて、スタッフがきびきびと働く姿が気持ちよかったです。

                              

これはまた別の日。この日は住吉に用事があったので、帰り電車を一駅乗って、隣りの清澄白河に寄ってみました。まずは話題のBlue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)へ。今は青山と新宿にもお店ができましたが、なぜ日本1号店を清澄白河にしたのか?実際に見て確かめたいと思っていました。

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駅からお店までは、昭和の懐かしい雰囲気の残る住宅街が続いています。本社のあるカリフォルニア州オークランドの環境に似ているとのことですが、近くに水路や大きな公園があり、都心の繁華街にはないゆったりとした時間が流れているところが気に入られたのかもしれませんね。

またこの地はもともと材木場が多く、天井の高い建物がコーヒーの焙煎機を置くのに適していたとか...ブルーボトルの建物も、木材倉庫の跡地だそうです。以前TVの経済番組で、創業者の方は日本の喫茶店のコーヒーに感動してブルーボトルを作ったと聞きましたが、それが逆輸入されたというのがおもしろいですね。

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オープン当初のような混雑はなく、5分ほどで注文できました。奥に見えるのはシングルオリジンで、この日はルワンダの豆でした。私は手前のカフェラテをいただきました。ていねいに入れられたコーヒーはとてもおいしかったです。

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このあと、行きと違う道を通ったら、途中でBrigela(ブリジェラ)さんというブリオッシュ&ジェラートのお店を見つけたのでひと休みしました。右はジェラートのブリオッシュサンド。こちらのお店もなかなか人気でした。

最後に、昔ながらの佃煮屋さんで深川名物アサリの佃煮を買って帰りました。着いたのが夕方だったのであまり回れませんでしたが、今度は清澄庭園や現代美術館(改修工事のため休館中)とあわせてゆっくり訪れたいです。

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beacon (ビーコン) &ファーマーズマーケットと新しい食器

映画を見たのは渋谷PARCOのシネクイントですが、PARCOが今度建替えになるそうで閉店セールをやっていました。シネクイントも8月7日でいったん閉館となるそうです。(今後は未定)

PARCO角の交差点から宮下公園の横を通ってそのまままっすぐ行くと、青山通りへのショートカットになります。このエリアは渋谷児童館やこどもの城も閉館し、少子化の波を肌で感じます。児童館の跡地は建替えする渋谷区役所の仮庁舎になっていました。

お昼は、国連大学裏にあるアメリカンレストラン beacon(ビーコン)でいただきました。青山のCICADAなどと同じTYSONS系列のレストラン。TYSONS系列のお店はアメリカンな雰囲気が好きで、これまでにも度々訪れています。

 天王洲 T.Y.HARBOR BREWERY (2012/05)
 代官山 IVY PLACE (2012/08)
 青山 CICADA (2015/05)

beaconはニューヨークのモダンなステーキハウスをイメージしたお店で、シックで広々とした空間が落ち着けました。この日はブランチメニューの中からいただきました。

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お店の名まえを冠したビーコンバーガーにアボカドをトッピング。

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私は無性にベーグルが食べたくて、スモークドサーモンとクリームチーズのベーグルサンドにしました。クリームチーズがたっぷり@@ですが、サーモンとの相性は抜群。おいしくてぺろりと食べてしまいました。食後は深煎りのコーヒーをゆっくり楽しみました。

食後は久しぶりに、国連大学のファーマーズマーケットへ。採れたて野菜のほかに、手作り食品やワイン、雑貨、フードトラックなどもあって楽しい。この日はアンティークマーケットも出ていました。

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私は夏野菜のセットと、ころころ小さななじゃがいもを買いました。夕ごはんは夏野菜のカレーです。^^

この後、青山通りを渋谷方面に下りていくと、インテリアショップのmaturiteさんでセールをしていたのでのぞいてみました。

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セール品ではないですが、食器とバスマットを購入。この食器は本来ひとり用のスープ皿だと思いますが、少人数家族にはテーブル中央に置くサラダボウルに十分な大きさです。

