舞台

初春花形歌舞伎 車引/弁天娘女男白浪/七つ面

お正月気分を味わいたくて、久しぶりに歌舞伎を見に行きました。場所は新橋演舞場。新年にふさわしく、若手の役者さんたちによる晴れやかな舞台を楽しみました。
fuji 初春花形歌舞伎 新橋演舞場

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菅原伝授手習鑑 車引 (すがわらでんじゅてならいかがみ くるまびき)

三つ子の兄弟に生まれるも、今はそれぞれ別の要人の舎人として奉公している梅王丸(市川右近)、桜丸(市川春猿)、松王丸(中村獅童)の3人。梅王丸と桜丸が、松王丸が仕える敵方の藤原時平(片岡市蔵)を襲おうとしたことで、3人の間で兄弟げんかがはじまって...。

隈取のお化粧も華やかに、歌舞伎らしい様式美あふれる作品で幕開けです。記録をたどると、3年前のお正月に違う役者さんの組合せで見ています。

ストーリーがあるような、ないようなお話ですが、凛々しい梅王丸と、優しいお顔立ちの桜丸、強そうな松王丸、最後に大悪役の時平と、演じる役者さんのお化粧や立ち居振る舞い、個性の違いを楽しみました。

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弁天娘女男白浪 白浪五人男 (べんてんむすめめおのしらなみ)
雪の下浜松屋の場~滑川土橋の場

呉服屋 浜松屋に、美しい武家の娘と供侍が婚礼の品を選びにやってきますが、実はこの娘は女装した弁天小僧(市川海老蔵)、供侍は南郷力丸(中村獅童)。二人は万引き騒ぎを起こして浜松屋をゆすり、まんまと百両を手に入れようとしますが、居合わせた侍に、娘が男だと見破られます。

しかしこの侍こそ盗賊の首領、日本駄右衛門(市川右近)。弁天小僧、南郷力丸と共謀し、浜松屋を油断させて金をごっそりいただこうという企みでしたが...。

河竹黙阿弥の名作、盗賊団 白浪五人男のお話です。今年は河竹黙阿弥生誕200年の記念の年だそうで、その幕開けにふさわしい作品でした。歌舞伎座の杮落しの時にも見ていますが、詐欺の手口は現代にも通じるものがあって、何度見てもおもしろい。

海老蔵さんは女性にしては体格が立派ですが、弁天小僧が女装しているという設定なので、これもまたありかな?と思いました。獅童さんとのコンビも息がぴったり。正体がばれてからの弁天は刺青の入った体をはだけ、悪人ならではの艶めかしさがあって惚れぼれしました。

幕が変わって大詰めでは、舞台いっぱいに設えた大屋根の上で、弁天小僧と捕り手の大立ち回り。アクロバティックでリズミカルな動きが楽しい。観念した弁天が切腹し、そのまま屋根が向うにぐるりと回転して倒れる、がんどう返しも大迫力でした。

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歌舞伎十八番の内 七つ面 (ななつめん)

二世市川團十郎が1740年に初演し、久しく上演が途絶えていましたが、2009年正月に新橋演舞場で海老蔵さんによって復活上演され、今回7年ぶりの上演とのことです。

舞台にはずらりとお面が飾られてあり、海老蔵さんが華麗な手さばきで面を次々と取り替えては、それぞれの人物を踊り分けます。まさに七変化! 華やかで美しく、うっとりする舞踏でした。

幕切れでは、海老蔵さんが新年の挨拶とともに”にらみ”の披露。これは市川宗家、現在では海老蔵さんだけが許されている、特別なご祝儀なのだそうです。ぐぐっとパワーをいただいて、今年もよい年となりそうです。

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ブロードウェイミュージカル ジャージー・ボーイズ

ブロードウェイミュージカル、「ジャージー・ボーイズ」(Jersey Boys)の来日公演を見に行きました。場所は東急シアターオーブです。(7月5日にて終演)

