映画

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(Rogue One: A Star Wars Story)を見に行きました。監督は「GODGILLA ゴジラ」のギャレス・エドワーズ。

「エピソード4」でレイア姫がR2-D2に託した、帝国軍の最強兵器”デス・スター”の設計図を、反乱軍はいかにして帝国軍から手に入れたのか?を描いた物語。時系列としてはエピソード4の少し前という設定です。

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今年最初に見た映画です。壮大なスケールで描かれるドラマティックなストーリーで、一年のはじまりに見るのにぴったりの作品でした。そういえば、昨年も「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」から一年がはじまったのだった...と思い出しました。

主演のフェリシティ・ジョーンズが演じるのは、幼い時に天才科学者の父(マッツ・ミケルセン)が帝国軍に捕えられ、たったひとりで生きてこなくてはならなかった反乱軍の戦士ジンという役どころ。父から託された希望を未来につなぐべく奮闘する、意志のこもったまなざしが印象的でした。

前半は少々退屈しましたが、ローグワンが結成されてからはスイッチが入って一気に引きこまれました。帝国軍がいかにもレジメンタルといった感じの統率のとれた軍隊なのに対して、反乱軍が性別も人種もさまざまで多様性に富んでいるところが、今の時代にふさわしい。

自らローグ(ならず者)と名付けたように、彼らのやっていることは奇襲には違いないけれど、兵力を持たない彼らが持てる力と知恵と勇気を総動員して、自由のために命をかけて戦う姿は尊く、どうしても感情移入して、応援したくなってしまいます。

彼らを見ながら、私はふと、アメリカ独立戦争を思い出しました。

当時、赤い制服を着たイギリス軍は訓練を積んだ世界最強の軍隊。それに対してアメリカ軍は正式な軍隊を持っておらず、いざという時に武器を持って戦う急ごしらえの軍隊でした。制服もなく、ぎざぎざの隊列で戦いましたが、ヨーロッパ諸国の予想に反して、イギリスからの独立を勝ち取ることができたのです。

こういう話に弱い私は、名もなき戦士たちの戦いに胸が熱くなりました。

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少々お知らせ...。

新春早々、現在使っているココログの容量がそろそろいっぱいになることに気がつきました。近いうちに引越しする予定ですが、決まりましたらまた改めてお知らせいたします。今後ともどうぞよろしくお願いします。

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My Favorite Movies & Books in 2016

2016年をふりかえって...昨年見た新作映画、旧作映画、読んだ本の中から、特に心に残った作品を書き留めておきます。

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今年選んだ3作品は、偶然ですがどれも私にとって訪れたことのない、あまりなじみのない国の作品になりました。少々粗削りながら、その国ならではの背景や事情が伝わってきて、未知の世界へと誘われました。感想の詳細はリンク先をご参照ください。

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オマールの壁 (Omar)

イスラエルに分断されるパレスチナの現実を描いた、ハニ・アブ・アサド監督の作品。テーマはシリアスながら、サスペンスやロマンスを交え、エンターテイメントとしても引き込まれました。この後見た、同監督の「パラダイス・ナウ」「歌声にのった少年」も心に残る作品でした。

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シング・ストリート 未来へのうた (Sing Street)

ブルックリン」「フラワーショウ!」など昨年はアイリッシュ映画の当たり年でした。本作はアイルランドのダブリンを舞台に、80年代のブリティッシュサウンドにのせて描いた青春ドラマ。ジョン・カーニー監督の原点ともいうべき作品で、主人公たちの青りんごのようなみずみずしさに、心をぎゅっとわしづかみにされました。

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ストリート・オーケストラ (Tudo Que Aprendemos Juntos / The Violin Teacher)

ブラジルのサンパウロを舞台に、スラム街の生徒たちと挫折を知ったヴァイオリニストの、音楽を通じた成長を描いたヒューマンドラマです。過酷な環境の中で生きる子どもたちに、表現する喜びや心の安定を与える、音楽の力に感動しました。バッハとサンバのコラボレーションも楽しかった。

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あまり記事にできませんでしたが、旧作映画もたくさん見ました。その中から3作品をピックアップします。どれも主演俳優の演技に圧倒された作品です。(リンクからallcinemaのサイトに飛びます。)

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蜘蛛女のキス (Kiss of the Spider Woman)

