My Favorite Movies & Books in 2016

2016年をふりかえって...昨年見た新作映画、旧作映画、読んだ本の中から、特に心に残った作品を書き留めておきます。

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今年選んだ3作品は、偶然ですがどれも私にとって訪れたことのない、あまりなじみのない国の作品になりました。少々粗削りながら、その国ならではの背景や事情が伝わってきて、未知の世界へと誘われました。感想の詳細はリンク先をご参照ください。

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オマールの壁 (Omar)

イスラエルに分断されるパレスチナの現実を描いた、ハニ・アブ・アサド監督の作品。テーマはシリアスながら、サスペンスやロマンスを交え、エンターテイメントとしても引き込まれました。この後見た、同監督の「パラダイス・ナウ」「歌声にのった少年」も心に残る作品でした。

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シング・ストリート 未来へのうた (Sing Street)

ブルックリン」「フラワーショウ!」など昨年はアイリッシュ映画の当たり年でした。本作はアイルランドのダブリンを舞台に、80年代のブリティッシュサウンドにのせて描いた青春ドラマ。ジョン・カーニー監督の原点ともいうべき作品で、主人公たちの青りんごのようなみずみずしさに、心をぎゅっとわしづかみにされました。

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ストリート・オーケストラ (Tudo Que Aprendemos Juntos / The Violin Teacher)

ブラジルのサンパウロを舞台に、スラム街の生徒たちと挫折を知ったヴァイオリニストの、音楽を通じた成長を描いたヒューマンドラマです。過酷な環境の中で生きる子どもたちに、表現する喜びや心の安定を与える、音楽の力に感動しました。バッハとサンバのコラボレーションも楽しかった。

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あまり記事にできませんでしたが、旧作映画もたくさん見ました。その中から3作品をピックアップします。どれも主演俳優の演技に圧倒された作品です。(リンクからallcinemaのサイトに飛びます。)

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蜘蛛女のキス (Kiss of the Spider Woman)

久しぶりに再見して、新鮮な感動を覚えました。ブエノスアイレスの刑務所を舞台に、同性愛者モリーナ(ウィリアム・ハート)と政治活動家バレンティン(ラウル・ジュリア)の愛を描いた作品。私の中ではモリーナが、遠藤周作の小説に登場するガストンの姿と重なって見えました。

バレンティンへの愛のために命を落とし、ごみ置き場に捨てられるモリーナ。そしてラストの奇跡(と私は思った)へと続く一連の場面はイエスの物語を思い出しました。プイグの原作もすばらしかったですが、ラストは味気ない警察の調書となっているので、最後の美しい映像がなおのこと心に残りました。

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ソフィーの選択 (Sophie's Choice)

メリル・ストリープ主演のホロコーストの悲劇を描いた物語。ポーランド語、ドイツ語、ポーランド訛りの英語を巧みにあやつる、ストリープのすさまじい演技に圧倒されました。タイトルの意味をずっと考えながら見ていたので...明かされた想像を超える衝撃的な事実に打ちのめされました。

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プレイス・イン・ザ・ハート (Places in the Heart)

30年代のアメリカ南部を舞台にした、サリー・フィールド主演の細腕奮闘物語。リアルアメリカ、リアルサウスが描かれていて、懐かしさもあり、心揺さぶられる作品でした。盲目の下宿人(ジョン・マルコヴィッチ)がエドナ(フィールド)に容姿を尋ねるシーンが大好きです。

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こちらもほとんど記事にできませんでしたが、多くのいい作品と出会いました。一番のお気に入りはこちら。(リンクからAmazonサイトに飛びます)

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東理夫 「アメリカは食べる。 アメリカ食文化の謎をめぐる旅」

エッセイストでブルーグラス奏者、テネシー州名誉市民でもある著者によるアメリカ食文化論。といっても高所から語るのではなく、その土地に根を張って生きる生活者の目線で書かれていて、アメリカの広い国土をドライヴ旅行しているような気分になれる楽しい本です。