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60年代に圧倒的な人気を誇ったポップバンド、”ザ・フォーシーズンズ”の結成から成功、解散、ロックの殿堂入りまでを描いたドラマ。2005年にブロードウェイで初演し、翌2006年にトニー賞を受賞、以降ロングラン上演している人気ミュージカルです。

昨年見た、クリント・イーストウッド監督の映画がとてもよかったので、その感動が覚めやらぬ中、今回の公演を楽しみにしていました。

karaoke ジャージー・ボーイズ (映画の感想)

ストーリーの流れは映画とだいたい同じですが、舞台ならではの演出のおもしろさとスピード感あふれるスリリングな展開、役者さんたちの迫力ある演技とライブミュージックの魅力を存分に堪能しました。

ファルセットボイスが美しいフランキー、天才肌のボブ、人はいいけどちょっぴり(いや、かなり)ルーズなトミー、そしてメンバーのクッション的存在のニック...幕が上がった時から、映画の記憶がよみがえり、懐かしい気持ちでいっぱいになりました。

ドラマの展開にあわせて歌われる曲は、どれもその時の彼らの状況や心情にみごとにマッチしていて、自然と感情移入してしまいます。ボブ・ゴーディオの作るナンバーは、まさに彼らの歴史を物語っているのだなーと感慨深く思いました。

舞台装置は、左右に階段のついた鉄骨の歩道橋のようなセットがあるだけのシンプルな作りで、その歩道橋がちょうど花道の役割をはたしているのがおもしろい。フランキーの妻や娘をはじめ、彼らを取り巻く女性たちも次々と登場しますが、なんとたった3人の女優さんが数十人全員を演じていると知り、驚きました。

バンドの演奏は見えませんが、ドラムだけは舞台中央に出て演奏しています。クライマックスの「君の瞳に恋してる」では、ホーンセクションが歩道橋の上に登場し、ポーズをとりながら並んで演奏するのが、ビッグバンドみたいで楽しかったです。

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ストーリーが映画と大きく違っていたのが「君の瞳に恋してる」誕生のエピソード。映画では、娘を突然亡くし、悲しみに打ちひしがれているフランキーのために、ボブが作った曲...ということになっていましたが、実際にはそれより前に作られていたようです。

フォー・シーズンズが解散し、フランキーがトミーの借金を返すために全米を回ってコンサートをしていた頃にボブが作ってくれた新曲ですが、最初は”センチメンタルすぎてこの歌は当たらない”と言って、どこのレコード会社でも売り出してくれなかったのです。

ところがフランキーがコンサートで歌ったところ、大喝采を浴びます。それからクチコミで評判が広がり、みんながどうやったらあの曲が聴けるんだ?!と騒いで、レコーディングが実現した...というのが真相のようです。

今思えば、映画のエピソードはできすぎかな?^^ 舞台のエピソードだけで十分感動的でした。

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ロックの殿堂入りをはたし、久しぶりに再集合したメンバー。栄光をつかんだ彼らですが、「一番幸せだったのは、無名時代に街灯の下でハーモニーをあわせていた頃」ということばに胸がいっぱいになりました。

キャストは「続きを読む」にて。

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2014年をふりかえって (本・アート・舞台)

前回にひきつづいて...昨年読んだ本と、アート、舞台について、感じたことを書き留めておきます。

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昨年読んだ本は32冊と、だいたい例年通りのペースでした。話題の本、旬な本を優先して読みましたが、今年は何かテーマを決めてじっくり取り組むのもよいかな?と思っています。感想はほとんど書けませんでしたが、印象に残った3冊をピックアップしておきます。

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金成隆一 「ルポ MOOC革命 無料オンライン授業の衝撃」
感想はリンク先を。昨年大いに刺激を受けた本です。

赤崎勇 「青い光に魅せられて 青色LED開発物語」
ライターによる語り起こしで、赤崎先生の自伝と青色LEDの研究、開発までのあゆみが書かれています。プロジェクトX的な話が大好きなので感動しました。

マララ・ユスフザイ 「わたしはマララ」
マララさんのことばを通して、パキスタンやイスラム社会の一端を知ることができる貴重な本。世界的ジャーナリストが支え、読み応えのある一冊となっています。

