My Favorite Movies & Books in 2016
2016年をふりかえって...昨年見た新作映画、旧作映画、読んだ本の中から、特に心に残った作品を書き留めておきます。
新作映画
今年選んだ3作品は、偶然ですがどれも私にとって訪れたことのない、あまりなじみのない国の作品になりました。少々粗削りながら、その国ならではの背景や事情が伝わってきて、未知の世界へと誘われました。感想の詳細はリンク先をご参照ください。
イスラエルに分断されるパレスチナの現実を描いた、ハニ・アブ・アサド監督の作品。テーマはシリアスながら、サスペンスやロマンスを交え、エンターテイメントとしても引き込まれました。この後見た、同監督の「パラダイス・ナウ」「歌声にのった少年」も心に残る作品でした。
シング・ストリート 未来へのうた (Sing Street)
「ブルックリン」「フラワーショウ!」など昨年はアイリッシュ映画の当たり年でした。本作はアイルランドのダブリンを舞台に、80年代のブリティッシュサウンドにのせて描いた青春ドラマ。ジョン・カーニー監督の原点ともいうべき作品で、主人公たちの青りんごのようなみずみずしさに、心をぎゅっとわしづかみにされました。
ストリート・オーケストラ (Tudo Que Aprendemos Juntos / The Violin Teacher)
ブラジルのサンパウロを舞台に、スラム街の生徒たちと挫折を知ったヴァイオリニストの、音楽を通じた成長を描いたヒューマンドラマです。過酷な環境の中で生きる子どもたちに、表現する喜びや心の安定を与える、音楽の力に感動しました。バッハとサンバのコラボレーションも楽しかった。
旧作映画
あまり記事にできませんでしたが、旧作映画もたくさん見ました。その中から3作品をピックアップします。どれも主演俳優の演技に圧倒された作品です。(リンクからallcinemaのサイトに飛びます。)
蜘蛛女のキス (Kiss of the Spider Woman)
久しぶりに再見して、新鮮な感動を覚えました。ブエノスアイレスの刑務所を舞台に、同性愛者モリーナ(ウィリアム・ハート)と政治活動家バレンティン(ラウル・ジュリア)の愛を描いた作品。私の中ではモリーナが、遠藤周作の小説に登場するガストンの姿と重なって見えました。
バレンティンへの愛のために命を落とし、ごみ置き場に捨てられるモリーナ。そしてラストの奇跡(と私は思った)へと続く一連の場面はイエスの物語を思い出しました。プイグの原作もすばらしかったですが、ラストは味気ない警察の調書となっているので、最後の美しい映像がなおのこと心に残りました。
メリル・ストリープ主演のホロコーストの悲劇を描いた物語。ポーランド語、ドイツ語、ポーランド訛りの英語を巧みにあやつる、ストリープのすさまじい演技に圧倒されました。タイトルの意味をずっと考えながら見ていたので...明かされた想像を超える衝撃的な事実に打ちのめされました。
プレイス・イン・ザ・ハート (Places in the Heart)
30年代のアメリカ南部を舞台にした、サリー・フィールド主演の細腕奮闘物語。リアルアメリカ、リアルサウスが描かれていて、懐かしさもあり、心揺さぶられる作品でした。盲目の下宿人(ジョン・マルコヴィッチ)がエドナ(フィールド)に容姿を尋ねるシーンが大好きです。
本
こちらもほとんど記事にできませんでしたが、多くのいい作品と出会いました。一番のお気に入りはこちら。(リンクからAmazonサイトに飛びます)
東理夫 「アメリカは食べる。 アメリカ食文化の謎をめぐる旅」
エッセイストでブルーグラス奏者、テネシー州名誉市民でもある著者によるアメリカ食文化論。といっても高所から語るのではなく、その土地に根を張って生きる生活者の目線で書かれていて、アメリカの広い国土をドライヴ旅行しているような気分になれる楽しい本です。
アメリカ料理の特徴は、localizationとstandardization(と私は思った)。移民たちが手に入る材料でなんとか工夫して作った故郷の料理が独自の進化を遂げ、広い国土に住む誰もが安心してありつける食べ物として、缶詰や冷凍食品、チェーンレストランが発展した。それが今のアメリカの食につながっているのだと思いました。
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