アメリカ料理の特徴は、localizationとstandardization(と私は思った)。移民たちが手に入る材料でなんとか工夫して作った故郷の料理が独自の進化を遂げ、広い国土に住む誰もが安心してありつける食べ物として、缶詰や冷凍食品、チェーンレストランが発展した。それが今のアメリカの食につながっているのだと思いました。

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新国立競技場問題の真実

遅ればせながら3月に読んだ本から...。

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森本智之 「新国立競技場問題の真実 無責任国家・日本の縮図」

東京新聞の記者の方が取材を続け、2015年末に出版された本です。新国立競技場のデザインがザハ・ハディドさんに決まってから、2015年7月に突然白紙撤回されるまでを追っています。

2016年オリンピックの誘致では東京湾岸に新スタジアムを建設するという計画でしたが、津波の危険が取りざたされ、2020年の誘致では神宮外苑の国立競技場を建替えるという計画に変更されました。

神宮外苑の絵画館周辺の建物は、景観保全のために高さ20mまでという厳しい建築基準が設けられていました。しかしこの場所に新競技場を建てるために、いつの間にか高さ75mまでと規制が緩和されていたことをこの本で初めて知りました。すべて誘致ありきで法整備が進められていたのです。

ザハさんのデザインが決まった時、莫大な建築費と、景観と環境破壊の両面から大バッシングがありましたが、ザハさんは応募要項に沿って設計したにすぎません。そもそも都心の限られた土地に、これだけ大きなスタジアムを建設しようという計画自体、無理があったのです。

また、オリンピックのメインスタジアムが本来の目的なのに、サッカーやラグビーの競技場としての設備や、コンサート会場のための開閉式の屋根など、各界からの要望をすべて盛り込むうちに、要求スペックはどんどん高くなり、一方でオリンピックに必要な陸上用のサブトラックがないという、本末転倒なことも起こっていました。

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外苑の銀杏並木 (2010/11)

報道では、ザハさんが悪者のように扱われていましたが、彼女はこれまで大きなプロジェクトに何度も関わっている世界的建築家であり、予算やスペックについては、いつでも相談に応じ、デザインを変更できると日本側に申し入れていました。

実際、(ザハさんが設計した)ロンドン・オリンピックのアクアティクス・センターも、後からコストを抑える必要が生じ、主催者からの要望に合わせて、オリンピック後は座席数を縮小できるよう、デザインを変更しているのです。

日本の新国立の場合、何が一番問題だったのかといえば、責任者の不在という一言につきます。著者が関係者に取材して感じたのは、誰の口からも「決まったことだからやらなくては」ということばが聞かれたことだそうです。責任者不在のまま突き進み、うまくいかないとデザインのせいにする...そんな構図が見えました。

白紙撤回されたものの、再コンペでは施工業者と組んで応募しなければならなかったために、多くの建築家がエントリーをあきらめるしかありませんでした。結局、数少ない応募作品の中から決めざるを得ず、最終的に決まった案には、肝心の聖火台がなかったことも、その後問題になりました。

そもそも旧国立競技場を解体する必要があったのか。新しい競技場は必要なのか。次の世代に借金を残し、タイトなスケジュールで難工事を進めるよりも、(味の素スタジアムなど)既存の競技場を上手に生かした方が、今の時代にふさわしいオリンピックになるのではないか。そんな気がしています。

cherry ザハ・ハディド展 @東京オペラシティ アートギャラリー (2014/10)

ちょうどこの本を読んで間もなくの3月31日、ザハ・ハディドさんがフロリダ出張中、急病でお亡くなりになりました。今後、日本にザハ建築が建つことは二度とないのだな...と思うと残念でなりません。ご冥福をお祈りします。

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読書記録 2016 冬

最近読んだ本の中から、まとめて感想を書き留めておきます。

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シェリル・ストレイド 「わたしに会うまでの1600キロ」

リース・ウィザースプーン主演の同名映画の原作。映画もよかったですが、原作も引き込まれる作品でした。映画はトレイルの過酷さや風景が視覚的に伝わってきましたが、映像だけでは描写しきれない主人公の細やかな心の動きが、本を読むことでより深く理解できてよかったです。