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昨年もアートやデザイン、建築など、幅広い美術展を見ることができて幸いでした。旅先で憧れのアサヒビール大山崎山荘美術館を訪れたのもいい思い出です。今年は美術展ではなく、昨年気になったアーティストたちを挙げておきます。

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ミヒャエル・ボレマンス: アドバンテージ展 @原美術館
デンマークのヴィルヘルム・ハンマースホイや、アンドリュー・ワイエスにも似た静かな画風が私好み。お気に入りのアーティストになりました。

笠原恵実子 Offering Collection @ヨコハマトリエンナーレ2014
10年かけて撮影された世界の献金箱の数々がひとつのアートに。

Red (Hong Yi)
ネットで話題になったマレーシアの若手アーティスト。初めて割り箸のジャッキー・チェンを見た時はその発想にあっと驚きました。興味のある方はコチラをどうぞ。

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昨年は、「ウォー・ホース ~戦火の馬~」マシュー・ボーンの「白鳥の湖」オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」と、ずっと待ち望んでいた舞台を見ることができて幸せでした。ちなみにどれも、きっかけとなったのは映画です。(それぞれ「戦火の馬」、「リトル・ダンサー」、「ゴッド・ファーザー Part Ⅲ」)

今一番見たいのは、「リトル・ダンサー」をミュージカル化した「ビリー・エリオット」。現在ライブビューイングがTOHO系の映画館で上映されていますが、やっぱり舞台で見たいのです。いつか来日を心待ちにしています。

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十二月大歌舞伎 「義賢最期」「幻武蔵」「二人椀久」

歌舞伎座に、十二月大歌舞伎 昼の部を見に行きました。先月の歌舞伎では、吉右衛門さんや幸四郎さんの円熟の演技を堪能しましたが、今月は玉三郎さん、海老蔵さん、獅童さん、愛之助さんなど、これからの歌舞伎界を担うスターたちを中心とした華やかな舞台を楽しみました。

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源平布引滝 (げんぺいぬのびきのたき) 義賢最期
義賢最期は以前にも見たことがあり、伝統の歌舞伎ならではの様式美と、ラストに向けてヒートアップしていく立ち回りのおもしろさに魅了されたので、とても楽しみにしていました。義賢を演じるのは、前回と同じく片岡愛之助さん。

アクション活劇といった感じで見せ場の多い作品ですが、お話は少々込み入っているので事前にさらっと予習しておきました。愛之助さんが仁左衛門さんから直々に教わり、演じるのは今回が5度目という義賢は、苦悩と悲壮な覚悟がひしひしと伝わってきてとてもよかったです。

敵の軍勢との壮絶な戦い、最後は組み立てた襖ごとバタンと崩れて落ちる戸板倒し、階段から仰向けに倒れる仏倒し、とアクロバティックな場面が大迫力で、わくわくしながら引き込まれました。

女性ながら鮮やかな立ち回りで、敵をばっさばっさとやっつける小万(中村梅枝)はかっこよくてしびれるし、九郎助(市川家橘)と太郎吉くんのコミカルな立ち回りも微笑ましい。子を宿した葵御膳(市川笑也)が無事に逃げおおせた時には、思わずほっと胸をなでおろしました。

新作歌舞伎 幻武蔵 (まぼろしむさし)
脚本公募で選ばれたという森山治男さんの作品で、坂東玉三郎さんが演出。中村獅童さん演じる宮本武蔵が、姫路城の天守閣に住む妖怪を退治するという幻想的な物語です。

幕が上がると、シンプルな舞台セットと、暗がりの中にスポットライトのような照明。奏楽もなく、現代的な台詞回しに意表をつかれました。歌舞伎というより現代劇を見ているようです。動きが少なく台詞が中心の劇だったので、気持ちを集中するのがなかなか難しかったです。