久しぶりに再見して、新鮮な感動を覚えました。ブエノスアイレスの刑務所を舞台に、同性愛者モリーナ(ウィリアム・ハート)と政治活動家バレンティン(ラウル・ジュリア)の愛を描いた作品。私の中ではモリーナが、遠藤周作の小説に登場するガストンの姿と重なって見えました。

バレンティンへの愛のために命を落とし、ごみ置き場に捨てられるモリーナ。そしてラストの奇跡(と私は思った)へと続く一連の場面はイエスの物語を思い出しました。プイグの原作もすばらしかったですが、ラストは味気ない警察の調書となっているので、最後の美しい映像がなおのこと心に残りました。

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ソフィーの選択 (Sophie's Choice)

メリル・ストリープ主演のホロコーストの悲劇を描いた物語。ポーランド語、ドイツ語、ポーランド訛りの英語を巧みにあやつる、ストリープのすさまじい演技に圧倒されました。タイトルの意味をずっと考えながら見ていたので...明かされた想像を超える衝撃的な事実に打ちのめされました。

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プレイス・イン・ザ・ハート (Places in the Heart)

30年代のアメリカ南部を舞台にした、サリー・フィールド主演の細腕奮闘物語。リアルアメリカ、リアルサウスが描かれていて、懐かしさもあり、心揺さぶられる作品でした。盲目の下宿人(ジョン・マルコヴィッチ)がエドナ(フィールド)に容姿を尋ねるシーンが大好きです。

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こちらもほとんど記事にできませんでしたが、多くのいい作品と出会いました。一番のお気に入りはこちら。(リンクからAmazonサイトに飛びます)

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東理夫 「アメリカは食べる。 アメリカ食文化の謎をめぐる旅」

エッセイストでブルーグラス奏者、テネシー州名誉市民でもある著者によるアメリカ食文化論。といっても高所から語るのではなく、その土地に根を張って生きる生活者の目線で書かれていて、アメリカの広い国土をドライヴ旅行しているような気分になれる楽しい本です。

アメリカ料理の特徴は、localizationとstandardization(と私は思った)。移民たちが手に入る材料でなんとか工夫して作った故郷の料理が独自の進化を遂げ、広い国土に住む誰もが安心してありつける食べ物として、缶詰や冷凍食品、チェーンレストランが発展した。それが今のアメリカの食につながっているのだと思いました。

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クリスマスの食卓 2016

23日に家でクリスマスのお祝いをしました。毎年のことですが、記録を残しておきます。

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準備が着々と進行中...。

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まずは、フレシネ(スペインのスパークリングワイン)で乾杯。さっぱりした飲み心地が食事によく合います。今年の前菜は、ヘルシーな地中海料理を中心に用意しました。手前は常備菜としても大活躍のキャロットラぺ。

向こうに見えるのは作り置きしてあった鶏ハムと、牡蠣フライです。牡蠣フライは実は前夜の残りですが、楊枝をさすとあーら不思議、ピンチョスに早変わり。^^

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向うに見えるのは(食べかけですが)真鯛のカルパッチョ。レモンの代わりにゆずをしぼって、酸味おだやかに仕上げました。手前は3種のブルスケッタ。手前からトマトのマリネ、しいたけのオリーブオイル煮、かぼちゃのマッシュを、軽くトーストした薄切りのバゲットにのせています。

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サラダは、「アポロ」のグリークサラダを思い出しながら作ってみました。きゅうりはピーラーで皮をむいて、トマトとともにひと口サイズにカット。ブラックオリーブ、パセリのみじん切りとともにドレッシング(酢・グレープシードオイル・粒マスタード・塩)であえます。

フェタチーズが手に入らなかったのでカッテージチーズで代用し、代わりに塩を強めに挽いて全体に混ぜました。

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少しずつ盛り合せていただきます。

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スープは昨年と同じく、白菜のチャウダー。

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今年もローストターキーを焼きました。3.9kg(約8.7ポンド)のヤングターキーにスタフィングを詰め、160℃のオーブンで4時間強焼きました。(作り方の詳細) ソースは混ぜるだけの簡単なハニーマスタード(レシピ)を用意。

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パンは例年自分で焼きますが、今年はロブションで調達しました。バゲットはブルスケッタに使いましたが、小麦の香り豊かで最高のおいしさ。フォカッチャはそのままいただくにはおいしいですが、甘みが多くて食事向きではなかったかも。