特に母親や家族、夫に対しての愛情だけでは語れない確執など、本を読むことによって、映画のシーンの意味するところがようやく納得できたような気がします。シェリルにとって2作目となるこの作品がベストセラーとなり、作家になるという夢が実現できてほんとうによかったと思いました。

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馬場錬成 「大村智 2億人を病魔から守った化学者」

昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智さんの伝記。元読売新聞記者の方が取材を続け、2012年に出版された本です。大村さんの研究者としての偉業は計り知れないものがありますが、経営者、教育者としてもすばらしい功績を挙げられていることを、この本を読んで初めて知りました。

アメリカでの2年の研究生活の間に、アメリカの大学や研究者、製薬会社と信頼関係を築き、特許契約を結び、早くから産学共同研究を推し進めたこと、存続の危機にあった北里研究所を再建したこと等々、視界の広さと先見性、実行力に感動しました。

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羽田圭介 「スクラップ・アンド・ビルド」

昨年の芥川賞受賞作。孫が祖父の死にたい願望をかなえようとするサスペンスタッチの作品だと思ったら、全然違いました。^^; 軽度の認知症の祖父と求職中の孫、現代の日本のどこにでもいそうな家族の姿が、深刻すぎず、飄々とした筆致で描かれています。孫と祖父のやりとりが、なかなかいい味出ていました。

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スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 「戦争は女の顔をしていない」

昨年ノーベル文学賞を受賞したアレクシエーヴィチのデビュー作。「チェルノブイリの祈り」同様、こちらは第二次世界大戦に従軍した女性たちへのインタビュー集です。以前、日本のひめゆりたちの話にも衝撃を受けましたが、ソ連では看護婦のみならず武器をもって戦った女性の兵士たちがいたことに驚きました。

戦争で活躍すると勲章をもらい、男性は英雄になりますが、女性は「人を殺した女」という目で見られるため復員後もひた隠しにしたこと、ましてや負傷すれば結婚は望むべくもなかったこと。戦場における女性ならではの苦悩や悲しみなど、ふつうの言葉で語られるひとことひとことが心にしみました。

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森本あんり 「反知性主義 アメリカが生んだ『熱病』の正体」

昨年頃から日本でもよく聞かれるようになった反知性主義ですが、誤用されていることが多いそうです。アメリカでは1952年のスティーヴンソンvsアイゼンハワーの大統領選挙で登場したことばですが、最近のトランプ氏の台頭に通じるものを感じて、興味を持ちました。

反知性主義はアメリカのプロテスタントにおけるリバイバルの中で生まれたものだといいます。私自身、日本とアメリカの信仰生活を比べてみて、アメリカではキリスト教が空気のような存在で、むしろ日本のクリスチャンの方がストイックだと感じていたので、本書を読んですとんと腑に落ちるものを感じました。

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村上春樹 「ラオスにいったい何があるというんですか?」

近年いくつかの雑誌に掲載された紀行文を集めた短編集。リラックスしたカジュアルな文章で書かれていて、ファンには魅力的と思いますが、あまり目新しい視点はなく、私にはやや物足りなかったです。一番印象に残ったのはタイトルにもあるラオスの章。特に現地の民族音楽の描写が生き生きとして心に残りました。

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My Favorite Movies & Books in 2015

2015年をふりかえって...昨年見た新作映画、旧作映画、読んだ本の中から、特に心に残った作品を書き留めておきます。

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アメリカン・スナイパー」や「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」など、心に響く作品にたくさん出会いましたが、マイナー上映ながら、これ好きだな~とうならされた3作品をピックアップしました。感想の詳細はリンク先をご参照ください。

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ジャッジ 裁かれる判事 (The Judge)

法廷サスペンスであり、父子の愛の物語。構成や物語の運びがみごとで、ロバート・ダウニー・Jr.とロバート・デュバル、2人のロバートの演技に魅せられました。現代版「エデンの東」ともいうべき、深々とした余韻が残る作品です。

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グッド・ライ~いちばん優しい嘘~ (The Good Lie)

シリア、リビア、ロヒンギャなど、難民問題が世界の課題となった昨年。この作品ではスーダン内戦と、アメリカに移住することになった難民の若者たちが、真摯に、愛情をもって描かれています。ロストボーイズを演じるのは元スーダン難民の若者たち。彼らを支えるリース・ウィザースプーンもとてもよかったです。