玉三郎さんが長く取り組んでこられた泉鏡花の「天守物語」に通じる物語で、己の中にある過去の自分と戦う...という心理描写はなかなか深くておもしろかったのですが、久しぶりに獅童さんの人情ものが見たくなりました。

二人椀久 (ににんわんきゅう)
玉三郎さんと海老蔵さんによる幻想的な舞踏です。海老蔵さんの舞台を見るのは初めてなので(人気が高くてなかなかチケットが取れないので)、楽しみにしていました。

大阪の豪商椀屋久兵衛(市川海老蔵)は、遊女松山(坂東玉三郎)に入れあげ、座敷牢につながれています。松山に恋こがれて正気を失った久兵衛は牢を抜け出し、松山のもとへ。二人はしばしの逢瀬を楽しみますが、やがて夢は覚め、すべては幻と消えるのでした...。

伏し目がちに、憔悴しきった様子で花道に現れた海老蔵さんに、まずはぐぐっと心をつかまれました。そして玉三郎さんのはかないほどの美しさ。長唄にのせた二人の舞は、まるで綿菓子に包まれた淡い夢を見ているようで、幻想的な美しさにうっとりと見惚れました。

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吉例顔見世大歌舞伎 「寿式三番叟」「井伊大老」「熊谷陣屋」

歌舞伎座に、吉例顔見世大歌舞伎 昼の部を見に行きました。初世松本白鸚三十三回忌追善でもある本公演。白鸚さんゆかりの演目をゆかりの俳優さんが演じます。華やかな舞踏に重厚な歴史ドラマ、歌舞伎ならではの伝統の舞台を堪能しました。

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寿式三番叟 (ことぶきしきさんばそう)
能楽の「翁」を題材とした、天下泰平、五穀豊穣を祈る、お祝いの舞踏。昨年のお正月に見て、格調高い舞に厳粛な、それでいて晴れやかな気持ちに包まれたことを思い出します。

翁(片岡我當)が3人の千歳を従えて舞台をせり上がり、厳かに舞ったあとは、お揃いの黒い衣装をつけた2人の三番叟(市川染五郎・尾上松録)が元気よく登場。アップテンポの奏楽にのせて、跳んだと思えばくるりとまわり、鮮やかなステップに魅了されました。

涼やかな染五郎さんとお目々ぱっちりの松緑さん、踊りもそれぞれすばらしく、二人の個性がみごとに調和して見ごたえがありました。華やかでエキサイティングな舞台に気持ちがわくわくと浮き立ちました。

井伊大老 (いいたいろう)
井伊大老邸の奥書院より桜田門外まで

中村吉右衛門さんの井伊大老を楽しみにしていました。

井伊直弼は歴史的には評価が分かれるところでしょうが、横浜開港に貢献したとして紅葉坂の掃部山公園に銅像があって、子どもの頃から親しみを覚えていました。(未見ですが)今公開中の映画「柘榴坂の仇討」も桜田門外を題材にした作品で、吉右衛門さんが井伊大老を演じていらっしゃいますね。

舞台では、幼馴染の水無部六臣(中村錦之助)、そして側室のお静の方(中村芝雀)とのやりとりなど、吉右衛門さんのしみじみと味わい深い語り口から、直弼の苦悩と決意、覚悟が伝わってきて、引き込まれるように聞き入りました。

直弼の運命を知っているだけに、仙英禅師(中村歌六)が書き残していった一期一会ということばも、華やかなお雛飾りも、お静の方とすごす最後の穏やかな夜も、すべてがのちの悲劇につながっているように思え、胸苦しさを覚えました。ラストのお濠端の雪景色の白さが心に残りました。

一谷嫩軍記 熊谷陣屋 (くまがいじんや)
源平争乱の時代を舞台に世の無常を描いた時代物の名作です。

源氏の武将 熊谷直実(松本幸四郎)は須磨の浦で平敦盛を討ちとったとし、源義経(尾上菊五郎)が首実検をします。しかし実は、義経の意を汲み、後白河院の血を引く敦盛を助けるために、熊谷は身代わりに我が子 小次郎を犠牲にしたのでした...。