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トマトとアボカドのサラダ。一口サイズにカットしたアボカドに色止めのレモン果汁を和え、同じく一口サイズにカットしたトマトとともに、塩麹、わさびと和えます。

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きゅうりとカラーピーマンの炒めもの。にんにく、しょうがのみじん切りとともにごま油で炒めておしょうゆで味付け。ホットサラダの感覚でいただけます。

私にはめずらしいモダンなデザインですが、意外と食卓になじんで大活躍しています。

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シング・ストリート 未来へのうた

「ONCE ダブリンの街角で」「はじまりのうた」のジョン・カーニー監督の最新作、「シング・ストリート 未来へのうた」(Sing Street)を見ました。80年代のブリティッシュサウンドにのせて描く青春ドラマです。
 シング・ストリート 未来へのうた 公式サイト

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1985年、不況下のアイルランド、ダブリン。14歳のコナーは父親が失業したため、荒れたカトリックスクールに転校させられることに。家では両親の離婚話が進み、コナーは兄のジャックとミュージックビデオを見るのが唯一の楽しみでした。

ある日、学校帰りに見かけた年上の美しい女性ラフィーナにひと目惚れしたコナーは、僕のバンドのミュージックビデオに出てみない?と誘い、約束を取りつけます。それから慌てて仲間を集めてバンドを結成し、曲作りと練習に明け暮れますが...。

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前作「はじまりのうた」は、ニューヨークを舞台にキーラ・ナイトレイとマーク・ラファロというスターを配しての作品でしたが、本作は、アイルランドを舞台にオーディションで選ばれた新人俳優たちが演じている、カーニー監督の原点ともいうべき作品。

デュランデュラン、A-Haなど、80年代のブリティッシュサウンドが懐かしい。映画では未来派とよんでましたが、アートでビジュアルを意識したパフォーマンスは、この頃登場したミュージックビデオの影響が大きいのでしょうね。当時、深夜に放映していたMTVは私も好きでよく見ていました。

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映画では80年代のヒットナンバーに加え、コナーたちが演奏するオリジナル曲がちゃんと80年代の雰囲気たっぷりに作られていて感動しました。しかも演じている彼らはまだ生まれていないのですよね? ↓サウンドトラックはコチラで視聴できます。

 Sing Street Soundtrack (Amazon Site)

ふだん音楽を聴く時はメロディしか気を留めないことも多いのですが、この作品では歌詞がコナーの気持ちを描写しているので、歌詞にも自然と感情移入して聴いていました。コナーがラフィーナのために作ったバラード To Find You に泣きましたが、一番気に入ったのは Drive It Like You Stole It

 Sing Street - Drive It Like You Stole It (Official Video)

バック・トゥ・ザ・フューチャーのプロムのシーンを思い描きながら演奏するコナーがとてもかわいい。80年代のアイルランドのティーンネイジャーたちにとって、アメリカは映画の中の遠い世界、そしてロンドンは夢を実現するのに手が届きそうで届かない憧れの街だったのでしょうね。

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恋、友情、兄弟愛...青くさいほどにまっすぐな青春ドラマですが、胸がぎゅっとしめつけられるすてきな作品。ラストは「小さな恋のメロディ」を思い出しました。アダム・ラヴィーンが歌うエンディング・ソングが2人に優しくエールを送っているようでした。

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疑惑のチャンピオン

ツール・ド・フランスで7連覇を達成するも、薬物使用によりタイトル剥奪、自転車競技から永久追放となったランス・アームストロングを描いた実話に基づくドラマ、「疑惑のチャンピオン」(The Program)を見ました。
 疑惑のチャンピオン 公式サイト

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アメリカ人自転車ロードレーサー ランス・アームストロング(ベン・フォスター)は、25歳で重度のガンに侵されますが、大手術を受けて克服。過酷なリハビリを経て、1999年から2005年までツール・ド・フランスで7連覇を達成します。