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アメリカン・ドリーマー 理想の代償 (A Most Violent Year)

派手さはないですが、「ゴッドファーザー」や「ギャング・オブ・ニューヨーク」に連なる移民の物語だと思いました。野心家の夫婦が生き残りをかけて決断した、善と悪の絶妙なさじ加減のリアリティ。オスカー・アイザックとジェシカ・チャステインの息がぴったりあった演技に魅せられました。

また、昨年注目した俳優さんとして、「グッド・ライ~」「わたしに会うまでの1600キロ」のリース・ウィザースプーン、これからの活躍を期待して「コードネーム U.N.C.L.E.」のアリシア・ヴィキャンデルを挙げておきます。

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旧作映画はあまり記事にできませんでしたが、劇場で見逃した作品や、関連作品など幅広く見て、新たな出会いもありました。特に心に残った作品はこちら。

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少年と自転車 (Le gamin au vélo / The Kid with a Bike)

ベルギーのダルテンヌ兄弟監督による、育児放棄と少年犯罪を題材にした2011年のヒューマンドラマ。父親の愛を求め、拒否されることを認めまいとする少年の姿に、胸が締めつけられましたが、彼に里親として全面の愛を注ぐサマンサ(セシル・ドゥ・フランス)の存在に救われました。

サンドラの週末」がきっかけで、ダルテンヌ兄弟作品を少しずつ見ていますが、シビアな世界を見つめる静謐なまなざしに引き込まれます。あと、後日改めて記事にしたいと思っていますが、カナダの若き才能、グザヴィエ・ドラン監督に魅せられています。

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読んだ本は手帳にメモだけしていましたが、感想がほとんど書けなかったのが心残り。今年はいい作品に出会ったら、一言でも感想を書き残していきたいです。昨年一番衝撃を受けたのはこの作品。

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スベトラーナ・アレクシエービッチ 「チェルノブイリの祈り」

昨年ノーベル文学賞を受賞したウクライナの作家アレクシエービッチによる、チェルノブイリ原発事故被災者たちへのインタビュー集。冒頭の、最初に事故現場に駆けつけた消防士の妻の話から、もう打ちのめされました。これが過去の遠い国の話ではなく、今まさに私たちが直面している問題なのだという事実に心が震えます。

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全体的に硬めの作品ばかりのラインナップになってしまいましたがsweat01 明るい、軽いタッチの作品にも気に入ったものがたくさんあります。今年もたくさんの感動に出会えますように。

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ペンギン夫婦の作り方

先週、家族と石垣島に旅行に行ってきました。旅行については、後日改めて書き記したいと思っていますが、旅行に行く直前に、偶然この映画のことを知って見たのでご紹介させていただきますね。2012年の作品です。

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ペンギン夫婦の作り方

原作はこちらです。行きの飛行機の中で読みました。

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辺銀愛理 「ペンギン夫婦がつくった石垣島ラー油のはなし

数年前に”食べるラー油”が爆発的にヒットしましたが、それより10年前に作られ、のちのブームのきっかけとなったのが、この「石垣島ラー油」だそうです。すべて手作りなので生産量が少なく、なかなか手に入らない幻のラー油ともよばれているそうです。

ラー油を作ったのは、石垣島在住の辺銀暁峰さん、愛理さんご夫婦。東京出身で編集者をしていた愛理さんと中国人カメラマンの暁峰さんは仕事を通じて出会い、のちに国際結婚します。自然が好きでそれまで南極やモンゴルを旅してきた二人は、石垣島が気に入り、移住することを決意します。

お料理が大好きで、ラー油作りが趣味という二人は、島唐辛子やピパーチェ(島胡椒)など、島の食材を使ってラー油を作り、初めてフリーマーケットに出店しますが、まったく売れませんでした。しかし知り合いに配ったり、アンテナショップに置いてもらったりして、少しずつ売れるようになります。

そして2000年冬、雑誌「モノ・マガジン」で紹介されたことがきっかけで大ブレイク。雑誌やテレビなど、さまざまなメディアに取り上げられるようになり、全国から予約が殺到する人気のラー油となりました。