忠義のために我が子を犠牲にするという状況は、我が身に置き換えればとうてい受け入れられるものではありませんが、それゆえに幸四郎さんはどんな思いで演じていらっしゃるのだろうと思うと、なおのこと辛さが身にしみました。

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帰りに銀座によったら、ミキモトさんの前にクリスマスツリーが飾られていました。来年、本店を建て替えるのにともない、今年が最後のツリーとなるそうです。毎年楽しみにしていたので寂しくなります...。なお、ツリーの展示は12月25日まで。詳細はコチラ

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マシュー・ボーンの「白鳥の湖」

東急シアターオーブで上演中のコンテンポラリー・バレエの傑作、マシュー・ボーンの「白鳥の湖」(Matthew Bourne's Swan Lake)を見に行きました。演出家マシュー・ボーンの代表作で、自身のダンスカンパニー「ニューアドベンチャーズ」(New Adventures)を率いての4回目の来日公演です。

今回、ザ・スワンはトリプルキャスト、王子はダブルキャストとなっていますが、私は、ザ・スワン=ジョナサン・オリヴィエ、王子=サイモン・ウィリアムズという組み合わせで見ました。

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1995年ロンドンで初演して大旋風を巻き起こし、のちにニューヨークに進出。トニー賞はじめ数々の賞を受賞しています。初演でザ・スワンを演じたアダム・クーパーは、この作品で世界的なスターになりました。映画「リトル・ダンサー」のラストシーンは、今も鮮烈な印象が残っています。

おなじみのチャイコフスキーの音楽で展開しますが、伝統的な白鳥の湖とはストーリーもビジュアルも全く違う、現代を舞台にしたオリジナル劇です。何より特徴的なのは、白鳥を演じるのがチュチュをまとった優美な女性ダンサーではなく、雄々しい男性ダンサーたち、ということ。

この豊かなイマジネーションはどこから生まれてくるのだろう?と敬服しますが、見るとこれ以外の白鳥は考えられなくなるくらい、しっくりくるのが不思議です。スタイリッシュで洗練された舞台、鍛え抜かれた体の動きだけで表現されるドラマの深さに、胸がしめつけられるような感動を味わいました。

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舞台はある王国。公務に追われ、母なる女王の愛を求めるも受け入れられない孤独な王子は、湖で出会った美しく雄々しいスワンに魅せられ、心を通わせます。しかし、のちにパーティでスワンそっくりのプレイボーイが現れ、女王を誘惑したために、王子は混乱し、とんでもない行動を起こしてしまいます...。

宿命を背負った孤独な王子と彼が求める白鳥の物語に、私はなぜかエヴァンゲリヲンのシンジくんとカヲルくんを重ねてしまいましたが^^; 王子の孤独と愛がきゅ~っと胸に迫りました。そしてザ・スワンは王子にとって、もう一人の自分でもあるのかな?とも思いました。

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伝統的なバレエのコスチュームとトウシューズの代わりに、ダンサーたちはドレスやパンツ、ハイヒールといったいでたちで、バレエというよりミュージカルのよう。歌やセリフはなく、かといってパントマイムとも違うのですが、登場人物の心情や濃厚な物語が、音楽にのせたダンスだけでしっかりと伝わってきます。

スワンたちの羽毛パンツに裸足、上半身裸という衣装?はインパクトがありますが、野生動物の強さと気高さが感じられ、特に群舞の迫力は圧巻でした。踊っているうちにスワンたちは汗まみれになりますが、汗がこんなに美しいなんて...と感動を覚えました。

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4羽の白鳥がぺたぺた歩きで登場してコミカルなダンスを披露したり、王子のガールフレンドが観劇中に携帯を鳴らしてしまう今風のヤンキー娘だったり、王子がお忍びでナイトクラブに潜入し、けんかをしてつまみ出されたり。

ザ・スワンは、ブラックスワンならぬ黒服をまとった妖艶なザ・ストレンジャーとなってお城のパーティにさっそうと登場したり...とマシュー・ボーンならではの斬新で楽しい演出の数々を堪能しました。

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「ウォー・ホース ~戦火の馬~」

神戸旅行記は1回お休みして...