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デザートは例年通りブッシュドノエルを作ったのですが、今年はちょっと失敗。>< 乳脂肪分の少ない生クリームを使ったら、チーズクリームがゆるくできてしまいました。気づいた時に、ティラミスに変更すればよかったかも...でも味はおいしくて好評でした。

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恒例の映画上映会では、今年は家族の希望で「スーサイド・スクワッド」と、公開時に気になっていた「ズートピア」を見ました。「スーサイド~」はなんといっても、マーゴット・ロビー演じるハーレイクインの魅力につきる! 音楽やビジュアルの、ダークでクレイジーな世界観がかっこよかったです。

「ズートピア」はディズニーらしい、ヒューマニティあふれる作品。私はうさぎのジュディに、ヒラリー(クリントン)の姿を重ねて見ていました...。強者の偏見はとかく攻撃の対象になりますが、実は弱者にも偏見がある、ということに気づかされます。

○○が黒幕だったり、強面のゴッドファーザーがネズミだったり、先入観や偏見というテーマをうまく取り入れるしかけはさすが。色っぽいガゼルを演じたのが、シャキーラだったのはうれしいサプライズでした。のりのりの音楽はどれも楽しかったです。

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ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

「ハリー・ポッター」シリーズから派生した、J・K・ローリング原作の新シリーズ第1作「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」(Fantastic Beasts and Where to Find Them)を見ました。

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魔法動物の調査と保護のために世界を旅する魔法動物学者のニュート(エディ・レッドメイン)はニューヨークを訪れます。ところがひょんなことからニュートのトランクが人間のジェイコブ(ダン・フォグラー)のトランクと取り違えられ、トランクに詰め込まれた魔法動物たちが逃げ出してしまいます...。

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ファンタジーはどちらかというと苦手ですが、エディ目当てに見に行ってきました。「ハリー・ポッター」シリーズはあまり見ていないので、人名や独特の用語が聞き慣れなくて、関係性がよくわからないところもありましたが^^; まあまあ楽しめました。

魔法動物をこよなく愛する心優しい動物学者のニュートは、エディにぴったりの役どころ。ちなみにニュートはホグワーツ魔法学校出身で、魔法学校の教科書「幻の動物とその生息地」の編纂者でもあるらしい。

舞台は1920年代のニューヨークで、「ハリー・ポッター」シリーズの70年前という設定になっています。入国審査をすませたニュートが活気あふれるマンハッタンを歩いていると、街中ではデモをやっていて...どうやらここでは魔法使いと人間の関係があまりよくないらしい。

ニュートとトランクを取り違えた縁で親しくなったジェイコブ、米魔法議会で働いているティナ(キャサリン・ウォーターストン)、その妹クイニ―(アリソン・スドル)が、トランクから逃げ出した魔法動物たちを捕獲するために奮闘する...というのがメインストーリーです。

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ヒロインのティナがちょっとおとなしめで華がないかな?と思いましたが、はにかみ屋のニュートには似合っていたでしょうか。表情豊かでコミカルなジェイコブが、狂言回し的な役割を担っていて、いい味を出していました。クイニ―とは”美女と野獣”といった感じですが、なかなかすてきなカップルです。

クイニ―を演じるアリソン・スドルは、これが映画初出演ということですが、本来はファイン・フレンジーという名まえで活躍しているシンガーソングライターだとか。映画で見ると正統派の美人ですが、ミュージシャンの時の彼女も独特の雰囲気があってとっても好み。これからの活躍が楽しみです。

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ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

トム・クルーズ主演のサスペンスアクション、「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」(Jack Reacher: Never Go Back)を見ました。リー・チャイルドの人気小説「ジャック・リーチャー」シリーズより映画化。映画では「アウトロー」に続く第2作です。

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ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)は、彼がかつて所属していた陸軍本部のターナー少佐(コビー・スマルダーズ)と協力し、人身売買に関わる事件を解決します。しかし後日、リーチャーが軍本部にターナーを訪ねるとそこに彼女の姿はなく、スパイ容疑で逮捕されたことを知ります。

ターナーが何らかの陰謀に巻き込まれたに違いないとにらんだリーチャーは、刑務所から彼女を救い出していっしょに逃亡し、真相を明らかにするために奔走しますが...。

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トムが組織にしばられない孤高のヒーローを演じる、「ジャック・リーチャー」シリーズの第2作。前作の”自分の腕と頭脳だけで勝負する硬派なヒーロー”というコンセプトは気に入ったもの、今の時代にはちょっぴり渋すぎるかも...と存続を心配していたので、続編ができてほっとしました。^^