お二人のすごいところは、そうして売れるようになってからも、島の食材にこだわり、ラー油作りからラベル張りまで、今もなお手作りを貫いていること。楽しくなければ意味がない、と品質を落とさず、大量生産に走らず、無理のない範囲で作り続けているそうです。

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ところで...お二人の苗字の辺銀(ぺんぎん)は、なんと本名です。夫の暁峰さんが日本に帰化する際、中国名の代わりに好きな日本名をつけていいことになり、お二人の大好きな”ペンギン”に決めたのだとか。同じくペンギン好きな私としては、なんともうらやましくなりました。^^

本は妻の愛理さんが書いていますが、辺銀夫婦を支えてこられた島の人たちのメッセージもたくさん寄せられています。印象に残ったのは、本土でうまくいかなくて島に移住する人たちはいるけれど、沖縄はそんなに甘くないということ。愛理さんはどこでもやっていくだけの力があったから成功したのだと思いました。

愛理さんのゆるゆるとした文章から、辺銀夫婦と彼らを取り巻く島の人たち、石垣島、八重山の魅力がいっぱい伝わってきました。

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映画では、愛理さんを小池栄子さん、暁峰さんを台湾の人気俳優 ワン・チュアンイー(王 傳一)さんが演じています。ストーリーはかなり脚色されていますが、ポジティブでバイタリティがあり、おおらかで温かさのある小池栄子さんはぴったりのキャスティング。優しくて天然キャラのワン・チュアンイーさんもいい味を出していました。

そして出てくるお料理のなんておいしそうなこと! 映画のお料理はすべて、辺銀夫婦が作っているそうです。そして石垣島の素朴な風景が天国のように美しく、旅への期待が高まりました。

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「本当にあった奇跡のサバイバル60」

ナショナルジオグラフィック編集の「本当にあった奇跡のサバイバル60」を読みました。

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登山事故や自然災害、難破、飛行機墜落、誘拐といった絶望的状況に陥るも、強い精神力と生きながらえるための知恵、判断力、そして不屈の勇気で乗り越えて生還した人々の奇跡の物語、60話が紹介されています。

ひとつひとつがどれもドラマティックなエピソードなので、「大脱走」、「キャプテン・フィリップス」「127時間」など、映画化されているものが多いのも納得です。読みながら、まさしく事実は小説より奇なり、を実感しました。

また、2009年の飛行機事故「ハドソン川の奇跡」や、2010年のチリの鉱山の落盤事故など、ニュースで知って記憶に新しいエピソードもありました。チリの鉱山の落盤事故については、映画化の話も出ていますね。

収録されているエピソードは古くは16、7世紀、多くは1900年以降に起こったできごと。各エピソードは2~4ページにまとめられていて、美しい写真や経路を示す地図など、資料も豊富で見やすかったです。感情を交えない淡々とした文章はリアリティがあり、ゾクゾクと緊張感を味わいながら読みました。

登山や南極探検などは、冒険者もある程度危険を覚悟し、いざという時の準備もして臨んでいるのでしょうが、飛行機事故などは一般の人たちがまったく心の準備のないままに巻き込まれる不慮の事態。そうした時に生死を分けるものは何か、ふと考えてしまいました。

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いくつか印象に残ったエピソードから。

1931年、オーストラリア。人種隔離政策によって家族から引き離されたアボリジニの少女たちの、強制収容所からの脱出劇。彼女たちは、政府が設置した野生動物の侵入を防ぐためのフェンスに沿って2ヶ月間歩き続け、故郷にもどることができました。

2006年、オーストラリア。ヒッチハイクの若者を拾ったところ、睡眠薬を飲まされて車を奪われ、砂漠の中に置き去りにされた青年。彼は雨季でできた川に沿って歩きながら、トカゲやカエルを天日干しにして食べ、2ヶ月以上彷徨って生き延びました。救助された時には体重が半分になっていたそうです。

1971年、米国史上唯一の未解決のハイジャック事件。手荷物に入れて持ち込んだ爆弾で脅して飛行機を乗っ取り、シアトルに着陸させてパラシュートと現金を用意させた男。それから離陸後、男はポートランド付近でパラシュートで脱出したはずですが、その後の足取りがまったくつかめていません。