感動が薄れないうちに、ロンドンで大ヒットし、今、日本で初上演中の舞台、「ウォー・ホース ~戦火の馬~」(War Horse)の感想を書き留めておきます。会場は東急シアターオーブです。

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マイケル・モーパーゴの児童小説を舞台化し、2007年ロンドンで初演。のちにニューヨークで上演され、トニー賞5部門を受賞しました。ロンドン公演を見て感動したスピルバーグ監督によって映画化もされています。映画がすばらしかったので、元になった舞台をいつか見たいと心待ちにしていました。

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馬は着ぐるみ?どうやって表現するの?と興味津々でしたが、1ヶ月くらい前にテレビでメイキング映像を見て、精巧な木製のパペットを3人がかりで動かす、と知りました。パペットを制作したのは、南アフリカを拠点に活躍するアーティスト集団、ハンドスプリング・パペット・カンパニー(Handspring Puppet Company)。

このパペットが実にすばらしいのです。木の骨組みに薄布を張った馬は、関節や耳の動きまでリアルに表現され、表情豊か。見ているうちに農夫の姿をした黒子の存在は全く気にならなくなり、生きている馬そのものにしか見えなくなるのが不思議です。

このパペットが日本の文楽人形の影響を受けて作られたと知り、なおのことうれしく、誇らしく思いました。

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そして舞台ももちろんすばらしかった! 私はストーリーを映画で知っていたこともあり、幕が上がった時から、もうほろほろと涙ぐんでいました。アルバートが馬のジョーイに話しかける時の慈愛に満ちた優しい声が泣けて泣けて...

舞台装置は実にシンプルで、家の中と外を区切るドア、ジョーイが引く農具の鋤(すき)、大砲など、必要最小限のものしかありませんが、イマジネーションの力を借りて、目の前には壮大な風景が浮かんできました。

抑えた照明に閃光や煙、そして爆音、背景のスクリーンに描かれた洞窟壁画のような素朴なイラストから、激しい戦争の様子が伝わってきます。何頭もの馬が並んで突撃する場面は圧巻でした。

少年と馬との絆を描いた友情物語ですが、背後にあるのは反戦のメッセージ。何もわからないままに人間の都合によって集められ、危険な前線に送られ、動けなくなると命を絶たれる馬たちの姿を通じて、戦争の愚かしさ、人間の身勝手さが刃のように心に突き刺さります。

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アルバートがジョーイに鋤の引き方を教えたことが戦場での命拾いにつながったこと、空白地帯で助けられたジョーイがコイントスでイギリス軍に引き取られたこと...偶然の幸運の積み重ねによってたぐりよせられていく、運命の再会はわかっていても感動的。涙があふれました。

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映画にも登場した仲良しの黒馬のトップソーンとのやりとりも微笑ましかったですが、映画ほど擬人化されていなくて、あくまでナチュラルだったのがよかった。^^ 村人たち歌う素朴なイギリス民謡風の音楽が温かく、心に染みました。

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オペラ 「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」

新国立劇場にヴェリズモ・オペラの2大傑作、「カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師」(Cavalleria Rusticana / I Pagliacci)を見に行きました。

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ヴェリズモは、19世紀後期イタリアに登場するリアリズムを追求した文芸運動。そこから生まれたヴェリズモ・オペラは、それまでの歴史や神話を題材にしたオペラと違い、市井の人々の日常を描き、暴力描写があるのが特徴です。

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「カヴァレリア・ルスティカーナ」はシチリアが舞台のオペラで、映画「ゴッドファーザー Part III」のクライマックスにも登場します。オペラ歌手としてデビューすることになったドン・コルレオーネの長男の初舞台と、映画のストーリーとがリンクして、興奮と胸騒ぎを覚えながら引き込まれたことを思い出します。