前作に比べると、ハードボイルド色はだいぶ抑えられていて、リーチャーのキャラクターがマイルドになったような気がします。それだけに他のアクション映画との差異はあまり際立たず、新鮮さはなくなってしまった気がしますが、王道を行くエンターテイメントとして、私はとっても楽しめました。

なんといってもヒロインのターナーを演じるコビー・スマルダーズが、かっこいい! 知的で清潔感のある美女で、身体能力も抜群。特にラストの軍服姿の凛々しさにしびれました。リーチャーとは互いに全幅の信頼をおいているバディといった関係で、恋愛がからまないのも好印象。

そして今回は、リーチャーに娘がいたことが発覚? 最初は人生に投げやりになっているように見えた彼女ですが、リーチャーやターナーと行動を共にしていくうちに、だんだん魅力的でかわいい女の子になっていきます。彼女の成長物語にもなっていて、さわやかなエンディングに好感がもてました。

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”ジャック・リーチャー”はどちらかというと昔ながらの泥くさいヒーローをイメージしていると思いきや、トムが演じると、女性を尊重し、そして優しい、今の時代にふさわしい新しいヒーローに見えてきます。

そして、電話やコンピュータ、クレジットカードといった現代の便利なツールから居場所を特定されてしまう展開を見ると、アナログであることが実は逆手をとって、最強の武器といえるかも...とふと感じました。

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インフェルノ

「ダ・ヴィンチ・コード」「天使と悪魔」に続く、ダン・ブラウン原作のラングドン教授シリーズ第3作、「インフェルノ」(Inferno)を見ました。
run インフェルノ 公式サイト

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ラングドン教授(トム・ハンクス)が目を覚ますと、そこはフィレンツェの病院。彼は何者かに頭部を襲撃され、数日間の記憶を失っていました。そこに突然殺し屋がやってきて、ラングドンの病室に近づきます。担当医のシエナ(フェリシティ・ジョーンズ)は、とっさの判断でラングドンを連れ出し、いっしょに病院から逃亡しますが...。

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記憶喪失のラングドン教授をどこまでも追う、警官姿の非情な女殺し屋がかっこいい。スリリングなオープニングにちょっぴりターミネーター2を思い出しながら、一気に物語の世界に引き込まれました。

ラングドンのポケットには見覚えのない小型のプロジェクターが入っていて、映し出されるダンテの神曲をモチーフにした「地獄篇」には、狂気の生物学者ゾブリスト(ベン・フォスター)による、人類の半数をウィルスで滅ぼそうとする計画の暗号が隠されていました...。

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これまでの2作と同じく、長編小説を2時間の映画にぎゅっと縮めているので、少々あわただしいのは承知の上、ハリウッド映画ならではの迫力ある映像表現や、スピーディな展開を楽しみました。

ラングドンがヒロインとともに、美しいヨーロッパの古都を縦横無尽に駆け巡るのもこのシリーズの魅力。今回はフィレンツェを中心に、ベネツィア、イスタンブールと舞台が移り、ラングドンとともにスリリングな旅の気分を満喫しました。

隠し扉に隠し部屋、街中も迷路のようにつながっていて、お話はフィクションではあるけれど、史実や事実もさりげなく織り込まれてて、見ている方もイマジネーションの迷宮の中で、ころころと転がされている気分になります。

あっと驚く展開もありましたが、ラストの方は原作から少し変えて、原作を読んでいても読んでいなくても楽しめるように?作られていたようです。映画ではじっくり考える暇なくお話が進んでしまうので、あとからゆっくり読んで反芻したいと思います。

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奇蹟がくれた数式

インドの天才数学者ラマヌジャンと、彼を見出したイギリス人数学者G・H・ハーディの友情を描いた、実話に基づく伝記ドラマ、「奇蹟がくれた数式」(The Man Who Knew Infinity)を見ました。

pen 奇蹟がくれた数式 公式サイト

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1914年。インドで独学で数学を研究していたラマヌジャン(デヴ・パテル)は、周囲の勧めでイギリスの数学者たちに手紙を書き送ります。誰も気に留めない中、ただひとりケンブリッジ大学の数学者ハーディ(ジェレミー・アイアンズ)は、そこに書かれていた数々の予想に驚愕し、まもなくラマヌジャンを招聘します。