1972年、雪のアンデス山脈に飛行機が墜落。生存者がいないとみなされて捜索が打ち切られてしまったため、生き残った16人は自力で山から脱出するしかなくなりました。数人が代表して2ヶ月かかって山越えをし、ようやく人里にたどりついて救助をよぶことができました。

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もっと過酷で壮絶なサバイバルもありましたが、ナショナルジオグラフィック編集ということもあって、ハリウッド映画の感覚で読んでしまったのもまた事実。小野田少尉の帰還とか、八甲田山 死の彷徨とか、日本版サバイバルが追補であってもおもしろそうです。

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「ハリウッドと日本をつなぐ」

キャスティング・ディレクターとして、数々の日本人俳優をハリウッド映画に送り出してきた奈良橋陽子さんの著書、「ハリウッドと日本をつなぐ」を読みました。

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私が奈良橋陽子さんを初めて知ったのは、たしか「終戦のエンペラー」が公開された時だったでしょうか。公式サイトを見て、なるほどハリウッド映画に日本人俳優が出演する時、役柄にふさわしい俳優を日本で見つけ、橋渡しするお仕事があるのだなあと納得したのです。

とはいえハリウッドと日本では映画作りが違いますし、文化の違い、ことばの壁もあります。奈良橋さんの仕事はキャスティングに留まらず、俳優の英語の特訓、オーディションの準備、そして出演が決まると契約から撮影中のサポートまで、多岐にわたることを本書を読んで知りました。

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奈良橋さんは少女時代をカナダで過ごし、日本の大学卒業後にニューヨークの演劇学校で学ばれました。帰国後は、英語学校や演劇学校を設立され、70年代に人気ロックグループ ゴダイゴの作詞で、その名を広く知られるようになったそうです。

ハリウッド映画の日本人キャスティングとして初めて手がけた仕事は、スピルバーグ監督の「太陽の帝国」(1987)だそうです。私も伊武雅刀さんが出演されていたのを覚えていますが、この時少年兵を演じていたのが片岡孝太郎さんだったとか。お二人はその後、「終戦のエンペラー」にも出演されています。

この他、「ラストサムライ」、「バベル」、「ウルヴァリン:SAMURAI」「パシフィック・リム」、「47 RONIN」など、ビッグネームのハリウッド作品に関わってこられ、渡辺謙さん、菊地凛子さんなど、数々の俳優さんが国際的に活躍されるきっかけとなりました。

ハリウッド映画に初めて抜擢された俳優さんにとって、アメリカにおける演技のメソッドと映画作り、そして日本人の心を理解する奈良橋さんの存在は心強く、俳優さんは安心して本来の仕事である”演じる”ことに集中できるのだろうなと思いました。

奈良橋さんは、俳優がオーディションを受ける際に、必ずしも英語は必要ではないとおっしゃいます。それ以上に大切なのは、どうしてもやり遂げたいという情熱なのだと。その気持ちがしっかりしていれば、3ヶ月のトレーニングで自然と英語で演じられるようになるそうです。

奈良橋さんは世界で活躍できる俳優を育成するために、ご自身がニューヨークで学んだメソッドをもとに、演劇学校を設立されました。そしてこれからは、世界と勝負できる映画を作りたいと力強くおっしゃる奈良橋さんの、今後のご活躍がますます楽しみです。

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2014年をふりかえって (本・アート・舞台)

前回にひきつづいて...昨年読んだ本と、アート、舞台について、感じたことを書き留めておきます。

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昨年読んだ本は32冊と、だいたい例年通りのペースでした。話題の本、旬な本を優先して読みましたが、今年は何かテーマを決めてじっくり取り組むのもよいかな?と思っています。感想はほとんど書けませんでしたが、印象に残った3冊をピックアップしておきます。

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金成隆一 「ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃」
感想はリンク先を。昨年大いに刺激を受けた本です。

赤崎勇 「青い光に魅せられて 青色LED開発物語」
ライターによる語り起こしで、赤崎先生の自伝と青色LEDの研究、開発までのあゆみが書かれています。プロジェクトX的な話が大好きなので感動しました。