ピエトロ・マスカーニ作曲の音楽もすばらしく、特に決闘の前に静かに演奏される美しい間奏曲は有名で、CMやBGMにもよく使われます。(ゴッドファーザーでは、コルレオーネが銃弾に倒れた愛娘を抱き、声なく慟哭する場面に流れていました。)

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一方「道化師」は、フィギュア・スケートの高橋大輔選手が2年前に、アリア「衣装をつけろ」をプログラムに取り入れたことで、一気に人気が高まったようですね。「カヴァレリア~」も「道化師」も80分ほどの短いオペラで、この2つはセットで上演されることが多いです。

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ストーリーはどちらも、一言でいえば愛と嫉妬、そして復讐の物語。物語の進行上、重要な役割を果たす語り部が、嫉妬に駆られて告げ口したことで、のちの悲劇を招きます。人間の愚かしさと愛おしさが、ドラマティックな歌声と音楽にのせて迫り、心を揺さぶられました。

それから目を奪われたのは舞台装置の美しさ。朽ちた古代遺跡にオリーブの木の葉が揺れ、まるで実際に南イタリアの田舎を旅しているようです。郷土色、宗教色豊かな舞台に旅情を誘われ、歌も音楽も一流ながら、旅先の野外劇場にふと立ち寄ったような楽しい気分になりました。

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「道化師」は入れ子になった物語の構成もおもしろかったです。旅芸人一座の物語なのですが、(女優でもある)妻の浮気に怒りを募らせる座長は、芝居を演じているうちに現実と芝居の区別がつかなくなり、芝居の中で「相手の名を言え!」と詰め寄り、妻を殺してしまいます。

あまりの迫真の演技に何も知らずに大喜びする観客たち...という、悲劇なのだけれど喜劇のようなおかしみもある、にぎやかで楽しい舞台でした。

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シルク・ドゥ・ソレイユ 「オーヴォ」

来日公演中のシルク・ドゥ・ソレイユの最新作、「オーヴォ」(OVO)を見に行きました。場所はお台場、ダイバーシティ東京前の広場です。駅を出ると大きな特設テントが見えるので、目指して歩きます。

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シルク・ドゥ・ソレイユはカナダはモントリオール発のアクロバット集団。舞台装置、衣装、音楽、演出...どれをとっても芸術性が高く、クラシックバレエやモダンダンス、パントマイムなどの要素を取り入れたパフォーマンスは、従来のサーカスの枠を超えた魅力にあふれています。

私は初めて「キダム」を見てシルク・ドゥ・ソレイユの虜になり、その後はニューヨークで何度か新作の公演を見ました。ヨーロピアンテイストの洗練された舞台は、ニューヨークでも大人気でした。3年前の「クーザ」を震災の影響で見逃してしまったので、今回久しぶりの公演を楽しみにしていました。

ちなみに「オーヴォ」とはポルトガル語で卵という意味。命の神秘や生命賛歌、そして愛をテーマにした舞台は幻想的で、イースターシーズンにぴったりのすてきな作品でした。登場するキャラクターはみな虫をイメージしていて、ディズニーのバグズ・ライフを思い出しました。

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舞台の進行をつとめるクラウン3人も、今回は虫の姿。ぽっちゃりチャーミングなてんとう虫の女の子に恋する、卵を背負ったトゲトゲ虫の猛アタックがかわいくて、にっこりしました。

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私が一番気に入ったのは、1本のロープを使ったパフォーマンス「バタフライ」。さなぎをイメージした布をまとった姿から蝶へと羽化していく様子が、コンテンポラリーバレエで表現されます。写真で見ると筋肉隆々ですが、愛をテーマにしたしなやかなダンスはロマンティックで幻想的。うっとりする美しさでした。

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「フライング・アクト」。いわゆる空中ブランコですが、虫たちが左から右へ、右から左へとテンポよく跳躍する姿はリズミカルで躍動感あふれ、わくわくしながら見入りました。

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ポールを使ったパフォーマンス「オーバロ」。体操選手のようなアクロバティックな技も、バレエのような優雅な動きで幻想的。物語を感じさせる舞台に引き込まれました。