胸躍らせてイギリスに渡り、ニュートンも学んだトリニティ・カレッジの門をくぐったラマヌジャン。しかし正規の大学教育を受けていないインドから来た若者を、他の教授たちは受け入れようとせず、また第1次世界大戦もはじまって、ラマヌジャンは心労と栄養不足から病に倒れてしまいます...。

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以前、数学者 藤原正彦さんの「遥かなるケンブリッジ」を読んで、今なお階級社会の残るイギリスの象牙の塔で、研究生活を送ることのたいへんさを多少なりとも理解しましたが、ラマヌジャンがイギリスに渡ったのは今から100年前。

伝統と格式を重んじるケンブリッジでの研究生活はもちろん、日常生活も今とはくらべものにならないくらいに不自由で厳しいものだったろうことは想像に難くありません。そういえば、夏目漱石がイギリス留学したのもちょうどこの頃だったでしょうか。

映画を見て、ケンブリッジに当時ラマヌジャン以外にもインドの研究者がいたことを知って驚きましたが、周りに家族や同じ境遇の仲間たちがいて励まし合うことができたら、ラマヌジャンのイギリス生活はずいぶん違ったものになっただろうな...と想像しました。

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数学は文化の違いの影響をそれほど受けないユニバーサルな学問ですが、ラマヌジャンとハーディ教授とではアプローチの方法がまるで違いました。ラマヌジャンにとって真理とはただそこに存在するもの。彼は直観によって得た自らの発見を、そのまま発表することしか頭になかったのです。

ハーディ教授は、発見はそのままでは”思いつき”でしかないとして、証明によって論理的に裏付けることの必要性を説きますが、ラマヌジャンにとって真理とは神から与えられた揺るぎないもので、証明することは時間の無駄としか思えません。

たしかに映画に登場した素数や分割数に関する公式を、証明によって導くことは、気が遠くなるほどの膨大な計算をしなければならなかったはずで、まだコンピュータが存在しなかった当時では、相当な忍耐が必要だったことでしょう。

結局、ラマヌジャンの数々の発見を、ハーディが代わって証明していくことで、ようやくラマヌジャンの業績が認められるようになるのです。

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ハーディがラマヌジャンに証明を強いなかったのは、そうすることで彼の独創性が失われることを、何より恐れたからだといいます。

”もし彼がもっと若い頃に発見され、馴らされていたら、おそらくもっと偉大な数学者になって、新しい発見やより重要な発見をしただろう。一方、彼はそれほど「ラマヌジャン的」でなくなり、ヨーロッパの教授風になって、得るものより失うもののほうが大きかったかもしれない。”(Wikipediaより)

ハーディのこのことばこそが、ラマルジャンへの最高の賛辞である、と心打たれました。

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パラダイス・ナウ / 歌声にのった少年

オマールの壁」のハニ・アブ・アサド監督による、パレスチナの今を描いた2作品です。

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パラダイス・ナウ (Paradise Now)(2005)

パレスチナに住むサイードとハーレドは、自爆テロの実行役に選ばれます。取り外しのできない爆弾を体に巻き付け、正装し、メッセージビデオを撮った二人は、仲間に車で送られてテルアビブに向かいますが、途中でイスラエル軍に捕まりそうになり、逃げるうちにサイードは仲間とはぐれてしまいます...。

6月に「オマールの壁」を見て衝撃を受け、すぐにこの作品のDVDを借りました。「オマールの壁」でパレスチナの現状についての予備知識を得ていたので、彼らが抱えている問題や取り巻く状況について、すんなりと理解して見ることができてよかったです。

サイードは、帰郷した独立運動の英雄の娘スーハと会い、親しくなります。ヨーロッパで教育を受けたスーハは、暴力以外にパレスチナが訴える道があるはずだと力説しますが、長年、先の見えない貧困と不自由の中にいるサイードには、空虚な理想論としか思えません。

また、父がかつて密告者として罰せられたことは、サイードにとって消えることのない大きな罪となっていました。彼が自爆テロに向かう途中で仲間とはぐれたのは偶然ですが、そのことで自分も裏切り者とみなされることを恐れ、ただひとり、テルアビブへと向かうのです。

サイードたちが住む瓦礫の貧しいパレスチナの町並みと、最後に登場する豊かで近代的なイスラエルの大都市テルアビブ。そのあまりの落差に愕然としました。メッセージビデオを撮るシーンには、シリアスな中にも滑稽さがあり、アサド監督らしさを感じました。