マララ・ユスフザイ 「わたしはマララ」
マララさんのことばを通して、パキスタンやイスラム社会の一端を知ることができる貴重な本。世界的ジャーナリストが支え、読み応えのある一冊となっています。

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昨年もアートやデザイン、建築など、幅広い美術展を見ることができて幸いでした。旅先で憧れのアサヒビール大山崎山荘美術館を訪れたのもいい思い出です。今年は美術展ではなく、昨年気になったアーティストたちを挙げておきます。

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ミヒャエル・ボレマンス: アドバンテージ展 @原美術館
デンマークのヴィルヘルム・ハンマースホイや、アンドリュー・ワイエスにも似た静かな画風が私好み。お気に入りのアーティストになりました。

笠原恵実子 Offering Collection @ヨコハマトリエンナーレ2014
10年かけて撮影された世界の献金箱の数々がひとつのアートに。

Red (Hong Yi)
ネットで話題になったマレーシアの若手アーティスト。初めて割り箸のジャッキー・チェンを見た時はその発想にあっと驚きました。興味のある方はコチラをどうぞ。

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昨年は、「ウォー・ホース ~戦火の馬~」マシュー・ボーンの「白鳥の湖」オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」と、ずっと待ち望んでいた舞台を見ることができて幸せでした。ちなみにどれも、きっかけとなったのは映画です。(それぞれ「戦火の馬」、「リトル・ダンサー」、「ゴッド・ファーザー Part Ⅲ」)

今一番見たいのは、「リトル・ダンサー」をミュージカル化した「ビリー・エリオット」。現在ライブビューイングがTOHO系の映画館で上映されていますが、やっぱり舞台で見たいのです。いつか来日を心待ちにしています。

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「ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃」

7月に読んだ本ですが、遅ればせながら記録を残しておきます。

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金成龍一 「ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃

以前、MOOCについてコチラで書きましたが、あれからMOOCやオープンエデュケーションについてもっと知りたくて、MOOCで北海道大学の「オープンエデュケーションと未来の学び」という講座を受講しました。その時、受講者の間でよく話題にあがっていたのがこの本で、私も読んでみました。

これは朝日新聞の記者の方が、国内外のMOOCやオープンエデュケーションの運営者たち、そこから新たな学びを得た受講者たちを丹念に取材し、MOOCの今についてまとめた本です。(出版は2013年12月) 今、教育の世界を大きく変えつつある動きについて、理解を深めることができました。

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MOOCはMassive Open Online Courses(大規模公開オンライン講座)の略で、2012年にハーバードやMIT、スタンフォードなどがはじめた、大学の授業を無料で公開するオンライン講座です。現在、200以上の大学が参加し、登録者は世界で1000万人を超えています。

ネット環境があれば世界のどこからも授業が受けられ、一定の成績を収めると修了証がもらえます。以前、MITの電子工学の講座を受講して優秀な成績を収めたモンゴルの少年が、その後MITに合格して17歳で大学生となり、MOOCの申し子として話題になったことがありました。

MOOCの運営を財政面で支えているのは、大学や企業など。採算を度外視しても、世界から優秀な学生を集める、優秀な学生を企業に紹介するなど、出資側にも大きなメリットがあります。中堅の大学の中には、一流大学のMOOCの講座を有償で授業に取り入れるところも出てきているそうです。

こうした世界的な流れを受け、日本でも京大や東大がedX(ハーバードなどが参加するMOOC)への参加を決め、英語による講座の提供をはじめました。今後、日本の大学は海外への発信力を高め、魅力や実績をアピールしていくことが重要になってくると思います。

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MOOC以外では、オンライン教育のカーン・アカデミーの話に感銘を受けました。設立者のサルマン・カーン氏は、もとは離れて住むいとこに勉強を教えるためにビデオ教材を作ったのですが、You Tubeにアップしたところ、多くの人たちからわかりやすいと評判になり、それがNPO設立のきっかけになりました。