アームストロング選手の奇跡の復活は多くの人々に感動と希望を与えましたが、その勝利の陰には、スポーツ医学の権威によって綿密に計画され、組織的に実行されたドーピング・プログラムの存在がありました...。

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イギリスのサンデー・タイムズ紙の記者デヴィッド・ウォルシュのノンフィクションを、「クイーン」「あなたを抱きしめる日まで」のスティーヴン・フリアーズ監督が映画化。今ちょうどツール・ド・フランス2016が開催されている最中での、タイムリーな映画公開です。

ツール・ド・フランスは毎年7月に開催されている伝統ある自転車ロードレース。23日間かけてフランス全土3500kmを走るという過酷なレースです。この映画では、アームストロング選手のチームがどのようにドーピングを続けてきたか、プログラムの全貌を明らかにしていて衝撃を受けました。

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リオ五輪を前に、連日ドーピングのニュースが入ってきていますが、先日テニスのシャラポワ選手が2年間の大会出場停止処分を受けた際に、彼女が使っている薬剤が今年からドーピングの対象となっていることを知らなかった、失敗した、と話していたことが気になっていました。

トップアスリートたちにとってほんのわずかな差で勝敗がつく厳しい世界。ウェアや機材に最新のテクノロジーを駆使するのと同じ感覚で、さらなる高みを目指して、禁止薬剤に触れない範囲で戦略的に薬物を使用する選手がいても不思議ではないかもしれません。

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ロシアのような国家主導でのドーピングは論外ですが、アームストロング選手が関わった不正も、かなり組織的で悪質なものでした。ツール・ド・フランスはチーム戦なので、アームストロング選手は自身のみならず、チームメイト全員にも同じドーピングプログラムを課していたのです。

映画では、ドーピング検査を切り抜けるために、どうやって血中薬物濃度を下げるか、その手口も見せていましたが、選手ひとりの力では到底ここまでできるはずはなく、医師やスタッフ、指導者ぐるみでの組織的な犯罪であり、おそらくスポンサーや主催者も黙認していたのでは、と思います。

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どうしてこれほど問題が大きくなるまで放置されていたのか。そこには本人の勝ちたいという強い思いのほかに、大会やスポンサーの思惑もあったでしょうし、ガンを克服して不死鳥のように蘇るスーパーヒーロー、という感動的なストーリーを人々が求めていたということもあるでしょう。

個人的には生還してツール・ド・フランスに出場するだけでも十分すごいことだと思いますが、勝負の世界に生きるアスリートが、最初から優勝を取りに行かない、などというのはありえないのかもしれませんね。

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ブルックリン

アイルランドからニューヨーク・ブルックリンにやってきた移民の少女の青春ドラマ、「ブルックリン」(Brooklyn)を見ました。
 ブルックリン 公式サイト

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1950年代、アイルランドの小さな町から海を渡ってニューヨークのブルックリンにやってきた、内気な少女エイリッシュ(シアーシャ・ローナン)。デパートで働きながら大学で会計学を学び、やがてダンスパーティで出会ったイタリア系移民のトニー(エモリー・コーエン)と恋に落ちますが...。

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監督はアイルランド出身のジョン・グローリー。脚本は「17歳の肖像」「わたしに会うまでの1600キロ」のニック・ホーンビィ。「つぐない」のシアーシャ・ローナン、「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ」のエモリー・コーエン、「アバウト・タイム」「レヴェナント」のドーナル・グリーソンが共演。

アメリカでの評判がすごくよくて楽しみにしていましたが、私にはまあまあといったところでした。最初の方は、アメリカ版三丁目の夕日?といった感じで少々退屈に思っていましたが、エイリッシュがアイルランドに帰郷してからは、思わぬ展開に目が離せなくなりました。