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歌声にのった少年 (Ya Tayr El Tayer / The Idol)(2015)

パレスチナ・ガザ地区に住むムハンマド少年と、活発な姉ヌールは音楽が大好き。仲間とバンドを組み、おんぼろ楽器で演奏活動をしていますが、ヌールは、ムハンマドがいつか立派な歌手になると信じていました。しかしヌールは腎臓病に侵され、手術を受けられずに亡くなってしまいます。

青年になったムハンマドは、”スターになって世界を変える”という姉の夢をかなえるために、オーディション番組「アラブ・アイドル」に出ることを決意。パスポートやビザをやりくりしたムハンマドは、なんとかエジプトに入国し、カイロの会場にたどり着きますが...。

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アサド監督の最新作が公開されていると知って、遅ればせながら見に行ってきました。パレスチナ・ガザ地区出身の歌手、ムハンマド・アッサーフのサクセスストーリーを映画化。パレスチナの厳しい現実をさりげなく織り込みながらも、希望が与えられる作品でした。

前半はムハンマドの少年時代の物語。音楽が好きで、大きな夢があって、ひたむきにたくましく生きる子どもたちがとにかくかわいい。時にスリリングなエピソードを交えつつ、物語はテンポよく進みますが、その中にも姉弟愛がしっかりと描かれていて、のちのムハンマドの決意が自然な思いとして受け止められました。

スカイプでオーディションを受けようとしたらイスラエルに電気を止められ、手に入れた発電機は壊れてしまう。エジプトまで行くことを決意するも、パレスチナを出るのも命がけ。パスポート、ビザ、チケット...いくつもの難関を乗り越え、オーディションを受けるまでがまるでサバイバルゲームのようでした。

ムハンマドが予選を勝ち抜いていく展開は、結果が予想できるだけに少々冗長に感じられましたが、祖国の期待を一身に背負い、重圧に押しつぶされそうになりながらも、果敢にチャレンジしていく姿に心を打たれました。

原題の Ya Tayr El Tayer はムハンマドが最終戦で歌った歌で、英語では Oh Flying Bird という意味らしい。故郷への思いを切々と歌った歌は、どこか日本の演歌にも通じるものを感じました。

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THE APOLLO (アポロ)

銀座東急プラザ最上階にこの春オープンした、オーストラリア発のモダンギリシャ料理レストラン THE APOLLO (アポロ)にお昼を食べに行きました。

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(HPよりお借りしました)

若い頃にギリシャを訪れた時、お料理がどれも口に合わなくて困った経験があったので、ちょっぴり心配していたものの、こちらのお店には好奇心を刺激され、オープンした時から気になっていました。

ギリシャ料理をフィーチャーしたモダンで洗練されたオーストラリア料理は、どれもおいしくて大感激。白を基調としたスタイリッシュな空間と遊び心のあるお料理に、日常を離れたわくわく感を楽しみました。

お料理はギリシャの伝統的なスタイルでサーヴされ、ひとつのお料理をシェアしていただくようになっています。食前酒、前菜、メインディッシュ、サイドディッシュ、デザート、コーヒーがつくコースをいただきました。

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前菜は3品。こちらはトマト、きゅうり、カラマタオリーブをドレッシングであえ、塩味の効いたフェタチーズをのせたグリークサラダ。食べる時にはフェタチーズを崩し、全体に混ぜていただきます。

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イエローえんどう豆のディップ&アポロオリジナルのピタブレッド。ピタブレッドは小さなピッツァボックスに入れてサーヴされます。ディップがとってもおいしくて、たっぷりつけていただきました。イエローえんどう豆と聞くと、メンデルの法則を思い出します。^^

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食前酒にいただいた”ペアセフォーネ”というカクテルがおいしかった! ウォッカベースのカクテルにほんのりパクチーがアクセントになっていて、きりっとスタイリッシュな味わいでした。

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メインディッシュには、豚肩ロース肉のグリルをいただきました。お肉の扱いの上手さは、さすがオーストラリア。表面は香ばしく、中はほろりと柔らかかったです。

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サイドディッシュにアスパラガスとフェタチーズ。

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デザートのレモンパイは、すごくユニークでした。レモンカードにクッキークラムをのせ、その上にメレンゲをしぼりだしてベイクしています。伝統的なレモンパイよりヘルシーで、さっぱりとおいしくいただきました。