当初は貯金を切り崩して運営していたものの、のちに支援者が現れたというのがアメリカらしい。今は初等教育から大学レベルの講座まで、英語版だけで4000本以上の教育ビデオがあり、各国語に翻訳されて、世界で600万人以上が利用しているそうです。

また、本書を読んで、日本にもmanavee、eboardといった大学受験生や小中学生を対象とした無料の学習支援サイトがあることを知りました。予備校のない、地方に住む受験生がこのサイトを使って学び、大学生になると今度は先生としてボランティアに参加しているという話に胸を打たれました。

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身近なところでは、今年は大手予備校が経営破綻する一方でビデオ授業の予備校が躍進したり、日本版MOOCがはじまったりと、時代の変化を実感した年でもありました。高品質の無料の授業が発信されることで、学びの世界はこれからますますボーダーレスになっていくのか、注目していきたいと思います。

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話かわって...我が家近くのいちょうの木。美しい黄葉にパチリ。

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神戸(1) 北野異人館めぐり

先週、神戸方面を旅してきました。家族が神戸に一度も行ったことがないというので、以前から行こうと話していたのです。私にとっても約27年ぶりの神戸です。阪神淡路大震災から19年が経過し、今はその傷跡もほとんど見当たりません。流れる月日の早さに驚かされました。

朝早くに品川から新幹線のぞみに乗って2時間40分。あっという間に新神戸に着きました。ホテルに荷物を預けて、まずは最も神戸らしい観光スポット、異人館が点在する北野エリアを散策することに。北野の観光案内所で地図やクーポンなどを手に入れ、エキゾチックな街並みを歩きました。

関東と同じく、この日の神戸は歩くだけでとろけるほどに暑かった...公開されている異人館はたくさんありますが、無理せず代表的な2館だけ見学しました。

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観光案内所の前に建つ「風見鶏の館」。ドイツ人貿易商の邸宅として1909年頃に建てられました。北野で唯一のレンガ造りの異人館で、中世の古城のような風格があるどっしりとした建物でした。

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1階のダイニングルーム。どのお部屋もダークウッドの太い柱と梁、天井は高く、重厚な雰囲気でした。そんな中、ステンドグラスの愛らしい模様にほっと心が和みました。

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2階の子供部屋は、やわらかなローズピンクが甘くロマンティックな雰囲気でした。調度品も他のお部屋と違い、優美で繊細なデザインです。

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次に、異人館街の一番の高台にたたずむ「うろこの家」を訪れました。もとは高級アパートとして海に近い外国人居留地に建てられましたが、その後、外国人たちが高台の北野に移り住むようになったのにともない、この地に移築されたそうです。

外壁の形状から「うろこの家」とよばれて親しまれています。オリジナルは向かって右側の建物で、左は後から同じように作られたレプリカで、美術館となっています。3階からは神戸の街を一望に見下ろすことができました。

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精巧な木彫りのカップボードに落ち着きのある応接セット。テーブルにはティファニーのランプ。こちらの邸宅にはマイセンやロイヤル・コペンハーゲンのアンティーク食器、エミール・ガレの照明などあり、備品の数々にも魅了されました。

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2階の書斎は、男の隠れ家といった感じでわくわくしました。スキー板などの古いスポーツ用品、タイプライターもレトロな味わいがあって、思わず見入ってしまいました。

95年の震災時には北野の異人館も打撃を受けたといい、修復の様子がパネルで紹介されていました。それでも2年後には復旧、再開したとのことで、そのバイタリティに心打たれました。そして復興にはやはり経済力と人的資源が必要だと改めて考えさせられました...。

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2館だけですっかりばてて、あとは通りすがりにいくつか見るだけになりました。これは風見鶏の館の前に建つ「萌黄の館」。もとはアメリカ総領事の邸宅だそうで、アーリーアメリカンな造りです。しばらく白壁だと思われていましたが、実はミントグリーンだったとわかり、元の色に復元されたそうです。

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洋館長屋。外国人向けのアパートだった建物です。このほかにも味わいのある古い洋館がそこここにあり、楽しい散策となりました。

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今回の旅のために買った洋館のガイドブック、「洋館さんぽ WEST 西日本編」。同じシリーズの東日本編もあり、こちらも気に入っています。

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