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ニューヨークですっかりレディに変身したエイリッシュは、故郷の人たちにちやほやされ、地元の名家の息子ジム(ドーナル・グリーソン)からも思いを寄せられるようになります。トニーとジム、まったく違うタイプの2人の男性の間で揺れ動くエイリッシュの女心...。

エイリッシュは向上心のあるひたむきな女の子なので、知的で穏やか、紳士的なジムに胸がきゅんきゅんしてしまう気持ちはすごくよくわかるのです。でも彼女が生涯のパートナーとして選んだのは、情熱的で温かくて、バイタリティがあるトニーだったはず。

いったいどうするつもりかしら...とドキドキしながら成り行きを見守りましたが、やはり神様は彼女が進むべき道をちゃんと示してくれたのだな...と、最後にほっと胸をなでおろしました。

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エイリッシュが働く50年代のニューヨークのデパートは先日見た「キャロル」が重なりましたし、この時代のニューヨークの下町の雰囲気やダンスパーティの場面には「ウエストサイドストーリー」を思い出しました。

移民をテーマにした作品はこれまでにもいろいろ見てきましたが、ひとりひとりにドラマがあって、今のアメリカにつながっているんだな...と改めて思い出させてくれる作品でした。

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ビル・カニンガム&ニューヨーク

ニューヨーク・タイムズ紙のファッションコラムを担当するフォトグラファー、ビル・カニンガムさんを追ったドキュメンタリー、「ビル・カニンガム&ニューヨーク」(Bill Cunningham New York)を見ました。
 ビル・カニンガム&ニューヨーク (Amazon DVD)

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6月25日、ニューヨークの伝説的ストリート・フォトグラファー、ビル・カニンガムさんが87歳でお亡くなりになりました。トレードマークのブルーのコートと自転車で街角に現れ、道行くおしゃれさんたちのファッションを50年以上フィルムカメラで撮り続けました。

ビルさんが担当するニューヨークタイムズのファッションページ ON THE STREET は私も大好きで、今も時々オンライン版をチェックするのを楽しみにしていました。どんなページかといいますと...百聞は一見にしかず。まずはご覧になってみてください。

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年齢も、性別も、人種もさまざま。著名人、一般人を問わず、ビルさんのアンテナを捕えるありとあらゆる人たちのファッションを撮影し、膨大な写真を分類、編集して、珠玉の1ページを作り上げています。ニューヨークの魅力がいっぱいつまっていて、街の息遣いが聞こえてきます。

私は時に昆虫採集?を思い出してしまうこともあるのですが、どこかサイエンティフィックな視点が感じられるところが大好きです。ビルさんは温かい目で被写体を見つめるフォトグラファーであると同時に、冷静で鋭い感覚をもつジャーナリストなのだと思います。

ビルさんのページはファッション界の大御所たちにも多大な影響を与え、そのファッションは半年後のトレンドになると言われるほど。(「プラダを着た悪魔」のモデルとなった)VOGUE編集長のアナ・ウィンターをして「私たちは彼のために服を着るのよ」と言わしめた人物。

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これほどファッションが大好きで、センスがあるのにもかかわらず、ご自身はいつもブルーの作業着を着て自転車で移動。カーネギーホールの上階にある古くて狭いアパートメントの部屋で、ネガフィルムの入ったキャビネットに囲まれて暮らしています。

食事は街角のダイナーで、サンドウィッチとコーヒー。セレブリティのパーティや、ファッションのイベントに招待され、取材に訪れますが、シャンパンもお料理も決して口にすることはありません。いくつかのイベントが重なった時は、できるだけチャリティイベントを優先するそうです。

ビルさんはその理由を「お金をもらったら自由でいられないから」と言います。だからどんな有名人であっても、もらった服を着ている人は撮らない。自分のお金で自分で装ったファッションでなければ興味がないと言います。ジャーナリストとして常に清潔で、公正であり続けました。