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ギリシャ料理の話をしたら、知人からおもしろい映画を教えてもらいました。

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マイ・ビッグ・ファット・ウェディング (My Big Fat Greek Wedding)

シカゴに住むギリシャ系アメリカ人の結婚騒動を描いた、2002年のロマンティック・コメディ。”女に学問はいらない。ギリシャ人と結婚するのが一番”という頑固親父のもとで育ったヒロインが、自分で人生を切り開き、文化の壁を乗り越えて結婚するまでが、ユーモアたっぷりに描かれます。

オリジナルは、ヒロインを演じたニア・ヴァルダロスによる、自身のエピソードをもとにした一人舞台。それがトム・ハンクスの妻で同じくギリシャ系のリタ・ウィルソンの目に留まり、映画化への運びとなったそうです。大家族の煩わしさとともに、絆の強さと愛情の深さが伝わってきて、温かい気持ちになる作品でした。

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ジェイソン・ボーン

マット・デイモン主演×ポール・グリーングラス監督のスパイアクション、「ボーン」シリーズ最新作、「ジェイソン・ボーン」(Jason Bourne)を見ました。
run ジェイソン・ボーン 公式サイト

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記憶を消され、CIAの暗殺者として育成されたジェイソン・ボーン(マット・デイモン)は、組織を告発したあと姿を消し、現在はアテネでストリートファイターとしてひっそりと暮していました。

一方、ボーンの元同僚ニッキー(ジュリア・スタイルズ)がアイスランドのレイキャビクからCIAのシステムに侵入していることを知ったCIA捜査官のヘザー・リー(アリシア・ヴィキャンデル)は、ボーンと接触しようとするニッキーを追いますが...。

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9年ぶりとなるマット・デイモン&グリーングラス監督によるボーン最新作を楽しみにしていましたが、期待通りにおもしろかった! 最初から最後までのノンストップアクションとスリリングな展開に、終わった時にはふ~っと疲れてしまいましたが、心地よい満足感を味わいました。

グリーングラス監督の甘さを排したハードボイルドな展開は大好き。マット・デイモンのサイボーグのような強さと、内に悲しみを秘めた演技にも、ぐっときてしまいます。過去3部作とスピンオフの「ボーン・レガシー」を見てなくても(忘れていても?)楽しめるように、うまく作ってありましたね。

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ボーンを追う若き野心家のCIA捜査官リーに、今売れに売れているアリシア・ヴィキャンデル。彼女のボスのCIA長官デューイに、BOSSのトミー・リー・ジョーンズ。(ただこれが言いたかっただけ^^;)

リーは、ボーンをCIAに呼び戻すようデューイに働きかけますが、それはボーンを信頼しているからか、あるいは自分の野心を満たすためか...。彼女はデューイに対して明らかに不信感を見せていましたが、あれだけ憎しみを募らせるのには、何か特別な理由があるのかな?と深読みしてしまいました。^^

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デューイから託された、ボーンをねらう凄腕の暗殺者にヴァンサン・カッセル。ボーンとは互いに少なからず因縁がある間柄で、2人の駆け引きにはらはらしました。ヴァンサン・カッセルは、私の中ではアクションのイメージがあまりなかったので、こういうハードな殺し屋役は新鮮でした。

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世界を情報監視下に置こうと目論むCIAが、パートナーに選んだITカンパニー社長にリズ・アーメッド。どこかで見たような...と思ったら、「ナイトクローラー」に出ていた助手の男の子でした。彼は「ローグ・ワン/スターウォーズストーリー」にもキャスティングされている注目株の俳優さんですね。

Facebookの若きCEOマーク・ザッカーバーグと、FBIに個人情報提供協力を拒否したAppleのクックCEOをあわせたようなキャラクターでした。リーとは大学の同窓という設定で、感覚的にも近そうなので、今後彼女と関わっていくようになるのかな?

アリシアが演じる冷徹なリーもチャーミングでしたが、そのさらに上手(うわて)をいくボーン...というラストににやりでした。続編も楽しみです。

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余談ですが...レイキャビクでのハッキングのシーンで、停電してハッカーたちがざわめく中で一瞬日本語が聞こえたことにびっくり。心理学ではカクテルパーティ効果といいますが、人間の脳の能力ってすごいですね。

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