初春花形歌舞伎 車引/弁天娘女男白浪/七つ面
お正月気分を味わいたくて、久しぶりに歌舞伎を見に行きました。場所は新橋演舞場。新年にふさわしく、若手の役者さんたちによる晴れやかな舞台を楽しみました。 初春花形歌舞伎 新橋演舞場
菅原伝授手習鑑 車引 (すがわらでんじゅてならいかがみ くるまびき)
三つ子の兄弟に生まれるも、今はそれぞれ別の要人の舎人として奉公している梅王丸(市川右近)、桜丸(市川春猿)、松王丸(中村獅童)の3人。梅王丸と桜丸が、松王丸が仕える敵方の藤原時平(片岡市蔵)を襲おうとしたことで、3人の間で兄弟げんかがはじまって...。
隈取のお化粧も華やかに、歌舞伎らしい様式美あふれる作品で幕開けです。記録をたどると、3年前のお正月に違う役者さんの組合せで見ています。
ストーリーがあるような、ないようなお話ですが、凛々しい梅王丸と、優しいお顔立ちの桜丸、強そうな松王丸、最後に大悪役の時平と、演じる役者さんのお化粧や立ち居振る舞い、個性の違いを楽しみました。
弁天娘女男白浪 白浪五人男 (べんてんむすめめおのしらなみ)
雪の下浜松屋の場~滑川土橋の場
呉服屋 浜松屋に、美しい武家の娘と供侍が婚礼の品を選びにやってきますが、実はこの娘は女装した弁天小僧(市川海老蔵)、供侍は南郷力丸(中村獅童)。二人は万引き騒ぎを起こして浜松屋をゆすり、まんまと百両を手に入れようとしますが、居合わせた侍に、娘が男だと見破られます。
しかしこの侍こそ盗賊の首領、日本駄右衛門(市川右近)。弁天小僧、南郷力丸と共謀し、浜松屋を油断させて金をごっそりいただこうという企みでしたが...。
河竹黙阿弥の名作、盗賊団 白浪五人男のお話です。今年は河竹黙阿弥生誕200年の記念の年だそうで、その幕開けにふさわしい作品でした。歌舞伎座の杮落しの時にも見ていますが、詐欺の手口は現代にも通じるものがあって、何度見てもおもしろい。
海老蔵さんは女性にしては体格が立派ですが、弁天小僧が女装しているという設定なので、これもまたありかな?と思いました。獅童さんとのコンビも息がぴったり。正体がばれてからの弁天は刺青の入った体をはだけ、悪人ならではの艶めかしさがあって惚れぼれしました。
幕が変わって大詰めでは、舞台いっぱいに設えた大屋根の上で、弁天小僧と捕り手の大立ち回り。アクロバティックでリズミカルな動きが楽しい。観念した弁天が切腹し、そのまま屋根が向うにぐるりと回転して倒れる、がんどう返しも大迫力でした。
歌舞伎十八番の内 七つ面 (ななつめん)
二世市川團十郎が1740年に初演し、久しく上演が途絶えていましたが、2009年正月に新橋演舞場で海老蔵さんによって復活上演され、今回7年ぶりの上演とのことです。
舞台にはずらりとお面が飾られてあり、海老蔵さんが華麗な手さばきで面を次々と取り替えては、それぞれの人物を踊り分けます。まさに七変化! 華やかで美しく、うっとりする舞踏でした。
幕切れでは、海老蔵さんが新年の挨拶とともに”にらみ”の披露。これは市川宗家、現在では海老蔵さんだけが許されている、特別なご祝儀なのだそうです。ぐぐっとパワーをいただいて、今年もよい年となりそうです。
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