自身に対してはストイックな姿勢を貫くビルさんですが、笑顔がすてきで、優しくて、紳士で、誰の心をも柔らかく和ませるチャーミングなおじいちゃま。決して悪意のある写真を撮ったり、辛辣なコメントを残したりしません。

ファッションに魅せられ、ファッションに一生を捧げ、そのために犠牲にしてきたこともきっとあるかと思いますが、何がそこまでビルさんを強くするのか...。最後にその答えを知った時、心を激しく揺さぶられました。

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多くの人々に装うことの喜びを伝えてくださったビルさん。ご冥福をお祈りします。

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新国立競技場問題の真実

遅ればせながら3月に読んだ本から...。

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森本智之 「新国立競技場問題の真実 無責任国家・日本の縮図」

東京新聞の記者の方が取材を続け、2015年末に出版された本です。新国立競技場のデザインがザハ・ハディドさんに決まってから、2015年7月に突然白紙撤回されるまでを追っています。

2016年オリンピックの誘致では東京湾岸に新スタジアムを建設するという計画でしたが、津波の危険が取りざたされ、2020年の誘致では神宮外苑の国立競技場を建替えるという計画に変更されました。

神宮外苑の絵画館周辺の建物は、景観保全のために高さ20mまでという厳しい建築基準が設けられていました。しかしこの場所に新競技場を建てるために、いつの間にか高さ75mまでと規制が緩和されていたことをこの本で初めて知りました。すべて誘致ありきで法整備が進められていたのです。

ザハさんのデザインが決まった時、莫大な建築費と、景観と環境破壊の両面から大バッシングがありましたが、ザハさんは応募要項に沿って設計したにすぎません。そもそも都心の限られた土地に、これだけ大きなスタジアムを建設しようという計画自体、無理があったのです。

また、オリンピックのメインスタジアムが本来の目的なのに、サッカーやラグビーの競技場としての設備や、コンサート会場のための開閉式の屋根など、各界からの要望をすべて盛り込むうちに、要求スペックはどんどん高くなり、一方でオリンピックに必要な陸上用のサブトラックがないという、本末転倒なことも起こっていました。

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外苑の銀杏並木 (2010/11)

報道では、ザハさんが悪者のように扱われていましたが、彼女はこれまで大きなプロジェクトに何度も関わっている世界的建築家であり、予算やスペックについては、いつでも相談に応じ、デザインを変更できると日本側に申し入れていました。

実際、(ザハさんが設計した)ロンドン・オリンピックのアクアティクス・センターも、後からコストを抑える必要が生じ、主催者からの要望に合わせて、オリンピック後は座席数を縮小できるよう、デザインを変更しているのです。

日本の新国立の場合、何が一番問題だったのかといえば、責任者の不在という一言につきます。著者が関係者に取材して感じたのは、誰の口からも「決まったことだからやらなくては」ということばが聞かれたことだそうです。責任者不在のまま突き進み、うまくいかないとデザインのせいにする...そんな構図が見えました。

白紙撤回されたものの、再コンペでは施工業者と組んで応募しなければならなかったために、多くの建築家がエントリーをあきらめるしかありませんでした。結局、数少ない応募作品の中から決めざるを得ず、最終的に決まった案には、肝心の聖火台がなかったことも、その後問題になりました。

そもそも旧国立競技場を解体する必要があったのか。新しい競技場は必要なのか。次の世代に借金を残し、タイトなスケジュールで難工事を進めるよりも、(味の素スタジアムなど)既存の競技場を上手に生かした方が、今の時代にふさわしいオリンピックになるのではないか。そんな気がしています。

 ザハ・ハディド展 @東京オペラシティ アートギャラリー (2014/10)

ちょうどこの本を読んで間もなくの3月31日、ザハ・ハディドさんがフロリダ出張中、急病でお亡くなりになりました。今後、日本にザハ建築が建つことは二度とないのだな...と思うと残念でなりません。ご冥福をお祈りします。

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