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クライマックスの「ザ・ウォール」。ロック・クライミングと、十字に設えたトランポリンを組み合わせた力強いパフォーマンスです。

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ジャングルに住む虫たちと植物、そして音楽はボサノバやサンボが取り入れられ、アマゾンやブラジルをイメージした舞台でした。キャストが勢ぞろいする華やかなフィナーレは圧巻。ディーバが歌うテーマ曲も印象的で、今も気がつくと口ずさんでいます。夢のような時間でした。

シルク・ドゥ・ソレイユの過去記事を、リンクさせていただきますね。
event 「La Nouba」(ラ・ヌーバ) @ウォルト・ディズニー・ワールド
event 「ZED」(ゼッド) @東京ディズニーリゾート

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2013年をふりかえって (本・アート・舞台)

2013年をふりかえって...昨年読んだ本と、美術展、舞台の中からお気に入りをピックアップします。おつきあいくだされば幸いです。

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昨年、最も衝撃だったのは尊敬する山崎豊子さんが亡くなられたことです。体調を崩されているとうかがっていたので、「運命の人」が最後の作品になるかもしれないと覚悟していましたが、そのうち新潮で連載が始まって、喜んでいた矢先のできごとでした。最後までペンを離さなかった豊子先生。ご冥福をお祈りします。

さて、昨年は32冊とやや少なめでした。記事もあまり書けませんでしたが、多くの良書と出会えたことは喜びです。そんな中、私に興奮を与えてくれたノンフィクションと実話に基づく3冊を選びました。

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マイケル・サンデル 「それをお金で買いますか」
ビクター・マイヤー=ショーンベルガー他 「ビッグデータの正体」
百田直樹 「海賊とよばれた男」(上・下)

左・中の2冊の感想は、リンク先をご参照いただけたらと思います。ベストセラーになった「海賊とよばれた男」は、出光興産の創業者、出光佐三さん(小説では國岡鐡造)を描いた伝記小説です。

戦争に敗れ石油の大切さを思い知らされた國岡は、米石油メジャーとイギリスを敵に回して、単独イランと取引し、日本に石油を運び入れます。気骨と胆力の経営者はまた、社員ひとりひとりを家族のように大切にし、守り抜く信念の人でもありました。男たちの奮闘に胸が熱くなりました。

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美術展はなるべく幅広く見ていますが、好みからいくとやはり近代以降のアートに惹かれます。特に同時代を生きる現代アートは、現在進行形の未知数のおもしろさを感じます。昨年見た中から、私にとって記念碑的な美術展3つを選びました。

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奇跡のクラーク・コレクション @三菱一号館美術館
光り輝くルノアール。名画を所有するコレクターの喜びを初めて理解しました。コレクターといえば、ジョン&キミコ・パワーズ夫妻のアメリカン・ポップ・アート展も圧巻でした。

アンドレアス・グルスキー展 @国立新美術館
100のことばを尽くしてもこのアーティストの作品は説明できない。実物を美術館の広いスペースで鑑賞できたことは大きな喜びでした。

坂茂 建築の考え方と作り方 @水戸芸術館
尊敬する建築家、坂茂さんの初めての個展を見るために水戸まで出かけたことも、いい思い出になりました。

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昨年のトピックスは、なんといっても歌舞伎座新開場。先代の伝統を生かしつつ最新鋭の舞台装置を設えた劇場として生まれ変わりましたが、贔屓の?B席からは部分的に見えないのが残念。歌舞伎は庶民の味方ですから、後方からもよく見えるミュージカル劇場のような思い切った設計もありだったかもしれません。

夏以降は私事でなかなか足を運べませんでしたが、一年続いた杮落し公演では豪華俳優陣による名作の数々を堪能しました。その中から特に気に入った演目を2つ書き留めておきます。

菅原伝授手習鑑 寺子屋 (三津五郎・幸四郎・魁春・福助 他)
平家女護島 俊寛 (吉右衛門・梅玉・歌六・仁左衛門 他)

今年も多くの感動に出会える年となりますように。

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